兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2014年6月15日(1753号) ピックアップニュース

インタビュー 在宅医療の現場から(1) このままでは在宅からの撤退も

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尼崎市・しおたクリニック 潮田 昌之先生

 「入院から在宅へ」とうたう一方、4月の診療報酬改定で、政府は「不適切事例」などを理由に、訪問診療料や在宅時医学総合管理料など「同一建物居住者」に関わる点数を最大4分の1に引き下げた。現場への影響や在宅医療に携わる協会会員の思いについて、インタビューを掲載する。(聞き手は編集部)

 −−先生が取り組まれている在宅医療についてお聞かせください。
 外来の合間に今は月62人の方を訪問しています。そのうち、特定施設の有料老人ホームが3施設で47人です。
 外来で診ていた患者さんがADL低下のため通院困難になり施設に入所したため、訪問診療開始となりました。そこから、施設の他の患者さんも診させていただくようになりました。
 改定前にはもう1施設、訪問していたのですが、遠いこともあり遠慮させていただき、別の先生にお願いしました。日曜・祝日も外来があり、休む暇がほとんどないなか、休診日に時間をつくって訪問していましたが、今回の改定で、もう自分の時間を削ってまで通えないと思ったからです。
対応が難しい施設入居者
 −−訪問診療では「施設なら複数人をまとめてすぐ診られるから手間がかからないだろう」というのが、厚労省の考えのようです。
 移動の時間がかからないだけで、個人宅と施設で診療内容が変わるわけではありません。私の実感では、むしろ施設入居者の方が大変です。
 家で世話できない、動けないという事情で皆さん入居されているので、重症の方が多くなりますし、ご家族に加え、施設職員との情報共有や意思疎通も必要となります。
 緊急時の呼び出しも多く、在宅なら少し熱があっても「明日まで様子を見ようか」となるところでも、施設では何かあるといけないので「すぐ来てください」と言われ、夜中でも往診に行きます。
 −−診られているのは、どんな症状の方ですか。
 一人ひとりそれぞれですが、認知症をお持ちの方が多いですね。認知症の方は、ご本人との意思疎通が難しく、ご家族、施設職員に日常の様子をくわしく聞いた上での対応が必要です。徘徊がひどい、夜中に騒ぐなどの場合、施設側から「何とかならないか」と相談されますが、抗精神薬を処方すると、今度は食欲が落ちて食べられなくなったり、傾眠状態になることもあります。対応が本当に難しく、悩みますね。
在宅医療への気持ちそぐ
 −−「同一建物居住者」を区別することは、「入院から在宅へ」に逆行しているのではないでしょうか。
 まったくです。このままでは「最後まで在宅で診る」のではなく、われわれも「何かあったら、病院へ」と言うしかなくなってしまうでしょう。
 開業時から通ってくれて、10年以上診ている患者さんもおり、やっぱり自分の家で最期を迎えられたらと、休みなく在宅医療を行ってきました。今回の改定のようなことになると、その思いが挫けてしまいそうです。
 −−協会では、不合理是正を求め、運動を続けていきます。
 ぜひとも是正をお願いしたいです。協会には、いつも点数の算定の仕方がわからないと電話していて、説明も一番わかりやすく、すごく助かっています。
 −−本日はありがとうございました。
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