兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2014年3月25日(1746号) ピックアップニュース

主張 問題だらけの「総合法案」 経済復活と平和のため今こそ再分配の強化を

 一昨年、消費税増税の取引条件として、自民党案を丸呑みした「社会保障制度改革推進法」が成立した。これに基づいた「社会保障制度改革国民会議」報告書を受け、自民党は「プログラム骨子」の閣議決定後「プログラム法案」を強引に可決した。
 これらによって、これまでの社会保障の考え方は変質させられ、「自助・自立」「健康の自己責任」「受益者負担」を強調し、「公助」を軽んじる新自由主義的方向に強引に振り戻されている。
 医療・介護分野では、今国会で「医療・介護総合法案」の成立をめざしている。「総合」法案とし、細かい賛否を問えないような「どんぶり法案」として採決をもくろんでいるようだ。さすがに 老獪 ろうかい な戦略である。
 「総合法案」において、医療関連では、(1)本年4月に都道府県に新たな基金制度を設立、(2)10月には病床機能の報告制度導入、(3)来年4月には地域医療ビジョンの策定が盛り込まれている。
 つまり、診療報酬による誘導の限界から、「基金」(アメ)と共に、都道府県による管理医療(ムチ)が強化される。
 介護関連では、(1)来年4月に要支援者を介護「保険」から地域支援事業に丸投げ、(2)特養の入所要件を要介護3以上に厳格化、(3)8月には一定以上所得者の利用者負担の引き上げ、給付に資産を勘案する−などの利用制限・負担増が続く。効率化に名を借りた国庫負担の抑制と利用者負担への転嫁であり、内容の充実とは無関係である。
 この根本には新自由主義があり、グローバル企業の利益拡大のためには、社会保障は「お荷物」と切り捨てられるのである。
 一方、診療報酬は実質マイナス改定である。国公立病院は慢性赤字で、普通の企業で70〜80%と言われる損益分岐点比率は、厳しい経営努力を強いられている一般病院では95%以上の危険水域である。つまり数%の収入低下で赤字転落である。診療報酬の大幅な引き上げなしには、消費税増税により、さらに苦しい経営を強いられるであろう。
 06年度改定では、急性期病床に高い報酬を付け、看護師の争奪戦を経て病床が急増した。今回は要件を厳しくし、急性期病床のうちの25%、9万床を退場させる。公的保険により国民の命と健康を守る医療機関だが、金融機関等と違い、赤字転落も倒産も、国は面倒を見ない。失政の反省も責任も総括せずに、今後も「診療報酬」と「基金」で医療機関を振り回し続けるのだろうか。
 いかなる政権、政策であっても、日本経済の復活と世界の平和が基本である。経済と社会保障と平和は密接に関係する。
 経済・健康・教育格差に引き続く不平・不満。それらをかき集め他者に向け、対立と孤立が深まる。「私が苦しいのはアイツらのせいだ」と。しかし、最初に犠牲になるのはそのような「苦しい人々」である。
 経済が低迷している時こそ、「税と社会保障の改革」を通じて、所得再分配を強化すべきである。人が苦しいときほど人間性を問われるように、国家の品格も同様である。
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