2014年3月05日(1744号) ピックアップニュース
2014年度 診療報酬改定 談話
2014年度診療報酬改定の内容について、医科・歯科それぞれの談話を掲載する。
1.今次改定は、総枠プラス0.1%(本体+0.73%、薬価・材料価格▲0.635%)となっているが、消費税増税対応分の1.36%を除くと、実質マイナス改定(▲1.26%)である。
政府は、今次改定の重点課題として「医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実」を打ち出しており、「入院から在宅」「医療から介護」への誘導を、前回改定に引き続き露骨に示した。地域医療を担う診療所や中小病院の役割を評価せず、患者の実態を無視した、医療費抑制ありきの改定となった。
2.外来では、「主治医機能の評価」として、一部を除くすべての点数を包括とした「地域包括診療料」が新設された。
主治医となる医療機関を原則一つに限定するもので、将来的には、患者が受診できる医療機関を制限する「登録医制度」も視野に入れた内容となっている。国民皆保険制度の根幹である患者のフリーアクセスを阻害する可能性は否めない。
在宅医療では、緊急往診や在宅看取りの実績のある医療機関への評価など、入院から在宅への誘導が極めて色濃い。前回改定で新設された機能強化型の在宅療養支援診療所(病院)については、緊急往診や在宅看取りでの実績要件が強化され、連携型では各医療機関が一定の実績を満たすことが求められた。
また、在宅患者訪問診療料「同一建物居住者」のさらなる点数引き下げや、在宅時医学総合管理料(特定施設入居時等医学総合管理料)にも同一建物居住者の取り扱いが導入され、点数が大幅に引き下げられた。医療内容は同一であるにもかかわらず、同一建物居住者というだけで点数を大幅に引き下げることは極めて不合理であり、在宅医療に取り組む医療機関の経営や在宅療養患者に多大な影響を及ぼしかねない。不適切な医療機関への対応は、予定されている療養担当規則の改定で十分だ。
その他の項目では、要介護者に対する維持期リハビリの経過措置がさらに2年間延長された。しかし、過去1年間に介護保険の通所リハビリを実施していない場合は減算となるなど、新たなペナルティも導入されている。
うがい薬のみを処方した場合、保険給付の対象外とすることも盛り込まれており、湿布や漢方薬など、さらなる対象外の拡大、保険外併用療養の拡大、混合診療の解禁へとつながりかねない。
3.入院医療では、「高度急性期と一般急性期の明確化」を掲げ、2年間で急性期病床を現在の36万床から9万床削減する方針だ。7対1入院基本料について、平均在院日数短縮に向けた特定除外制度の見直しや看護必要度の見直し、在宅復帰率の導入などで算定要件を厳格化している。「急性期病床と長期療養を担う病床の機能分化」として、急性期病院からの受け皿として「地域包括ケア病棟」が新設(従前の亜急性期病棟から改編)されている。また、療養病棟でも在宅復帰機能強化加算が新設されている。急性期・慢性期に関わらず、入院患者の早期退院を促すものとなっている。
管理栄養士の配置義務化は、協会・保団連の粘り強い運動によって、有床診療所では元の加算評価となり、撤回された。一方、病院は、経過措置は設けられているものの義務化されたままである。特に中小病院では管理栄養士の確保が困難なところもあり、地域医療を確保する観点から病院についても義務化を撤回すべきである。
前々回の改定で大きな混乱をもたらした入院患者の他医療機関受診時の取り扱いについては、協会・保団連のたび重なる要請にもかかわらず、今回も全く改善されていない。
今次改定は「社会保障・税一体改革」で示されている社会保障切り捨てをさらに推進するものであり、協会は地域医療改善のために診療報酬の抜本的引き上げ、患者負担の軽減を求めていくつもりだ。
今次歯科診療報酬改定は、消費税増税補てん分を除くと0.12%増となった。これは、前回改定を大幅に下回るものであり、歯科医療危機を打開し、20年近くにわたり2兆6000億円台に抑え込まれた歯科医療費の総枠拡大にはほど遠い改定である。
協会・保団連は、そもそも消費税損税の解消のためには、患者負担・保険料負担の増大を招く診療報酬での補てんではなく、ゼロ税率の導入を求めている。今次改定は医療界が求めるゼロ税率の要望を無視するとともに、実質的には損税補てんにも至っていないという点で、二重の意味で不当な改定である。(中医協・医療機関等における消費税負担に関する分科会・提出資料によると、消費税5%の損税は、歯科の個人立診療所1件について年72.1万円、8%では115万円に達する)
協会・保団連では、「保険で良い歯科医療」の実現を求める請願署名を全国で過去最高の34万筆集めるとともに、診療報酬の不合理是正や抜本改善を求めて厚労省交渉や国会行動などを重ねてきた。その結果、歯科疾患管理料の文書提供の見直し、訪問診療時の著しく歯科治療が困難な患者に対する評価の見直し、歯周治療用装置の要件緩和、在宅かかりつけ歯科診療所加算の新設、周術期口腔機能管理料の点数引き上げや医科歯科連携の評価など、一定の改善がみられた。
しかし、長年据え置かれている基礎的技術料の大幅引き上げが見送られた。また、在宅医療の充実を重点課題としているものの、訪問診療の20分要件は撤廃されず、同一建物内2人以上の歯科訪問診療料が大幅に引き下げられた。
義歯新製後の管理料・調整料が「歯科口腔リハビリテーション料」に変更・包括され、実質的な引き下げとなるとともに、医学管理からリハビリの流れが作られ「医療保険から介護保険へ」の誘導が危惧される。
先進医療技術からの保険導入は、CAD/CAM(コンピュータで模型を読みとり、歯冠補綴物を削り出す装置)冠や歯科用CT撮影装置および手術用顕微鏡を用いた歯根端切除術など、一部の歯科医療機関でしか算定できないものにとどまっている。安全性と有効性が認められる先進医療技術はすみやかに保険導入すべきである。
他方、うがい薬のみの処方について保険給付から除外する内容が盛り込まれており、これをてこにしていっそうの保険外しが狙われかねない。
また、歯科技工加算はごくわずかの引き上げに留まり、小規模・零細な歯科技工所、長時間・超過酷な労働環境におかれている歯科技工士を支援するものにはなっていない。
歯科をめぐる矛盾の根源には、長期にわたる低医療費政策がある。今次改定でも歯科医院経営の改善はもとより、歯科医療を支えている歯科技工士と歯科衛生士の就業改善にも到底いたらず、歯科医療危機はいっそう深刻となる。
協会は、窓口負担大幅軽減・保険範囲の拡大・診療報酬の改善実現へ患者・国民とともに「保険でより良い歯科医療」を求める運動を引き続き強めていく。
医科 診療報酬の抜本的引き上げを
研究部長 清水 映二
1.今次改定は、総枠プラス0.1%(本体+0.73%、薬価・材料価格▲0.635%)となっているが、消費税増税対応分の1.36%を除くと、実質マイナス改定(▲1.26%)である。
政府は、今次改定の重点課題として「医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実」を打ち出しており、「入院から在宅」「医療から介護」への誘導を、前回改定に引き続き露骨に示した。地域医療を担う診療所や中小病院の役割を評価せず、患者の実態を無視した、医療費抑制ありきの改定となった。
2.外来では、「主治医機能の評価」として、一部を除くすべての点数を包括とした「地域包括診療料」が新設された。
主治医となる医療機関を原則一つに限定するもので、将来的には、患者が受診できる医療機関を制限する「登録医制度」も視野に入れた内容となっている。国民皆保険制度の根幹である患者のフリーアクセスを阻害する可能性は否めない。
在宅医療では、緊急往診や在宅看取りの実績のある医療機関への評価など、入院から在宅への誘導が極めて色濃い。前回改定で新設された機能強化型の在宅療養支援診療所(病院)については、緊急往診や在宅看取りでの実績要件が強化され、連携型では各医療機関が一定の実績を満たすことが求められた。
また、在宅患者訪問診療料「同一建物居住者」のさらなる点数引き下げや、在宅時医学総合管理料(特定施設入居時等医学総合管理料)にも同一建物居住者の取り扱いが導入され、点数が大幅に引き下げられた。医療内容は同一であるにもかかわらず、同一建物居住者というだけで点数を大幅に引き下げることは極めて不合理であり、在宅医療に取り組む医療機関の経営や在宅療養患者に多大な影響を及ぼしかねない。不適切な医療機関への対応は、予定されている療養担当規則の改定で十分だ。
その他の項目では、要介護者に対する維持期リハビリの経過措置がさらに2年間延長された。しかし、過去1年間に介護保険の通所リハビリを実施していない場合は減算となるなど、新たなペナルティも導入されている。
うがい薬のみを処方した場合、保険給付の対象外とすることも盛り込まれており、湿布や漢方薬など、さらなる対象外の拡大、保険外併用療養の拡大、混合診療の解禁へとつながりかねない。
3.入院医療では、「高度急性期と一般急性期の明確化」を掲げ、2年間で急性期病床を現在の36万床から9万床削減する方針だ。7対1入院基本料について、平均在院日数短縮に向けた特定除外制度の見直しや看護必要度の見直し、在宅復帰率の導入などで算定要件を厳格化している。「急性期病床と長期療養を担う病床の機能分化」として、急性期病院からの受け皿として「地域包括ケア病棟」が新設(従前の亜急性期病棟から改編)されている。また、療養病棟でも在宅復帰機能強化加算が新設されている。急性期・慢性期に関わらず、入院患者の早期退院を促すものとなっている。
管理栄養士の配置義務化は、協会・保団連の粘り強い運動によって、有床診療所では元の加算評価となり、撤回された。一方、病院は、経過措置は設けられているものの義務化されたままである。特に中小病院では管理栄養士の確保が困難なところもあり、地域医療を確保する観点から病院についても義務化を撤回すべきである。
前々回の改定で大きな混乱をもたらした入院患者の他医療機関受診時の取り扱いについては、協会・保団連のたび重なる要請にもかかわらず、今回も全く改善されていない。
今次改定は「社会保障・税一体改革」で示されている社会保障切り捨てをさらに推進するものであり、協会は地域医療改善のために診療報酬の抜本的引き上げ、患者負担の軽減を求めていくつもりだ。
歯科 運動による一定の改善をかちとったが、歯科医療費の総枠拡大にほど遠い
歯科部会
今次歯科診療報酬改定は、消費税増税補てん分を除くと0.12%増となった。これは、前回改定を大幅に下回るものであり、歯科医療危機を打開し、20年近くにわたり2兆6000億円台に抑え込まれた歯科医療費の総枠拡大にはほど遠い改定である。
協会・保団連は、そもそも消費税損税の解消のためには、患者負担・保険料負担の増大を招く診療報酬での補てんではなく、ゼロ税率の導入を求めている。今次改定は医療界が求めるゼロ税率の要望を無視するとともに、実質的には損税補てんにも至っていないという点で、二重の意味で不当な改定である。(中医協・医療機関等における消費税負担に関する分科会・提出資料によると、消費税5%の損税は、歯科の個人立診療所1件について年72.1万円、8%では115万円に達する)
協会・保団連では、「保険で良い歯科医療」の実現を求める請願署名を全国で過去最高の34万筆集めるとともに、診療報酬の不合理是正や抜本改善を求めて厚労省交渉や国会行動などを重ねてきた。その結果、歯科疾患管理料の文書提供の見直し、訪問診療時の著しく歯科治療が困難な患者に対する評価の見直し、歯周治療用装置の要件緩和、在宅かかりつけ歯科診療所加算の新設、周術期口腔機能管理料の点数引き上げや医科歯科連携の評価など、一定の改善がみられた。
しかし、長年据え置かれている基礎的技術料の大幅引き上げが見送られた。また、在宅医療の充実を重点課題としているものの、訪問診療の20分要件は撤廃されず、同一建物内2人以上の歯科訪問診療料が大幅に引き下げられた。
義歯新製後の管理料・調整料が「歯科口腔リハビリテーション料」に変更・包括され、実質的な引き下げとなるとともに、医学管理からリハビリの流れが作られ「医療保険から介護保険へ」の誘導が危惧される。
先進医療技術からの保険導入は、CAD/CAM(コンピュータで模型を読みとり、歯冠補綴物を削り出す装置)冠や歯科用CT撮影装置および手術用顕微鏡を用いた歯根端切除術など、一部の歯科医療機関でしか算定できないものにとどまっている。安全性と有効性が認められる先進医療技術はすみやかに保険導入すべきである。
他方、うがい薬のみの処方について保険給付から除外する内容が盛り込まれており、これをてこにしていっそうの保険外しが狙われかねない。
また、歯科技工加算はごくわずかの引き上げに留まり、小規模・零細な歯科技工所、長時間・超過酷な労働環境におかれている歯科技工士を支援するものにはなっていない。
歯科をめぐる矛盾の根源には、長期にわたる低医療費政策がある。今次改定でも歯科医院経営の改善はもとより、歯科医療を支えている歯科技工士と歯科衛生士の就業改善にも到底いたらず、歯科医療危機はいっそう深刻となる。
協会は、窓口負担大幅軽減・保険範囲の拡大・診療報酬の改善実現へ患者・国民とともに「保険でより良い歯科医療」を求める運動を引き続き強めていく。