兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2013年8月05日(1726号) ピックアップニュース

保団連 夏季セミナー

 保団連は、7月6、7日に東京で第43回夏季セミナーを開催し、全国から363人が参加した。兵庫協会からは会員ら27人が参加。武村義人保団連副会長(兵庫協会副理事長)が基調提案し、経済評論家の内橋克人氏が記念講演「保険医が創る安心社会」を行ったほか、財源論やTPP、改憲等についての講座や分科会と、アベノミクスをテーマとしたシンポジウムが開催された。参加記を紹介する。
参加記(1) 医療制度の危機 医師は自覚を
宝塚市  中井 通治

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内部留保について小栗教授が解説

 午後2時30分伊丹発のJAL機に乗って羽田に向かった。風が強かったが、雲の形がきれいな空であった。夏季セミナーには20回以上参加している。密やかな私の夏の楽しみでもある。
 基調提案は、兵庫の武村副理事長が、持ち時間30分で、次々とスライドを説明された。安倍政権は(1)憲法改悪、(2)アベノミクス、TPP参加、(3)消費税増税、(4)原発再稼働、を狙う。自民党の比例区の得票率は、大勝した時も、大敗した時も、ほとんど変わらない。来年4月から前期高齢者窓口2割負担、生活保護制度改悪、高すぎる国保料、TPPでさらに、医療の営利産業化が進む。
 記念講演では内橋克人氏が、日本型無国籍企業、原発への警鐘、〝SLOW DEATH〟という概念を話された。17兆円もの復興税をすぐに被災者支援にまわせば、万事解決するとも言われた。米国の欺瞞が渦巻いている。
 翌朝の小栗崇資先生(駒澤大学経済学部教授)の話によると、内部留保人件費の抑制(労働者の犠牲)法人税減税(国民の犠牲)から生まれる。2012年の上場企業千社の連結利益剰余金合計は200.4兆円もあり、それも社会的に還元することができれば、消費税を増税しなくても、雇用を活性化できる可能性があるとのことであった。
 午後のシンポジウムでは、岡田知弘氏(京都大学公共政策大学院教授)と吉原毅氏(城南信用金庫理事長)は、自分と金のことしか考えないエリートシステムが問題で、日本の地域の町の活性化を研究する方が、国民のためになるとのことであった。高本英司氏(保団連副会長)は診療所から医療を変えることができると主張された。保団連と医師会が一緒になってTPPに必死に反対すれば、道は開ける可能性がある。
 本当に政治家は誠実、叡知、愛国心を持ってほしい。ともかく、内容が濃く、医療制度の危機を医師一人ひとりが自覚する必要があると確信して帰路に着いた。

参加記(2) 内部留保270兆円活用の政治的決断を
明石市  永本  浩

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基調提案する武村副理事長

 武村保団連副会長の基調提案は30分の短時間に、70面というきわめて多数のスライド画面であるが、全スライド面が当日配付資料に入っており、懇切ていねいな配慮であった。
 安倍政権下で現在日本の医療が直面する膨大な課題をほぼすべて網羅している。このスライド原稿は長期保存資料として有効であり、必要十分な資料である。イギリスの哲学者ホワイトヘッドが言うように、西洋哲学史がプラトンのdialogueの脚注であるがごとく、基調提案後の各論は武村原稿の脚注となる...。
 記念講演について、内橋克人氏の講演は演題のSub titleが「アベノミクスの七不思議を糺しつつ」であるが、この点については結局ほとんど解説がなかった。
 多国籍企業は今や、無国籍企業で焼畑農業を行っている。国家間を移動し、国家、国民に貢献しないで法人税は少ししか払わず、給与は下げたままである。
 神戸市出身の先生は、兵庫協会会員にとっても、なじみのある演者である。1945年3月と6月の神戸大空襲での体験を生々しく述べられた。当日、急性虫垂炎で神戸市須磨区の病院に入院していたため、自分がいつも逃げていた防空壕には知人が代わりに避難していたが、そこへ爆撃されて知人が犠牲になった話。それと、今回の福島原発の事故の被災者は〝東北の鬼〟になっており、内部被曝はsudden deathではなく、〝slow death〟という言葉を擬*なぞら*えて、自分の体験と重複されて、聴衆者にdeja-vu(既視感覚)をリアルに想起させた。81歳の先生はすべてを知悉した仙人のような風貌ふうぼうで格調高く、真摯しんしな態度で講演された。
 2日目の分科会は「社会保障と財源問題―内部留保をめぐって」。演者は「会計学」の小栗崇資駒澤大学教授で、今まで経済学者が理論的、非現実的な論理で現状分析を行い、理想論を述べるに過ぎなかったが、会計学というのは具体的な数字が出てきて、より現実的である。
 日本の企業はglobal化し、270兆円以上の内部留保金があり、日本の会社は株主の集合体という概念が少なく、このままではさらに内部留保金が貯まる。
 内部留保金を社会的に還元循環する方法で、一つの答えが得られている。それは台湾で98年から行われている毎期の内部留保金増加額に課税する方法である。課税を回避するため配当が増加し、株式市場が活性化し、配当利回りが上がり、所得税の増加から税収が上がる。
 内部留保金に20%課税すると、10年間で11.3兆円の税収となる。企業の内部留保金のすべてが悪ではないが、270兆円は大きすぎる。政治的決断が待たれる。ヒトの命と普通のくらしを重視するのが政治の根幹ではないのか!
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