兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2015年10月15日(1795号) ピックアップニュース

燭心

 10月5日、スウェーデンのカロリンスカ研究所は2015年のノーベル医学生理学賞を大村智北里大学特別栄誉教授ら3人に授与すると発表した。アフリカなどで寄生虫が引き起こす熱帯感染症に大きな治療効果のある薬剤イベルメクチンに対する受賞だ▼この薬は重症の場合に失明することもある熱帯病のオンコセルカ症(河川盲目症)やリンパ系フィラリア症(象皮症)の特効薬となり、年間3億人が使用し、世界保健機構(WHO)によれば2020年頃にはいずれも撲滅できると見込んでいる。日本でもダニが原因のカイセン症や沖縄に多い糞線虫症などの治療に威力を発揮している▼すばらしい発見だが、本人がこの研究にのめりこんだのはゴルフ場の土壌で見つけた細菌が作り出す物質がきっかけ。1973年から米国製薬大手メルクと共同開発していた。高校教師を経て、決してエリート研究員ではなかったが、肩書きにとらわれず援助した米国企業には恐れ入るしかない。ノーベル賞級の研究には莫大な予算がいる。日本の学術研究面での予算は先進国では貧弱らしい。それが、日本ではまだノーベル医学生理学賞が今回も含め3人しかいない原因との意見もある▼大村氏は山梨大学卒で、山中伸弥氏の神戸大学に続き、旧制大学以外の出身。農家出身でもあり、多彩な研究環境で型にはまらないスタイルで研究に打ち込むのがよいのかもしれない。金は出すが口は出さない援助者はどの世界でも必要だ。(海)
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