2014年6月25日(1754号) ピックアップニュース
インタビュー 在宅医療の現場から(2) 在宅現場を知らない不合理な引き下げ
中央区・生田診療所 武村 義人副理事長
生田診療所は、昔ながらの下町にあり、古くからの長屋の横に、市営住宅、震災復興住宅、借り上げ住宅など集合住宅が10以上密集しています。外来の合間に自転車に乗って、週3回、地域を回っています。
高齢者が多く、低家賃の公営住宅に入居されておられる方は、月6万円ほどの基礎年金だけという方が少なくありません。家賃、保険料や医療・介護の費用を払い、残り数万円で暮らしておられます。電気代を気にしてクーラーをつけず、熱中症になってしまう方が毎年出てしまいます。
在宅で診ているのは、高齢で歩けない方、認知症の方が多く、独居や老々介護の家庭が増えています。ある患者さんは、独居で寝たきりのためデイサービスにも行けず、何年も毎日同じ格好でテレビを見て、首が拘縮してしまいました。定期的な訪問診療は、患者さんの健康管理のみならず、生活自体を支えることになります。人それぞれの配慮が必要で、地域から学びながら診療しています。
--今回の「同一建物居住者」の点数引き下げをどう見られていますか。
政府は全く現場を分かっていません。点数が4分の1になった在宅時医学総合管理料は、患者を総合的に診て、何かあればいつでも往診するというものです。24時間365日、いつ呼び出しがあっても大丈夫なよう必死で対応しており、もとの4千点強でも評価が低いくらいです。今までの訪問診療の体制を維持するために、できるだけ「同一建物居住者」に該当しないよう回るほかなく、そんな努力を強いる改定に矛盾を感じます。施設を担当されている先生は、さらに大変なのではないでしょうか。
--患者さんには、医療費負担も重いですね。
それが一番の悩みです。負担がかからないように、障害者医療費助成制度や国保料減免、生活保護など使える制度を全て利用できるよう、診療所全体でサポートしています。70~74歳の窓口負担が引き上げられ、さらに消費税増税、年金引き下げと、患者さんの生活がますます追いつめられています。窓口負担軽減は絶対必要です。
--「医療・介護総合法」など、医療・介護制度の改悪が次々と進められています。
在宅推進を打ち出す一方、社会保障費削減ありきの改悪を進める政府の矛盾を明らかにし、医療・介護への財政出動を求め、運動しなければなりません。地域に密着した診療所として、患者さんと手を取り、がんばっていきたいです。