兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2013年5月25日(1719号) ピックアップニュース

燭心

 人間にとって大切なものは何だろう。人類1万年の歴史を振り返ろう。太古、人類は家族で助け合って生きていた。命と自由を子どもたちに与えるため、男たちは狩猟に女たちは採集や子育てに生きがいを感じていた。やがて栽培農法が始まり村ができ町ができた。農業での余剰が国家を生み出した。力を持った者が王や貴族となり奴隷からの搾取によってさらに富を増やした。専門職もできた▼王の権力を貴族が抑制しようとしたのがマグナ・カルタであり、王や貴族や教会の権力からの自由を求めたのがフランス革命だ。それまでの農業中心の経済から物作り中心の世の中への転換点がジェームス・ワットによる蒸気機関の発明だ。交通が便利になり工業が発達し商業が発達した▼経済学が誕生したのもこの頃だ。アダム・スミスは哲学の教師だった。『道徳感情論』で「こうした現世のあらゆる労苦や大騒ぎの目的とは、何であるのか。我々は、何としても他者に注目され考慮される対象となりたいと願う。共感と承認をもって注意深く考慮されたいのだ」と述べている。ダンテは『神曲地獄篇』で「高慢、嫉妬、貪欲という三つの火花が、人々の心を燃えあがらせる」と述べている。この時代から我々は進歩したのだろうか。人々の生活はみかけは豊かになった。しかし、現代ではお金がお金を生む金融工学が幅をきかし、人々は朝から晩まで過酷な労働についている。人類は本当に豊かになったのだろうか。(水)
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