2013年9月05日(1728号) ピックアップニュース
燭心
ジーメンス(ドイツ)、フォナック(スイス)、オーティコン(デンマーク)、ワイデックス(デンマーク)、ノキア(フィンランド)。これらは世界の補聴器製造のトップ企業群である。日本の家電メーカーは1社も入っていない▼補聴器は、音声の単なるアナログ的増幅器ではない。会話の「聞き取り」を求めて音を大きくすると「聴き心地」が損なわれてしまうので、これらのメーカーは総力を挙げて、デジタル処理をし、マルチチャンネル信号処理、ノンリニア増幅処理、ハウリング抑制機能等々研究開発を行って、高価な電子機器となり、片耳50万円以上もする機種もある▼注目したいのは、補聴器メーカーは北欧福祉国家に多いことだ。これは国家の高齢者に対する福祉政策の賜 である。高齢者の中等度以上の難聴者に対して無償で提供することにより、電機メーカーは研究開発意欲が高まり、成長産業となる。その結果、強靱な産業技術力が身につき、さらにノキアのように携帯電話の技術向上に進展し、フィンランド最大の企業となった▼日本では医療費を増やすことは経済の足かせとなると考えて、全く別の政策を執った。その結果、元来、日本の「お家芸」であった小型電子機器の産業競争力はこの分野で衰退してしまった。パナソニックも撤退した。医療は成長産業である!▼日本は高齢者の医療費負担をさらに上げようとしているが再び間違った轍 をふまないことを望む。国の医療政策を糺したい(鼻)