兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2015年3月25日(1778号) ピックアップニュース

主張 尼崎アスベスト訴訟
クボタの責任が確定救済体制の確立を

 尼崎市内のクボタ旧神崎工場周辺で中皮腫を発症し死亡したとして、2遺族がクボタと国に損害賠償を求めていた尼崎アスベスト訴訟(環境型)で、最高裁判所は2月17日、原告・被告双方の上告を棄却し、クボタの責任を認めた高裁判決が確定した。2005年のクボタショック以降、周辺住民に「社会的責任」として「救済金」を渡しながらも、法的責任を認めてこなかったクボタは、責任を認め、謝罪すべきである。
 協会は、「アスベスト被害からいのちと健康を守る尼崎の会」に尼崎支部が参加し、同訴訟支援や署名運動、健康相談会など、国と企業の責任認定と被害者救済、予防対策を求め活動してきた。
 本判決の確定は、周辺住民の健康被害に対する加害企業の法的責任を初めて認めたという点で大いに評価したい。一方、責任範囲は工場から300メートル以内に限定され、1500メートル以上に及ぶ住民被害の実態とかけ離れている。
 さらに、国の加害責任も認められていない。1950年代には石綿(アスベスト)による健康被害の深刻さが明らかになり、欧州諸外国が次々と石綿使用を禁止するなか、国は石綿の輸入・使用を続け、被害を拡大させた。周辺住民に対する飛散防止規制は1989年に至るまで怠っており責任は重大だが、国は「石綿健康被害救済法」をつくり、責任をあいまいにしたまま、低水準の支給額で問題を解決しようとしている。
 石綿は、曝露から発症までの潜伏期間が20〜40年におよび、本格的な被害はこれからで、2028年には9万人超が発症するという予測もある。阪神・淡路大震災では建物の倒壊などで多数の人々が石綿に曝露した。20年が経ち、がれき処理に携わった公務員が中皮腫を発症するなど、少しずつ被害が現れつつある。
 全被害者救済のために、国と企業の責任を明確化し、救済体制を確立すること、今後の再発予防の徹底が必要である。
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