2016年7月05日(1818号) ピックアップニュース
燭心
イソップ童話に「狼が出た」と嘘をつく羊飼いの少年の話がある。村人たちは同じ嘘に何度も騙されたので少年を信用しなくなり、そのうち本当に出てきた狼によって村の羊はすべて食べられてしまうという話だ。昔から嘘つきは信用されないのが相場だろう▼安倍首相は何度も何度も嘘をつく。「福島の原発はアンダーコントロール」とまるで息を吐くように嘘をついてオリンピックを誘致した。2014年秋には、15年10月から消費税を10%に増税するぞといいながら延期し「国民に信を問う」として衆議院を解散した。その後、再度の増税延期はしないと何度も何度も大見得を切りながら、今回、参院選を前にして、またぞろその約束を反故にして延期した。しかも、でっち上げまる分かりの陳腐な理由を持ちだして。さらに参院選でもその信を問うという。普通なら国民から全く信用されなくなるのだが、いまだに支持率は高い▼「美しい日本を取り戻す」など耳に心地よい言葉や税金を使ったばらまき戦術、国民の耳をふさぐ報道規制などが功を奏しているのだろう。羊飼いの首相は、羊をいかに増やすかという経済政策ばかりに村人の関心を集中させ、憲法改悪という別の狼の出現をひた隠しにしているが、村人もそろそろ気づく頃だ。日本にはイソップ童話とは別に、嘘をついた少年が最後狼に食われるという訓話が明治時代の小学読本(『小学読本二之巻』田中義廉、文部省、初版明治6年)にあるそうだ(九)