兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2013年8月25日(1727号) ピックアップニュース

主張 「もはや戦後ではない?」 後の世代に平和で豊かな世界を引き継ごう

 1956年の経済白書には「もはや戦後ではない」と書かれ、流行り言葉にもなったと聞く。その後、日本は高度経済成長を達成し、世界第2位の経済大国となり「豊かな社会」を「取り戻し」た。
 安倍首相は「戦後レジュームからの脱却」「日本を取り戻す」と繰り返す。何を取り戻しどこに進むのか。
 安倍首相の再登場でのリベンジ目標は二つ。「選挙での勝利と長期政権」「憲法を改正した自民党総裁の名声」である。
 安倍自民党は公明党とあわせ、衆参両方で安定多数を得た。憲法改正や原発問題は争点から外す戦略が奏功し、第一の目標は達成の目処がついた。今後3年間は政策の強行が可能で、懐古主義が一党独裁のもとで進む危惧がある。その危険な方向は第2の目標である「憲法改正」の自民党草案に透けて見える。
 「全て国民はこの憲法を尊重しなければならない」とし、国民が国家権力を縛るという立憲主義の原則を無視。「常に」権力者の判断する「公益及び公の秩序に反してはなら」ず、これに反する国民の基本的人権や表現の自由や財産は保障されない。「家族は互いに助け合わなければなら」ず、「国旗、国歌」を定めこれを「尊重しなければならない」。「国防軍を創設し、自衛権の発動は妨げない」。「緊急事態の宣言」も新設される。
 草案は「時代の要請、新たな課題に対応」するとのことだが、権力に逆らう者は「非国民」と呼ばれるだろう。
 長引く政府の無策により少子高齢化は進行し、経済は停滞、経済格差、教育格差は拡大し固定化する。「非正規雇用」「年収300万円」「結婚できない」が基準となり、次の世代に「豊かな社会」はあるのだろうか。
 再びどこかに記されるのだろうか。「冷戦が終焉し日本周辺の国際情勢は『もはや戦後ではない』。平和憲法のもとでの豊かな社会は終わった。憲法を改正し、国民は一丸となり来るべき緊急事態に備えよう」と。国内の支持が高く、近隣国との摩擦を生む状況はもはや「戦前」とは言えないか。
 自民党が議員数で多数とはいえ、投票率と得票率から計算すれば、今回の選挙では比例代表の得票は有権者の2割にも満たない。自民党支持者も自民党員であっても、すべての政策を丸投げで政府に任せたわけではない。
 国会でのねじれは解消したが、憲法改正、消費税増税、TPP参加、原発再稼働などの主要政策において世論とのねじれは残っている。「死に票」は多数生じたが、投票した国民の民意が失われたわけではない。そのことを政権に忘れさせてはならない。
 先人の努力と平和憲法によって「戦争を知らずに生まれ」「豊かな生活」を享受した私たちの世代が、責任を持って次世代に「平和と豊かさ」を残すために、知恵を絞って汗をかこう。
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