2013年5月25日(1719号) ピックアップニュース
政策解説 日歯PT報告にふれて 保険範囲の拡大、診療報酬改善 歯科医療改善の財源は十分可能 保険医協会歯科部会
日本歯科医師会は昨年12月にまとめた「総合政策検討プロジェクトチーム(PT)報告書」で、自由診療推定金額と推定歯科技工委託費(推計)を明らかにしている。自由診療、歯科委託技工費ともに市場規模が分かる公の調査がないため、PTは中医協の医療経済実態調査を基に推定値を算定したものである。
この報告では、2009年の歯科の自由診療推定金額は3千612億円で、1991年の約4千447億円をピークに減少傾向に転じ、2005年には3千60億円まで落ち込み、それ以降は増加基調にあると試算されている。また、2009年の推定歯科技工委託費は2千762億円で、2005年以降、3千億円を割り込んでいる(図1)。
しかし、保険診療での歯科医療費は2兆7千億円(2011年度)であり、わずか3千億円台の自費診療を上乗せしても、総額3兆円程度。全体の医療費37兆8千億円をベースにするとわずか0・8%増にすぎない。
そもそも、憲法25条に基づく国民皆保険制度のもとでは、安全性と普及性のある医療技術はすみやかに保険導入されるべきであり、「保険のきく範囲を広げてほしい」という声は国民の圧倒的大多数の歯科医療への要望である(図2)。
また、自費や混合診療に活路を求めても展望はない。小泉構造改革以来、長らく続く貧困と格差の拡大などの影響で、医業収入に占める自費診療の割合は歯科診療所(個人)あたり10%にまで減少している(図3)。歯科医院経営の改善のためにも、「保険でより良い歯科医療」の充実が必要とされている。
歯科技工の量的質的担保には、歯科技工所・歯科技工士の待遇改善が不可欠で、そのためには補綴物の技術料が大幅に引き上げられるべきである。補綴物はじめ技術料本体を中心に当面10%診療報酬を引き上げるには、わずか2千700億円で可能である。自費3千億円の保険導入と合わせても合計5千700億円で、総医療費ベースで1・5%増となるにすぎない。
とくに、歯科技工所・歯科技工士の待遇改善には、歯科技工料金を大幅に引き上げることが不可欠である。当面の目安としては、「7:3」大臣告示(※)に準ずる水準に現在の流通価格を高めるべきといえる。
保団連は試算として、歯科医師配分金額を3割分とし、歯科技工士配分金額を7割になるよう調整し算出し、算定回数を乗じてその差を求めた。結果、月単位で106億円、年単位では1千272億円の医療費増が必要と試算している(表)。診療報酬を10%アップして半分を歯科技工料にまわせば実現できる。
※「7:3」大臣告示 1988年に厚生大臣が発出した歯科技工にかかる費用の割合を示した文書。製作技工の費用が全体の約70%、製作管理の費用が全体の約30%と示した。
この報告では、2009年の歯科の自由診療推定金額は3千612億円で、1991年の約4千447億円をピークに減少傾向に転じ、2005年には3千60億円まで落ち込み、それ以降は増加基調にあると試算されている。また、2009年の推定歯科技工委託費は2千762億円で、2005年以降、3千億円を割り込んでいる(図1)。
図1 自費診療医療費と歯科技工委託費の推移
自費3千億円の保険導入は財政的に可能
日歯はこの中で、自由診療の保険導入について、「経営基盤の視点からすれば、多くの歯科医は、ある程度、保険診療の範囲を広げることに賛成するものの、現在自由診療で行われている診療行為の全てが保険給付に組み込まれることには評価の低さから異論がある」とし、「保険財政の観点からも現在の自由診療が全て保険に導入されることは考えにくい」と考察している。しかし、保険診療での歯科医療費は2兆7千億円(2011年度)であり、わずか3千億円台の自費診療を上乗せしても、総額3兆円程度。全体の医療費37兆8千億円をベースにするとわずか0・8%増にすぎない。
そもそも、憲法25条に基づく国民皆保険制度のもとでは、安全性と普及性のある医療技術はすみやかに保険導入されるべきであり、「保険のきく範囲を広げてほしい」という声は国民の圧倒的大多数の歯科医療への要望である(図2)。
また、自費や混合診療に活路を求めても展望はない。小泉構造改革以来、長らく続く貧困と格差の拡大などの影響で、医業収入に占める自費診療の割合は歯科診療所(個人)あたり10%にまで減少している(図3)。歯科医院経営の改善のためにも、「保険でより良い歯科医療」の充実が必要とされている。
図2 歯科医療には保険のきかない治療があることについて
図3 1カ月の歯科の医業収入と自費診療の推移
歯科技工料1300億円増を ―保団連が初試算
PT報告は、歯科技工委託費の減少の影響について「歯科技工士養成機関数が減少し、就労環境の悪化も重なり、若い歯科技工士の離職傾向は著しく、今後の歯科技工の量的質的担保が課題」と指摘している。歯科技工の量的質的担保には、歯科技工所・歯科技工士の待遇改善が不可欠で、そのためには補綴物の技術料が大幅に引き上げられるべきである。補綴物はじめ技術料本体を中心に当面10%診療報酬を引き上げるには、わずか2千700億円で可能である。自費3千億円の保険導入と合わせても合計5千700億円で、総医療費ベースで1・5%増となるにすぎない。
とくに、歯科技工所・歯科技工士の待遇改善には、歯科技工料金を大幅に引き上げることが不可欠である。当面の目安としては、「7:3」大臣告示(※)に準ずる水準に現在の流通価格を高めるべきといえる。
保団連は試算として、歯科医師配分金額を3割分とし、歯科技工士配分金額を7割になるよう調整し算出し、算定回数を乗じてその差を求めた。結果、月単位で106億円、年単位では1千272億円の医療費増が必要と試算している(表)。診療報酬を10%アップして半分を歯科技工料にまわせば実現できる。
窓口負担の軽減運動と一体で
診療報酬引き上げは窓口負担を重くしかねないため、保険範囲の拡大、診療報酬改善とともに患者窓口負担の軽減を三位一体で要求することが求められている。まさに「保険でより良い歯科医療」の充実にこそ、国民の健康を支える歯科医療の未来が拓けるといえよう。※「7:3」大臣告示 1988年に厚生大臣が発出した歯科技工にかかる費用の割合を示した文書。製作技工の費用が全体の約70%、製作管理の費用が全体の約30%と示した。
表 製作歯科技工料(保険内)の試算について(保団連作成)
日本歯科技工士会「2009歯科技工士実態調査報告書」の70%技工料金と加重平均金額を日本歯科技工士会「平成21年度第91回代議員会議案書」の新点数を反映させ、調整済みの基礎資料とした。
歯科医師配分金額を加重平均金額との差より求め、その金額を3割分とし、歯科技工士配分金額を7割になるよう調整し、算出した。それらを試算単価とし、点数を試算した。そして、試算点数と現行点数それぞれに厚生労働省「社会医療行為別調査」2008年参照の算定回数を乗じて、その差を求め、その結果、月単位で106億円、年単位では1272億円の必要増が試算された。
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