2013年9月25日(1730号) ピックアップニュース
燭心
宮崎駿監督の最後の作品であるアニメ映画「風立ちぬ」を観賞した。今回の作品はファンタジーを封印し、零戦の設計者である堀越二郎を主人公としたものとなっている▼宮崎監督は大変な飛行機マニア、とりわけ戦闘機マニアであるらしい。だから実在人物を主人公とすると航空機設計者になったのだろう。しかし殺人兵器である戦闘機を設計した人物を描くのに細心の注意を払っている▼宮崎は護憲主義者で、とりわけ憲法9条の改悪には反対している。だから今までの戦争映画にありがちだった好戦的傾向は出さないように苦労していると思う。堀越はあくまで飛行機好きなので零戦を設計したのであり、軍国主義に協力するためではないことを訴えていた▼兵器や戦闘機を描いてもどういう立場で描くかでその影響力は異なる。太平洋戦争中のような忠君愛国思想のもとでは、少年に天皇のために死ぬのが日本国民の務めだと思わせる▼筆者が少年時代、プラモデルに凝って零戦や戦艦大和の模型を多数作った。模型の箱には零戦が米軍機を撃墜する絵が華々しく描かれていたが、軍国少年になる気配は全くなかった。学校の先生が戦争はいけませんと教えてくれたからである▼平和を愛し憲法を守って戦争に反対しようという考えは、戦争で愛する人を失うなどの経験をすれば自然と身につく。しかし、戦争推進勢力は、弾圧機関を使ってそういう思想を抑圧した。このような行為は繰り返してはならない。(海)