2015年2月05日(1773号) ピックアップニュース
燭心
今トマ・ピケティ・パリ経済学校教授の『21世紀の資本』を読んでいる。第Ⅰ部所得と資本、第Ⅱ部資本/所得比率の動学、第Ⅲ部格差の構造からなる600ページを超える大著だ▼過去100年以上の世界、特に英仏における資本や所得の動きをみている。その結果、資本から得られる利潤や労働から得られる所得を比較してみると、先進国ではだいたい良識の範囲におさまっており、大変おもしろいと言っている。しかし、それはあくまで平均であり、非常に所得の多い人と少ない人との格差があるとも言っている▼その格差が一番小さくなるのは戦争があったとき。しかし、格差をなくすために戦争をすればいいというわけではない。戦争をすればみんなが色々なものを失うので平等に近い状態になるとも言っている。日本で「一億総中流」と言われたのも戦後の復興期だったから実現できたことで、21世紀になると、富める人と貧しい人の二極化が進行し格差が広がっている▼格差が良いと考えるか悪いと考えるかは政治の問題だと、ピケティ教授は歴史的なフランス革命やアメリカの奴隷解放戦争なども含め、非常に分かりやすい文章で書いている。彼は研究の結果、グローバルな世の中においては、世界的な規模で累進的に課税し、富める人からお金をもらい、貧しい人、病気の人、子どもや老人などのために使うのが良いのではないかと結論している。米国で富裕税ができそうだ。日本でも検討してほしい(水)