兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2015年9月15日(1793号) ピックアップニュース

主張 川内原発再稼働
再稼働が必要という論理は全く成り立たない

 新規制基準に適合するとして、避難計画の策定も十分検討されていない九州電力・川内原発1号機が8月11日、再稼働された。田中俊一原子力規制委員長は、新しい規制基準の適合審査は「安全性を保証するものではない」としているし、新規制基準に避難計画の妥当性の判断は含まれていない。
 原発稼働ゼロの期間は約2年でストップし、政府と電力会社は川内原発を皮切りに他の原発の再稼働を行おうとしている。
 原発を再稼働する理由として、政府や電力会社は電力の安定供給や火力発電の燃料高騰を理由としている。しかし、総人口の減少や産業の空洞化が進む中、福島第一原発事故以降の省エネ意識の社会的定着もあり、記録的な猛暑の今夏も電力需給はさほど逼迫した状況にはならなかった。
 2011年以降の円安下でも世界的な石油価格の下落があり、電力各社の収支は大幅に回復し、関西電力は4年ぶりに黒字となっている。安いとされる原発だが、プラントの維持、管理のため、2014年度で計約1兆4千億円を超す巨額の費用がかかっており、これら以外にも原子力開発研究費用、立地対策費用、事故対策費用などの多額の経費が電気料金のみならず、税金として国民に課せられている。再稼働が必要という、政府・電力会社の説明には経済的視点からも全く根拠がない。
 原発は事故を起こせば取り返しのつかない被害を及ぼす。使用済み核燃料の処分方法の見通しはまるっきり立っていない。原発はミサイル攻撃やサイバーテロの標的でもある。再稼働した川内原発は30年以上経過した老朽原発で、再稼働間もない8月20日には復水器に海水が混じりこむトラブルを起こしたが、原因究明を行うことなく、応急処置だけで強行稼働し続けている。
 国民の多くが全ての原発の再稼働に反対している。原発の運用は、国の根幹に係わる問題であり、地元合意と称し、立地自治体の首長が同意したからといって決して再稼働して良いものではないはずである。
 国を守るとはどういうことなのか? 原発、TPP、歴史認識、安保法案...国民として、地球人としての見識が今日本人に問われている。
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