兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2016年4月05日(1810号) ピックアップニュース

燭心

 4月1日から、診療報酬改定が行われた。本体は全体で0.49%、医科では0.56%のプラス改定だそうだ。在宅医療の面では、患者の状態などによって細かく分類された点数が算定できるようになっている。わが国の優秀な官吏たちが作成したものであるから、複雑、巧妙で、決して容易にこれまでと同じように報酬を算定することはできない▼40歳代や50歳代の元気な頃なら、在宅訪問診療も積極的に行うことができたが、八十路に近い身では在宅医療は細々とするのが精一杯である。考えてみると、われわれ医師は少しだけ割のいい肉体労働者のようなもの。身体を動かしただけの収入しか入ってこない▼今回の改定のもう一つの特徴は、処方薬剤数を減らすことと、後発医薬品の使用へのなりふりかまわぬ誘導である。先発品と後発品とが全く同じ効能があるなどとは、誰も思ってはいない。後発品の間にもかなりの差があることを、医師たちは使用した経験から知っている。より良い処方を願って処方箋を発行しているのに、調剤薬局が仕入れている別の後発品にすり替えられる。これを是としない場合、理由を明記せよというのはいかがなものか。己の信じる医薬品を選んで処方すると、今回の改定のわずかばかりの恩恵さえも受けられず、処方理由を明記することで審査時に目をつけられる恐れもある。"医師の裁量権はどこへ行ったか"などと振りかざす気はないが、この憂鬱をなんとしようか(硝子)
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