2015年2月15日(1774号) ピックアップニュース
燭心
「イスラム国」を名乗る集団に、日本人2人が虐殺される衝撃的な事件が起こった。強い憤りを覚える。罪のない民間人を人質に取り、要求が通らねば殺害するという卑劣な行為は、いかなる理由があっても許されるものではない。非難の世論が沸騰するのも当然だろう▼今、事件に最も当惑しているのは、当のイスラム教徒ではないだろうか。神戸にも多くの信者が在住している。中央区山本通には日本最初の回教寺院があり、市民と長く友好を保ってきた。空襲や震災にも耐え、異人館街の風景の一つとして私たちになじみが深い。昨今、イスラムや中東出身と聞くだけでテロリスト呼ばわりされることもあるという。心中の悲哀、察するに余りある▼今回の問題を考える上で、避けて通れないのがイラク戦争である。「大量破壊兵器を隠し持っている」として、国連の承諾もないまま米英などの有志連合が攻撃を仕掛けた。いわれなき空爆で生活を破壊された国民の憤りにつけこみ、過激派や原理主義者が勢力を広げてきたと言われる▼戦闘行為こそなかったとはいえ、日本も戦争に荷担した事実は重い。責任を自覚し、これを機にしっかりと検証すべきだ。事件を口実にした報復攻撃などもってのほかである。武力の応酬をやめ人々に平穏な暮らしが戻ることこそ、死んだ後藤さんらが一番願ったことである。平和憲法を持ち、長く中東と友好を続けてきた日本は、和平実現の先頭に立てる立場にあるはずだ(星)