兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2016年4月25日(1812号) ピックアップニュース

燭心

 フレイル(虚弱)は高齢者が低栄養、筋肉量の低下などの虚弱な状態になることを指す。メタボ、ロコモに続く政府の戦略的愛称だ。多くの高齢者はこの状態を経て要介護、寝たきり状態となるため、その予防と早期発見は重要な意味を持つ▼フレイル予防のキーワードとしてオーラル・フレイル(口腔の虚弱)予防の重要性が東大准教授によって提唱された。低栄養や筋肉量減少の前段階として「喫食を阻害する口腔の問題」が存在するという。フレイル予防はオーラル・フレイル予防からというわけだ。オーラル・フレイルを国民運動として定着させることに異論はない。しかし、メタボやロコモが国民運動として定着したのか、その結果はどうだったのかなど、検証もされないまま次に飛びついても良い結果は期待できないのではないか▼乱れた生活習慣をよしとするサラリーマンはいないだろうが「腹囲85㎝」が受療行動につながらなかったのは、自分の経済状況では生活習慣の改善など不可能だと諦めた結果ではないのか。欧州では以前からフレイルの概念はあるがオーラル・フレイルは存在しない。にもかかわらず日本で話題になるのは国民皆保険によりいつでも安心して歯科医療が受けられる環境が整えられているからだ。しかし、窓口負担の増加はその環境を変化させるだろう▼低社会保障費政策は確実に国民の健康を蝕んでいく。医療は政治と切り離して考えることはできないと痛感するこの頃である(九)
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