2016年4月05日(1810号) ピックアップニュース
インタビュー(1) 診療報酬改定 −入院から在宅へ?−
急性期病床削減で内科系重症者の行き場なくなる
明石市・大久保病院 吉岡 巌先生
明石市・大久保病院
吉岡 巌先生
−7対1の急性期病床を持つ病院にとって、最も大きな変化が予想される改定項目はどれでしょう。
前回改定に引き続き、7対1入院基本料の算定要件が大きく変わったことでしょう。病棟に入院する重症患者の比率がこれまでの15%から25%に引き上げられました。そして、重症患者の定義に救急搬送された患者や手術を受けた患者が加わりました。
これは、救急を積極的に受け入れ、数多く手術を手がける病院のみを、急性期病床を持つ病院として認め、それ以外の内科系の重症患者を受け入れてきた病院などは急性期として認めないということです。
実際に、内科系主体の病院がこれまで通り7対1を算定するのは相当厳しいのではないでしょうか。もし、そうした病院が7対1を維持しようと、手術の必要な患者を積極的に受け入れるようになれば、内科系の重症患者の行き場がなくなってしまいます。
−先生の病院への影響はいかがですか。
私の病院は外科系なのでこれまで以上に救急や手術の必要な患者を受け入れ、急性期病床を維持する予定です。しかし、医師や看護師の人数が限られているなか、とりわけスタッフの休暇が多くなる年末年始などは、救急受け入れや手術が減り、要件を満たせなくなる恐れもあります。
−急性期病床削減の背景には何があるのでしょう。
より安上がりな回復期や在宅に患者を誘導しようという政府の意図があるのだと思います。2025年の必要病床数を決める「地域医療構想」を策定する会議が、当院のある東播医療圏でも開催され、私も含めて地域の病院長らが参加しています。その場で地域の急性期病床削減を議論するというのが政府の方針ですが、当然、どの医療機関も削減に同意しません。そこで診療報酬改定による誘導で、急性期病床を削減しようとしているのでしょう。
−地域の急性期病床が減ると、住民は不安ですね。
救急や重症、症状の安定しない人など、さまざまな患者を受け入れてきた急性期病床が少なくなれば、患者の受け入れ先がなくなるのはもちろんですが、いざという時に在宅医療や診療所の外来医療を支えることもできません。
急性期病床がより重症な患者や救急対応を必要とする患者の治療に重点化されれば、そこで働く医師や看護師の仕事量はさらに増えます。そうなれば7対1でいいのか、より充実した体制が必要になるのではないかと思います。
−地域医療を守るため、国の医療政策はどうあるべきでしょうか。
地域のさまざまな医療ニーズに応えてきた民間の中小病院を評価するため、あらゆる病床の入院基本料を引き上げることが必要です。