2013年7月25日(1725号) ピックアップニュース
インタビュー 県有診協会長・水守 彰一先生(須磨区・水守外科) 有床診の力活かせる診療報酬に
有床診療所は、外来・入院両方の機能をあわせ持ち、在宅医療の後方支援、手術や急性期の緊急入院、病院と介護施設のつなぎなど、地域医療の拠点になりうる存在。しかし、低診療報酬のもとで、経営の困難は増加している。兵庫県有床診療所協議会(以下、有診協)会長で、協会理事の水守彰一先生(須磨区)に、有床診の役割や管理栄養士配置撤回などの課題を聞いた。(聞き手は編集部)
法律上、明確な規定はなく、医療法で20床以上のベッドがある医療機関を「病院」と定義しているので、19床以下のベッドを有する医療機関を一般に「有床診療所」と呼んでいます。
病院にかわってベッドを提供できる有床診は、短期間の入院や在宅患者の急変時などで小回りの効く対応が可能です。特に病院が少ない地域の住民・患者・家族、そして医療者にとっては、なくてはならない存在で、地域医療の安心を下支えしているといえます。
18年前の阪神・淡路大震災発生直後、私の地域は比較的被害が少なくて済みましたが、被害の大きかった長田区や兵庫区などから患者が次々と運ばれ、ベッドはフル稼働でした。地域の住民たちが診療所まで水を引いてくれたりもして、地域医療の拠点になりうる存在なのだと身をもって感じました。
有床診には、医師の教育的側面もあると思います。病院勤務を経て開業する際、たとえば私のように外科医なら、ベッドがなければ満足に手術もできず、今まで積み重ねてきた経験を開業とともに手放してしまうことになります。ベッドがあれば、自分が培ってきた技術を地域住民に対して最大限有効活用できますし、引き続いての研さんにもつながります。
ええ、この20年間で、全国で半数にまで減っています。新規開業はほとんどなく、無床化する診療所も増えています。入院部分が黒字のところはきわめて少数でしょうね。いつでも入院させてくれるという安心感もあり通院される患者は比較的多いので、なんとか外来部門で経営を成り立たせているのが現状です。
有床診の入院基本料が不当に低く抑えられてきたことが、経営難の最大の原因です。入院基本料の抜本的引き上げなしには改善しません。経営努力だけでは限界があります。
また、2012年の診療報酬改定で、管理栄養士の配置が病院・有床診ともに義務化されました。小規模経営である有床診にとって、診療報酬の引き上げなしに管理栄養士を雇用することは大変な負担です。郡部などでは管理栄養士の数自体も不足しています。そもそも、単科の有床診などは、管理栄養士がいないと医療が成り立たないというわけではありません。一律の義務化ではなく、配置した有床診に対しては診療報酬を加算することで評価すべきです。
有床診を開業する先生方は、外来から入院まで医療のプロセス全体に責任を持って地域住民の役に立ちたいという、強い思いを持っています。管理栄養士を雇えないばかりに、その思いを実現できないことが許されていいはずがありません。来年の診療報酬改定では、入院基本料の抜本的引き上げとともに、少なくとも有床診の管理栄養士配置義務化は必ず撤回しなければなりません。
私が協会活動に携わるようになったのは、古川語正先生(故人、東灘区、元協会参与)に声をかけてもらったことがきっかけです。有床診療所の取り組みは、保団連が先駆でした。その後、全国に有診協の地域支部もでき、保団連と有診協それぞれの役割を発揮していると思います。
以前は医療法13条で「同一の患者を48時間を超えて入院させることのないように努めなければならない」とする48時間規制があり、有床診が持つ役割を抑制することにつながっていました。協会・保団連や有診協が粘り強く運動を続けた結果、2007年に同規制を撤廃させることもできました。
8月の全国有診協総会・兵庫大会のシンポジウムも、兵庫協会や保団連で活躍されている先生方がシンポジストを務められます。私もホストかつシンポジストの一人として、有床診の意義や課題を明らかにし、来年の改定のはずみとなるような有意義な大会にしたいと思います。兵庫の先生方に、ぜひご参加いただきたいですね。
地域医療を下支え
―そもそも有床診療所(以下、有床診)とは何か、教えていただけますか。法律上、明確な規定はなく、医療法で20床以上のベッドがある医療機関を「病院」と定義しているので、19床以下のベッドを有する医療機関を一般に「有床診療所」と呼んでいます。
病院にかわってベッドを提供できる有床診は、短期間の入院や在宅患者の急変時などで小回りの効く対応が可能です。特に病院が少ない地域の住民・患者・家族、そして医療者にとっては、なくてはならない存在で、地域医療の安心を下支えしているといえます。
18年前の阪神・淡路大震災発生直後、私の地域は比較的被害が少なくて済みましたが、被害の大きかった長田区や兵庫区などから患者が次々と運ばれ、ベッドはフル稼働でした。地域の住民たちが診療所まで水を引いてくれたりもして、地域医療の拠点になりうる存在なのだと身をもって感じました。
有床診には、医師の教育的側面もあると思います。病院勤務を経て開業する際、たとえば私のように外科医なら、ベッドがなければ満足に手術もできず、今まで積み重ねてきた経験を開業とともに手放してしまうことになります。ベッドがあれば、自分が培ってきた技術を地域住民に対して最大限有効活用できますし、引き続いての研さんにもつながります。
管理栄養士配置義務化撤回を
―果たしている役割は大きい一方、有床診の数は年々減少傾向と聞きます。ええ、この20年間で、全国で半数にまで減っています。新規開業はほとんどなく、無床化する診療所も増えています。入院部分が黒字のところはきわめて少数でしょうね。いつでも入院させてくれるという安心感もあり通院される患者は比較的多いので、なんとか外来部門で経営を成り立たせているのが現状です。
有床診の入院基本料が不当に低く抑えられてきたことが、経営難の最大の原因です。入院基本料の抜本的引き上げなしには改善しません。経営努力だけでは限界があります。
また、2012年の診療報酬改定で、管理栄養士の配置が病院・有床診ともに義務化されました。小規模経営である有床診にとって、診療報酬の引き上げなしに管理栄養士を雇用することは大変な負担です。郡部などでは管理栄養士の数自体も不足しています。そもそも、単科の有床診などは、管理栄養士がいないと医療が成り立たないというわけではありません。一律の義務化ではなく、配置した有床診に対しては診療報酬を加算することで評価すべきです。
有床診を開業する先生方は、外来から入院まで医療のプロセス全体に責任を持って地域住民の役に立ちたいという、強い思いを持っています。管理栄養士を雇えないばかりに、その思いを実現できないことが許されていいはずがありません。来年の診療報酬改定では、入院基本料の抜本的引き上げとともに、少なくとも有床診の管理栄養士配置義務化は必ず撤回しなければなりません。
8月に神戸で全国有診協兵庫大会
―8月には神戸市で全国有床診療所連絡協議会の総会と大会が開催されますね(下記)。私が協会活動に携わるようになったのは、古川語正先生(故人、東灘区、元協会参与)に声をかけてもらったことがきっかけです。有床診療所の取り組みは、保団連が先駆でした。その後、全国に有診協の地域支部もでき、保団連と有診協それぞれの役割を発揮していると思います。
以前は医療法13条で「同一の患者を48時間を超えて入院させることのないように努めなければならない」とする48時間規制があり、有床診が持つ役割を抑制することにつながっていました。協会・保団連や有診協が粘り強く運動を続けた結果、2007年に同規制を撤廃させることもできました。
8月の全国有診協総会・兵庫大会のシンポジウムも、兵庫協会や保団連で活躍されている先生方がシンポジストを務められます。私もホストかつシンポジストの一人として、有床診の意義や課題を明らかにし、来年の改定のはずみとなるような有意義な大会にしたいと思います。兵庫の先生方に、ぜひご参加いただきたいですね。
第26回全国有床診療所連絡協議会総会・兵庫大会
日 時 8月3日(土)、4日(日)
会 場 神戸ポートピアホテル
シンポジウム(4日10時~11時50分)
「都市型有床診療所のあり方~大都市における有床診療所の役割~」
〈基調講演〉日医総研主任研究員 江口成美氏
〈座長〉県有診協会長 水守彰一先生
〈シンポジスト〉安藤外科整形外科(大阪府)安藤元博先生/市橋クリニック(神戸市)市橋研一先生/石橋内科(姫路市)石橋悦次先生/林山クリニック(神戸市)梁勝則先生/神戸アーバン乳腺クリニック(神戸市)小西豊先生
日 時 8月3日(土)、4日(日)
会 場 神戸ポートピアホテル
シンポジウム(4日10時~11時50分)
「都市型有床診療所のあり方~大都市における有床診療所の役割~」
〈基調講演〉日医総研主任研究員 江口成美氏
〈座長〉県有診協会長 水守彰一先生
〈シンポジスト〉安藤外科整形外科(大阪府)安藤元博先生/市橋クリニック(神戸市)市橋研一先生/石橋内科(姫路市)石橋悦次先生/林山クリニック(神戸市)梁勝則先生/神戸アーバン乳腺クリニック(神戸市)小西豊先生