2013年11月15日(1735号) ピックアップニュース
10・27 歯科決起集会 医療従事者が力を合わせ保険で良い歯科実現を
街頭で歯科医療充実を訴えた加藤(左端)・武村(右2人目)各副理事長ら兵庫の参加者(東京都内)
集会に先立って150人が東京都内2カ所にわかれて街頭署名宣伝を行い、1時間足らずの間に500筆を超える署名を集めた。武村副理事長ら兵庫からの参加者もマイクを握り、署名への協力を訴えた。
集会では、保団連の宇佐美宏歯科代表が「歯科医療関係者が安心して従事できる環境にしなければならない。国民へ発信することが必要であり、良質な歯科医療の提供のために正当な診療報酬を要求していこう」とあいさつした。
主催者を代表して基調報告した全日本民主医療機関連合会理事の江原雅博歯科部長は、「貧困と格差が広がる中、長年の低医療費政策のもとで深刻な歯科医療の実態が広がっており、命を守る歯科医療の役割は重要になっている。歯科医療の再生は私たち自身の運動いかんにかかっている」と参加者に訴えた。
各地・各団体からの報告では、「歯科会員アンケート」(保団連)、「自治体意見書採択100%達成」(大分協会)、「歯科技工士アンケート」(大阪歯科協会)、「岩手県で被災者の窓口負担免除継続が実現」(岩手協会)、「健康づくり運動の中で署名運動を展開」(医療福祉生協)など豊富な経験が出された。
「保険でより良い歯科を」兵庫連絡会の雨松真希人歯科技工士は、「歯科技工士の過酷な労働環境の最大の理由は低医療費政策にある。歯科医療関係者が同じ方向をめざし、必要な診療報酬を求めていきたい」と発言した。
樫林理事と島津先生もフロアから発言した。
集会は最後に、窓口負担の大幅軽減、保険のきく歯科医療範囲の拡大、消費税増税・社会保障制度改悪・TPP参加阻止などを求めたアピールを参加者全員で採択するとともに、11月28日に開かれる歯科・国会要請行動と国会内集会へ向けて、歯科請願署名50万筆を達成しようと確認した。
10・27歯科決起集会での発言
歯科技工はブラック産業なのか
「保険でより良い歯科医療を」兵庫連絡会
雨松真希人 歯科技工士
10月27日に東京で開催された歯科決起集会での、「保険でより良い歯科医療を」兵庫連絡会の雨松氏の発言内容を掲載する。過酷な労働環境で離職率8割
現在、20、30歳代の歯科技工士の離職率は約80%です。次の担い手がいなくなることが危惧されています。私の同期でも技工を続けているのは1人になってしまいました。10年間必死にがんばり続けてきましたが、残念ながら今年の3月に歯科技工の世界から去ることになった同期の友人(32歳)がいます。彼が技工所を辞めるときの状況は、残業代はなく、月給15万円でした。週休1日、帰宅は早くて終電、週に2日は泊まり。経済的な厳しさはもちろん、家族も本人の身体を心配し、これ以上技工士を続けることには反対でした。
彼も含めてほとんどの若い技工士は、技工が嫌で去るのではなく、過酷な労働環境から精神的にも肉体的にも追い込まれて去っていくのです。
このような深刻な状況が特別なことではないことは、大阪府歯科保険医協会さん、技工士連絡会さんの「歯科技工所アンケート」からもわかります。まずは大変な努力により、このようなアンケートに取り組まれたことに心より敬意を表します。回答のあった平均年齢が52歳であり、若い技工士はもっと深刻な状況にあることは、容易に想像がつくと思います。
力を合わせ低医療費政策打破を
この超長時間労働、超低賃金といった労働環境の最大の理由は技工料金の安さにあります。安くすることで仕事を掻き集めたい技工所側と、厳しい経営状況にある診療所側の思惑が一致し、値下げに歯止めが効かなくなってしまった、ということですが、問題の根幹には低医療費政策があり、公定価格である保険点数に対し、技工料金は市場価格という矛盾が、問題をより複雑化しています。現在、若者を使い捨てにするなどブラック企業が社会問題化しています。この定義から言うと、技工はもはやブラック産業といっても過言ではありません。この課題の解決に歯科医療全体で取り組む行動を起こさない限り、より良い歯科医療の提供のための技術、技能の継承はもとより、歯科医療全体が社会的信頼を失いかねないと考えます。
ヒポクラテスの誓いの中に「自身の能力と判断に従って、患者に利すると思う治療法を選択し、害と知る治療法を決して選択しない」という言葉があります。今の状況は決して、現在、未来の患者さん、社会にとっても良質な技工物を提供していける状況とは言えません。
良質な技工物を提供していくためには、例えば7対3大臣告示を基準に考えてみても、準ずる水準に現在の流通価格を高めるためには、技工料金を大幅に引き上げる必要があります。
このためにも、今こそ歯科技工士、歯科医師のみなさんが対面し緊密な連携を図ると同時に、保団連試算の製作歯科技工料などを参考に、双方が同じ方向をめざし、必要な診療報酬を求めていく。このことは歯科医療従事者のみならず、患者さん、社会にとって、まさに「より良い歯科医療」であり、歯科医療全体の発展と社会的評価を高める確かな道のひとつであると確信しています。
最後に私自身はもちろん、若い技工士の未来のためにも、ここにお集まりの歯科医師の皆さまには大変お忙しい中とは思いますが、まずは率直に意見を出し合い、双方の発展につながる機会や場所創りの発展のため暖かいサポートのお願いをさせていただきまして、報告とさせていただきます。