2012年11月05日(1702号) ピックアップニュース
「会員意見実態調査」結果 政党支持と政策選好にねじれ (2) 医療政策と支持政党
協会が6月に実施した会員意見実態調査結果を引き続き掲載する。第2回は政策部から、医療政策と支持政党について。
「営利企業の医療機関経営への参入について」では「反対」が医科で79.1%、歯科で67.3%、「賛成」が医科で3.5%、歯科で3.9%、「わからない」が医科で15.7%、歯科で28.9%となっている(図2)。
混合診療の解禁について医科では「反対」が過半数だが、歯科では「反対」より「賛成」が多く、「わからない」が最多である。歯科の診療報酬が抑制され続けている中、混合診療解禁によって自費部分の拡大に活路を求める傾向が影響しているとも考えられ、医科でも低診療報酬が続けば、解禁「やむを得ず派」の増加が懸念される。
一方、営利企業の医療機関経営への参入については大多数が反対しており、営利企業の参入が医療における非営利性や公益性を堀り崩すものであることへの懸念が表れている。
この二つの政策はこれまでアメリカと財界が執拗に要求し続けてきたものであり、これに日本の一部の利益集団が乗じ、日本の医療に市場原理を持ち込むことを目的としている。「混合診療解禁」と「営利企業の医療機関経営」はセットでないと営利企業には旨味が少ない。
具体的には、混合診療によって、効果や安全性の担保されない医療技術を高額で患者に提供できるようにして、国民の間に格差医療を持ち込み、営利企業が医療機関経営あるいはその周辺で情報格差を利用して儲けることを狙ったものである。
「混合診療解禁」と「営利企業参入」が認められれば、営利的行動をとる医療機関が全国に広がる危険性が高く、「公益性と非営利」を旨とする医師と医療機関、さらには国民皆保険への信頼は大きく損なわれるだろう。
「わからない」が最も多いのは、TPP交渉は単なる貿易自由化交渉ではなくさまざまな分野に制度改定を求める内容となっており全貌がきわめて分かりづらいことと、調査が今年6月に行われており、協会が政策パンフレット「TPPが医療を壊す」の普及などで、TPPの危険性を知らせる運動を大規模に行う以前だったことが影響していると考えられる。
調査以降、協会では、政策パンフレットの普及をはじめ、専門家を招いたシンポジウムや各地での政策学習会などを実施している。
「賛成」と回答した会員に理由を尋ねると「日本経済がよくなるから」が全体で66.7%と最も多く、「海外から安い製品や農作物が入ってくるから」、「医療にも構造改革が必要だから」と続いている。
また、「反対」の理由としては「国民皆保険制度が破壊されるから」が全体で84.1%と最も多く、「日本経済がよくならないから」「日本の農業が立ち行かなくなるから」が続いている。
「悪かった」と答えた会員の理由は「経済政策が悪くなった」が65.2%でトップ、以下「外交が悪くなった」「東日本大震災対策が悪い」「医療・社会保障政策が悪くなった」と続いている。
「良かった」と答えた会員の理由は「医療・社会保障政策がよくなった」がトップ。以下、「外交がよくなった」、「経済政策がよくなった」が続いているが、回答数は少ない。
自公政権下で進められた医療費削減や社会保障切り捨てに代表される新自由主義的政策への国民的批判が政権交代の原動力となったが、民主党の相次ぐマニフェスト違反に大きな失望が渦巻いていることを示している。多くの会員が「どちらともいえない」と答えているのは自公政権も民主党政権も代わり映えしないことが明らかになり、どちらも支持できないという考えの反映だと思われる。
「現在の内閣を支持しますか」との問いには「支持しない」が全体で68.9%に上った(図4)。「支持する」は全体で15.0%と、09年の民主党政権発足後、最低の支持率となった。これは、政権交代以前の自民党政権末期の第3次小泉改造内閣(14.8%・06年調査)、福田内閣(8.5%・08年調査)などと同水準の支持率である。「支持しない」理由は「経済政策が悪い」が全体で72.2%と最も多く、「医療政策が悪い」、「民主党を中心とした政権だから」と続いており、「政権交代の評価」と同じく、自民党中心の政権に引き続き、長引く不況を脱することができない経済政策に厳しい目が向けられている。
なお、医科は全体と同じ順位になったが、歯科では「大阪維新の会」が19.2%とトップで、以下、自民党(15.4%)、みんなの党(9.6%)、民主党(5.8%)、共産党(1.9%)となっており、医科と歯科で大きく異なる結果となった。
時系列でみると、民主党の支持率は06年調査以来、自民党を上回ってきたが、今回逆転されている。「大阪維新の会」への支持は、2大政党への失望の裏返しと思われるが、「維新の会」の躍進がどのような結果を生むかは、各政策を冷静に吟味する必要があるだろう。
協会としては、今後衆院選挙にあたって開業保険医の要求実現のために、会員の投票の判断基準となるように、各党の個別政策への態度を広く知らせたい。
営利企業参入は大多数が反対
「『保険外併用療養費』を除くいわゆる混合診療の解禁について」では「反対」が医科で50.4%、歯科で19.2%、「賛成」が医科で20.9%、歯科で34.6%、「わからない」が医科で26.1%、歯科で42.3%となっている(図1)。「営利企業の医療機関経営への参入について」では「反対」が医科で79.1%、歯科で67.3%、「賛成」が医科で3.5%、歯科で3.9%、「わからない」が医科で15.7%、歯科で28.9%となっている(図2)。
混合診療の解禁について医科では「反対」が過半数だが、歯科では「反対」より「賛成」が多く、「わからない」が最多である。歯科の診療報酬が抑制され続けている中、混合診療解禁によって自費部分の拡大に活路を求める傾向が影響しているとも考えられ、医科でも低診療報酬が続けば、解禁「やむを得ず派」の増加が懸念される。
一方、営利企業の医療機関経営への参入については大多数が反対しており、営利企業の参入が医療における非営利性や公益性を堀り崩すものであることへの懸念が表れている。
この二つの政策はこれまでアメリカと財界が執拗に要求し続けてきたものであり、これに日本の一部の利益集団が乗じ、日本の医療に市場原理を持ち込むことを目的としている。「混合診療解禁」と「営利企業の医療機関経営」はセットでないと営利企業には旨味が少ない。
具体的には、混合診療によって、効果や安全性の担保されない医療技術を高額で患者に提供できるようにして、国民の間に格差医療を持ち込み、営利企業が医療機関経営あるいはその周辺で情報格差を利用して儲けることを狙ったものである。
「混合診療解禁」と「営利企業参入」が認められれば、営利的行動をとる医療機関が全国に広がる危険性が高く、「公益性と非営利」を旨とする医師と医療機関、さらには国民皆保険への信頼は大きく損なわれるだろう。
TPPは「わからない」最多
「政府が参加交渉を進めているTPPについて」では「わからない」が全体で45.5%と最も多く、「反対」が全体で37.7%、「賛成」が全体で12.6%となっている。「わからない」が最も多いのは、TPP交渉は単なる貿易自由化交渉ではなくさまざまな分野に制度改定を求める内容となっており全貌がきわめて分かりづらいことと、調査が今年6月に行われており、協会が政策パンフレット「TPPが医療を壊す」の普及などで、TPPの危険性を知らせる運動を大規模に行う以前だったことが影響していると考えられる。
調査以降、協会では、政策パンフレットの普及をはじめ、専門家を招いたシンポジウムや各地での政策学習会などを実施している。
「賛成」と回答した会員に理由を尋ねると「日本経済がよくなるから」が全体で66.7%と最も多く、「海外から安い製品や農作物が入ってくるから」、「医療にも構造改革が必要だから」と続いている。
また、「反対」の理由としては「国民皆保険制度が破壊されるから」が全体で84.1%と最も多く、「日本経済がよくならないから」「日本の農業が立ち行かなくなるから」が続いている。
政権交代に厳しい目
政権交代について「評価をお答えください」という問いに対し、「どちらとも言えない」が全体で49.7%と最も多く、「悪かった」が医科で40.2%、歯科で42.3%、「よかった」が医科で5.1%、歯科で7.7%となっている(図3)。「悪かった」と答えた会員の理由は「経済政策が悪くなった」が65.2%でトップ、以下「外交が悪くなった」「東日本大震災対策が悪い」「医療・社会保障政策が悪くなった」と続いている。
「良かった」と答えた会員の理由は「医療・社会保障政策がよくなった」がトップ。以下、「外交がよくなった」、「経済政策がよくなった」が続いているが、回答数は少ない。
自公政権下で進められた医療費削減や社会保障切り捨てに代表される新自由主義的政策への国民的批判が政権交代の原動力となったが、民主党の相次ぐマニフェスト違反に大きな失望が渦巻いていることを示している。多くの会員が「どちらともいえない」と答えているのは自公政権も民主党政権も代わり映えしないことが明らかになり、どちらも支持できないという考えの反映だと思われる。
「現在の内閣を支持しますか」との問いには「支持しない」が全体で68.9%に上った(図4)。「支持する」は全体で15.0%と、09年の民主党政権発足後、最低の支持率となった。これは、政権交代以前の自民党政権末期の第3次小泉改造内閣(14.8%・06年調査)、福田内閣(8.5%・08年調査)などと同水準の支持率である。「支持しない」理由は「経済政策が悪い」が全体で72.2%と最も多く、「医療政策が悪い」、「民主党を中心とした政権だから」と続いており、「政権交代の評価」と同じく、自民党中心の政権に引き続き、長引く不況を脱することができない経済政策に厳しい目が向けられている。
「支持政党なし」最多、次いで自民、維新
次期衆院選挙の投票動向は「支持政党なし」が全体で32.9%と最も多く、次いで「自民党」が19.8%となり、「大阪維新の会」が14.4%となった(図5)。以下、民主党(9.0%)、共産党(6.0%)、みんなの党(5.4%)と続いている。なお、医科は全体と同じ順位になったが、歯科では「大阪維新の会」が19.2%とトップで、以下、自民党(15.4%)、みんなの党(9.6%)、民主党(5.8%)、共産党(1.9%)となっており、医科と歯科で大きく異なる結果となった。
時系列でみると、民主党の支持率は06年調査以来、自民党を上回ってきたが、今回逆転されている。「大阪維新の会」への支持は、2大政党への失望の裏返しと思われるが、「維新の会」の躍進がどのような結果を生むかは、各政策を冷静に吟味する必要があるだろう。
支持していても政策には反対
支持政党別に各種質問項目への回答状況をみると、混合診療解禁を打ち出す大阪維新の会支持会員のうち30.4%が混合診療の解禁に反対し賛成の26.1%を上回っていたり、TPP賛成のみんなの党の支持会員のうち33.3%がTPP交渉参加に反対し賛成の11.1%を上回っていたりと、支持する政党とその個別政策への賛否がねじれている実態も明らかになっている(図6、7)。協会としては、今後衆院選挙にあたって開業保険医の要求実現のために、会員の投票の判断基準となるように、各党の個別政策への態度を広く知らせたい。