兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2014年3月25日(1746号) ピックアップニュース

2014年度診療報酬改定の要点〈歯科〉
運動で一定改善も歯科医療費総枠拡大にほど遠い

 今次診療報酬改定は、消費税補てん分(0.87%)を除くとわずか0.12%のプラス、前回改定の10分の1にも満たない約34億円である。また、消費税補てん分が上乗せされたとしているが、医療機関の経営を圧迫する損税を解消するものとはなっていない。診療報酬への補てん分の上乗せは、患者に消費税の負担を求めることにもなり、協会はゼロ税率の導入を改めて要求する。
 今次改定は、現場の声が一定反映された部分があるが、歯科医療の危機を抜本的に改善するにはほど遠い。この最大の要因は、長年にわたる低歯科医療費政策にあり、さらに窓口負担増による患者の歯科受診抑制・治療中断が歯科医療危機をいっそう深刻化させた結果である。
 歯科医療危機を食い止め、歯科医療の質の確保と安全を保証すること、とりわけ歯科医院経営の改善、歯科医療を支えている歯科技工士と歯科衛生士の就業改善は喫緊の課題である。協会は、窓口負担大幅軽減・保険範囲の拡大・診療報酬の改善実現へ、患者・国民とともに「保険でより良い歯科医療」を求める運動を引き続き強めていくものである。

【主な改定項目】
1.基本診療料の引き上げと加算点数の見直し
歯科初診料           218点→234点
歯科再診料           42点→45点
歯科外来診療環境体制加算    28点→26点
再診時歯科外来診療環境体制加算 2点→4点
2.歯科疾患管理料における情報提供の要件の見直し
○歯科疾患管理料の文書提供の要件が見直され、患者またはその家族が、管理計画書の備考欄に文書提供が次回から不要である旨を記載した場合、2回目以降の文書提供は前回の提供日から4カ月を超えてもよい取り扱いになった。
3.周術期における口腔機能の管理など医療機関相互の連携
○周術期の患者の口腔機能管理を手術前から推進するために、周管Ⅰ、Ⅱの手術前の点数がそれぞれ引き上げられた。また、口腔機能管理後1カ月以内に全身麻酔下で手術を実施する場合、手術の所定点数に100点を加算する。医科歯科連携の評価が盛り込まれ、医科の評価として歯科医療機関連携加算が新設された。しかし、医科歯科連携をさらに推進するためにも要件を緩和すべきである。
周術期口腔機能管理料(Ⅰ)手術前
           190点→280点
周術期口腔機能管理料(Ⅱ)手術前
            300点→500点
4.在宅歯科の推進
○歯科訪問診療料が同一建物内の診療人数および時間により三つに区分された。同一建物内1人のみで20分以上診療した場合は歯科訪問診療1・866点を、2人から9人以内の場合で、20分以上の診察を行った場合は歯科訪問診療2・283点を、10人以上診療した場合は診療時間にかかわらず歯科訪問診療3・143点を算定する。診療時間が20分未満の場合は歯科訪問診療3を算定する。
 同一建物における複数患者の在宅診療においては、かなり厳しいものになっている。「在宅不適切事例の適正化」を行うとしての措置だが、真に在宅医療の充実をめざすなら、診療報酬で縛るのではなく、不適切な事例に対しては、指導で対処すべきである。在宅医療の充実には20分要件は撤廃すべきである。
歯科訪問診療料
 1 歯科訪問診療1  850点→866点
 2 歯科訪問診療2  380点→283点
 3 歯科訪問診療3   新設 143点
○在宅中心の歯科訪問診療への評価として、在宅かかりつけ歯科診療所加算100点が新設された。しかし算定要件としている施設基準は直近3カ月の歯科訪問診療の実績が月平均5人以上であり、そのうち歯科訪問診療1の算定患者が8割以上を占めていることとされ、ハードルが高い。
○在宅以外の施設などで歯科訪問診療2または3を算定する場合は、1.患者またはその家族 2.介護施設職員などの関係者のいずれかに歯科訪問診療を行った日時および歯科訪問診療を実施した歯科医師の氏名を記載した文書提供が必要になった。このうち、同月に同じ施設で複数回の歯科訪問診療2または3の算定があり、施設職員などに提供する場合には、施設ごとに一覧表で作成してもよい。
○歯科訪問診療でマル特加算を算定した患者への治療に際して、歯科衛生士などが参画した場合には、外来と同様に著しく歯科診療が困難な者の50/100加算が算定できることになった。
5.生活の質に配慮した歯科医療の充実
○正常な口腔機能の獲得・成長を促すために、乳臼歯の早期喪失症例に対する小児保隙装置(クラウンループまたはバンドループ)600点が新設された。また、小児義歯の対象に「外傷によって歯が喪失した場合」が加えられた。
○新製義歯の装着月に算定する新製有床義歯管理料(義管A)が「困難な場合」230点と、「困難な場合以外」190点に再編されるとともに、義歯管理料の加算だった困難加算と義歯調整管理料(義調)が包括された。
○有床義歯管理料(義管B)、有床義歯長期管理料(義管C)、困難加算、義調が削除され、リハビリテーション部に新設された歯科口腔リハビリテーション料1・有床義歯の「困難な場合」120点と「困難な場合以外」100点に再編・包括された。義歯の管理が一部リハビリに移されたことは、将来、介護保険給付の対象とされかねない。義歯そのものがリハビリ装具として扱われる可能性が出てきたことは、看過できない問題である。
義歯管理料
 1 新製有床義歯管理料(1口腔につき)150点 →
   ★1 2以外の場合190点
   ★2 困難な場合230点
歯科口腔リハビリテーション料1(新設)
 1 有床義歯の場合(1口腔につき)
  イ ロ以外の場合 100点
  ロ 困難な場合 120点
○舌接触補助床などの床装置を用いた訓練を行った場合は、歯科口腔リハビリテーション料1(舌接触補助床190点・月4回)を算定する。なお、舌接触補助床は床副子の「著しく困難なもの」から独立し、新製した場合とすでに装着している有床義歯を用いた場合とに区分が分かれた。
○顎関節治療用装置を用いて指導、訓練を行った場合は、歯科口腔リハビリテーション料2(50点・月1回)を算定する(施設基準有・要届出)。
6.歯の喪失のリスク増加に着目した対応
○歯周病安定期治療(SPT)の算定単位が歯数に応じて三つに変更され、適用となる中等度以上の症状から「根分岐部病変を有する」との条件が外れた。
歯周病安定期治療(1口腔につき)
 300点 →
  ★1 1歯以上10歯未満  200点
  ★2 10歯以上20歯未満 250点
  ★3 20歯以上     350点
○歯周治療用装置の算定要件からFOp、GEctまたはGTRの実施が外され、歯周精密検査を算定した患者に緩和された。 ○その他の歯周治療関連の点数改定
歯周疾患処置(1口腔1回につき)
          10点→14点
暫間固定 1簡単なもの(装着料を除く)
           300点→200点
歯周外科手術(1歯につき) 
 4 歯肉剥離掻爬手術 620点→630点
 5 歯周組織再生誘導手術
  イ、一次手術 760点→840点
  ロ、二次手術 320点→380点
○歯管の加算だったフッ化物局所応用加算がフッ化物歯面塗布処置(F局)として独立した。対象者がう蝕多発傾向者だけでなく、自立度が低下した在宅等で療養を行っている初期根面う蝕の患者にも拡大された。算定単位は1口腔につき3カ月に1回で、う蝕多発傾向者の場合80点、在宅療養者の場合80点を算定する。
○う蝕多発傾向者の年齢区分や処置歯の数が見直され対象患者が拡大された。
○根管充填の加算だった加圧根管充填が、加圧根管充填処置として独立するとともに、点数が引き上げられた。
加圧根管充填処置(新設)
 1 単根管   130点
 2 2根管   156点
 3 3根管以上 190点
○以下の歯冠修復、欠損補綴の点数が改定された
初期う蝕早期充填処置 122点→124点
充填
 充填1(複雑なもの) 152点→154点
支台築造印象 22点→26点
テンポラリークラウン 30点→34点
咬合採得
 欠損補綴、ブリッジ
(1)ワンピースキャストブリッジ
           →削除
支台歯とポンティックの合計5歯以下
            70点→74点
支台歯とポンティックの合計6歯以上
            140点→148点
(その他のブリッジ) 70点→削除
ブリッジ修理   40点→削除
有床義歯
○コンビネーション鉤220点(材料料除く)が新設された。残根削合が義歯修理時も認められた。
○未来院請求の対象が広がり、歯周治療用装置、小児保隙装置など6項目が追加された。
 1 局部義歯(1床につき)
  1歯〜4歯  560点→570点
  5歯〜8歯  690点→700点
  9歯〜11歯  920点→930点
  12歯〜14歯 1340点→1350点
 2 総義歯(1顎につき)
2100点→2110点
鋳造鉤(1個につき)
 双子鉤  230点→234点
 二腕鉤  212点→216点
有床義歯修理(1床につき)
      224点→228点
 歯科技工加算 22点→24点
補綴隙(1個につき) 30点→40点
7.先進医療技術からの新たな保険導入
○歯科用CAD/CAM装置を用いたハイブリッドレジンによる歯冠補綴(要届出)。小臼歯に対する全部被覆冠に限る。
CAD/CAM冠(新設) 1200点
○歯科用CTおよび手術用顕微鏡を用いた歯根端切除手術(新設) 2000点
8.歯科矯正
○指定自立支援医療機関(育成・更正医療)で行う歯科矯正用アンカースクリューを用いた歯科矯正治療が給付対象になった
 一本につき植立(新設)500点、撤去(新設)100点

 診療報酬改定情報は、協会ホームページの「診療報酬改定特設ページ」(http://www.hhk.jp/kaitei2014/)を参照いただきたい。
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