兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2016年3月25日(1809号) ピックアップニュース

第89回評議員会特別講演 プレインタビュー(2)
医師を犠牲にする医療政策

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前 済生会栗橋病院院長補佐
本田 宏先生

 5月15日に開かれる協会第89回評議員会で講演する本田宏先生へのインタビュー。全3回のうちの2回目を掲載する。(第1回は2月25日号に掲載)

米保健福祉長官が日本の医療制度に警鐘
 川西 前回、日本の医療費が先進国の中でも最低水準に抑えられていると伺いましたが、海外の病院の様子は日本と大きく異なるものなのですか。
 本田 その通りです。私は海外と日本の医療を比較するときに、必ず故高岡善人(元長崎大学名誉教授)が教えてくれたアメリカのサリヴァン保健福祉長官のお話をするようにしています。このサリヴァン長官は、1992年、医療問題に熱心に取り組んでいたヒラリー・クリントン氏の指示で、WHO(世界保健機構)から高い評価を得ている日本の医療制度を研究するために日本の国立がんセンターへ視察にやってきました。しかし、素晴らしいとされている日本の医療現場でサリヴァン長官が見たものは、医療費はアメリカの半分以下、病室は雑魚寝、お風呂は共同浴室という現実でした。これではアメリカ人は耐えられないと、失望して帰国してしまったのです。また彼は、後日アメリカで、「日本ではボロボロに疲れ切った医師が診察しており、医療安全の視点もない。このように医師を犠牲にする日本の医療制度はいずれ崩壊するだろう」と語ったというのです。
日本の医師を守るため医師の労働環境改善を
 本田 アメリカは、医師が専門分野を選択するときに、自身のQOLを重視するという話を聞きます。アメリカでは、時間外に患者さんに呼ばれて病院に行ったら、なんと献身的な医師なのかと驚かれます。日本とはまるで真逆です。アメリカは日本と比べて給料が倍で仕事は半分とも言われています。アメリカで仕事をするようになった私の後輩の外科医も、日本に戻ってこようとはしません。
 川西 そうならないためにも、日本の医師の労働環境を改善するよう求めなければなりませんね。
国民のために国家予算を使う国キューバ
 川西 アメリカ以外の国の医療政策はどうなのでしょうか。
 本田 これまでキューバへ2回視察に行きました。キューバはアメリカの過酷な経済制裁のために貧しい国ですが、医療費は無料で、介護施設に入るのも年金の7割を支払えばよく、日本のように莫大な費用はかかりません。医師も充実させて、外国へも医師の災害派遣をする等、政府は社会保障にお金を使っています。
 川西 かたや日本は豊かな国であるにもかかわらず、社会保障を削減し続け、国民生活はとても貧しいものになっています。政府が主張するように国にお金がないのではなく、お金の使い道が間違っていることがよく分かります。
 本田 キューバ政府が国民のために財政を支出するのは、キューバが革命を成し遂げたことと無関係ではないでしょう。私たちが声を上げ、政治の方向性を変えなければいけないのです。(つづく)

第89回評議員会特別講演
本当の医療崩壊はこれからやってくる(仮)
日 時 5月15日(日)16時〜(仮)
会 場 協会5階会議室
講 師 医療制度研究会副理事長 前済生会栗橋病院院長補佐 本田 宏先生
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