2014年11月15日(1767号) ピックアップニュース
燭心
秋の夜長を過ごす最高の方法は読書である。最近読んだ3冊を紹介したい▼白井聡氏『永続敗戦論』は「国体の護持」のため、日本は米国の言いなりになっているとの結論だ。「国体の護持」とは天皇制の存続である。天皇になり替わろうとした道鏡、義満、信長などを退けて、天皇制は脈々と長きにわたりこの国を支配している。満州事変から敗戦までの15年戦争「ごとき」で天皇制を廃止できないと考えた勢力が、米国に頼り天皇制を存続させ、「敗戦」を「終戦」と言いつくろい総括しなかったという。この体制は福島原発事故にも続いている▼沖縄生まれの松島奏勝氏『琉球独立論』は琉球の歴史から説き起こし、経済力や人口規模からも沖縄より小さな独立国が太平洋にはたくさんあるとし、日本と中国の中継ぎができる海洋立国「琉球国」になりたいとの思いに溢れている。秘密保護法施行、集団的自衛権の行使容認で、米海兵隊の基地の島・沖縄が、核兵器による第一撃を受ける可能性はますます高まっている。16日の県知事選挙の結果が楽しみだ▼佐藤優氏『「知」の読書術』は、英国の歴史家エリック・ボブズホームらの著書を紹介しながら、キリスト教を土台とする宗教的見方から鋭い時代分析を行う。独の神学者エルンスト・トレルチの「宗教戦争を終わらせ主権国家を確立した1648年のウエストファリア条約が近代の出発点」とする考えを紹介し、現代の問題点につなげる分析がすばらしい(水)