2016年7月05日(1818号) ピックアップニュース
参議院選挙 特集 2016年会員意見実態調査(速報値)
患者負担増・地域医療構想に「反対」約60%
協会が6月に実施した2016年会員意見実態調査の結果(速報値)がまとまった。政府が進める「患者窓口負担増」「地域医療構想」などでは、反対が賛成を大きく上回った。また、昨年国民的な反対運動がおこり、現在の野党共闘のきっかけともなった「安全保障関連法」についても、反対が賛成を上回った。参議院選挙にあわせ、会員が求める医療政策などについて結果を紹介する。
「支持する」と答えた会員に理由を尋ねたところ、「安全保障政策が良い」「自民党を中心とした政権だから」「経済政策が良い」と続いた。「医療政策が良い」と答えたのは3%で、内閣を支持する会員でも、医療政策については全く評価していないことが明らかになった。
「支持しない」理由は「安全保障政策が悪い」「経済政策が悪い」「医療政策が悪い」と続いた。
支持政党については自民党が31%と最も高く、7%と2番目に高かったおおさか維新の会を引き離した。野党共闘を進める民進党と共産党はそれぞれ6%、5%となった。
依然として「支持政党なし」は40%と多かったが、過去の調査と比べると2000年以降最も少ない水準。また「支持する政党」に「なし」と回答した会員の「次の選挙で投票しようと思う党」を合わせると、自民党が37%と最も高く、おおさか維新の会と共産党がともに8%で続いた。民進党は7%と、民主党政権時代の失政がいまだに後を引いているのか、苦戦している(表)。
ただ、「混合診療の全面解禁」「営利企業の医療機関経営への参入の解禁」について過去の調査と比較すると、「わからない」が2000年以降で最も高い水準になっており、会員の医療政策への興味関心が薄れているともとれる。
現在、日医や四病協が声明を発表し、厚生労働大臣もコメントを出すなど、混乱が広がっている「新専門医制度」については、「わからない」が46%で「反対」の44%、「賛成」の5%を上回った(図4)。制度実施が来年に迫る中、詳細がいまだに明らかにされていない状況に、現場で医療を担う会員の間にも困惑が広がっていることがうかがえる。
この間、安倍政権の下で、断続的に法人税が引き下げられてきたことに加え、パナマ文書などで大企業の課税逃れが明らかになったことなどが影響し、大企業に応分の負担を求める声が強くなっているものと思われる。
安倍首相が延期を表明した消費税増税については、10%への増税「賛成」が39%と「反対」の34%を上回った。「賛成」と答えた会員に理由を尋ねたところ、「社会保障の財源を増やすため」が最も多かった。政府による「消費税増税は社会保障のため」という宣伝が浸透しているためと思われる。実際には8%増税時に社会保障充実に使われたのは税収増の10%しかないことなどを、もっと広く知らせる必要がある。
医療にかかる消費税をどうすべきかについては、「ゼロ税率」が45%と最も多く、「軽減税率」「現状でよい」がそれぞれ19%、11%で続いた。日本医師会がこの間発表した解決策に最も類似する「補助金による還付を行うべき」は4%と最も少なかった。
また、「憲法9条」については「堅持する」が53%と「見直すべき」の33%を上回り、半数を超えた。「堅持する」が半数を超えたのは08年調査以来8年ぶり。安倍首相が意欲を示し、改憲が現実味を帯びる中、多くの会員が危機感を覚えたものと思われる。
昨年、日本弁護士連合会や元最高裁長官、歴代内閣法制局長官、憲法学者が違憲と判断し、多くの国民が反対の声を上げた「安全保障関連法」については「反対」が38%で最も多く「賛成」の26%を上回った。
協会では常に医療政策などについて保険医新聞上での解説や専門家を招いた学習会の開催等を行っているが、今後もこうした取り組みを強めて、多くの会員に時々の医療政策の中身や問題点を明らかにする必要がありそうだ。
また、「自民党を支持する」と回答した会員のうち52%が「患者負担増」について「反対」とし、33%が憲法9条を「堅持すべき」と回答している。政策志向と政党支持に一定のねじれがみられており、会員には各党の医療、社会保障に対する具体的な政策を重視し、投票判断を行っていただきたい。
内閣「支持しない」43%「支持する」を上回る
安倍内閣への支持については「支持しない」が43%で「支持する」の40%を上回った(図1)。前回14年調査の結果が逆転したかたちだが、いまだ高い支持率を維持している。「支持する」と答えた会員に理由を尋ねたところ、「安全保障政策が良い」「自民党を中心とした政権だから」「経済政策が良い」と続いた。「医療政策が良い」と答えたのは3%で、内閣を支持する会員でも、医療政策については全く評価していないことが明らかになった。
「支持しない」理由は「安全保障政策が悪い」「経済政策が悪い」「医療政策が悪い」と続いた。
支持政党については自民党が31%と最も高く、7%と2番目に高かったおおさか維新の会を引き離した。野党共闘を進める民進党と共産党はそれぞれ6%、5%となった。
依然として「支持政党なし」は40%と多かったが、過去の調査と比べると2000年以降最も少ない水準。また「支持する政党」に「なし」と回答した会員の「次の選挙で投票しようと思う党」を合わせると、自民党が37%と最も高く、おおさか維新の会と共産党がともに8%で続いた。民進党は7%と、民主党政権時代の失政がいまだに後を引いているのか、苦戦している(表)。
新専門医制度「わからない」46%
この間、政府が進める医療政策のうち「患者窓口負担増」「地域医療構想」「混合診療の全面解禁」「営利企業の医療機関経営への参入の解禁」について尋ねたところ、全ての項目で「反対」が「賛成」を上回った(図2・3)。ただ、「混合診療の全面解禁」「営利企業の医療機関経営への参入の解禁」について過去の調査と比較すると、「わからない」が2000年以降で最も高い水準になっており、会員の医療政策への興味関心が薄れているともとれる。
現在、日医や四病協が声明を発表し、厚生労働大臣もコメントを出すなど、混乱が広がっている「新専門医制度」については、「わからない」が46%で「反対」の44%、「賛成」の5%を上回った(図4)。制度実施が来年に迫る中、詳細がいまだに明らかにされていない状況に、現場で医療を担う会員の間にも困惑が広がっていることがうかがえる。
社会保障財源「大企業の負担増やす」過去16年で最高
社会保障充実のための財源について尋ねたところ、「国庫負担を増やす」が50%で最も多く、以下「大企業の負担を増やす」50%、「国民の負担を増やす」26%と続いた。過去の調査と比較すると、2000年以降「大企業の負担を増やす」の割合は最高となった(図5)。この間、安倍政権の下で、断続的に法人税が引き下げられてきたことに加え、パナマ文書などで大企業の課税逃れが明らかになったことなどが影響し、大企業に応分の負担を求める声が強くなっているものと思われる。
安倍首相が延期を表明した消費税増税については、10%への増税「賛成」が39%と「反対」の34%を上回った。「賛成」と答えた会員に理由を尋ねたところ、「社会保障の財源を増やすため」が最も多かった。政府による「消費税増税は社会保障のため」という宣伝が浸透しているためと思われる。実際には8%増税時に社会保障充実に使われたのは税収増の10%しかないことなどを、もっと広く知らせる必要がある。
医療にかかる消費税をどうすべきかについては、「ゼロ税率」が45%と最も多く、「軽減税率」「現状でよい」がそれぞれ19%、11%で続いた。日本医師会がこの間発表した解決策に最も類似する「補助金による還付を行うべき」は4%と最も少なかった。
憲法改正「反対」が「賛成」上回る
今回の参院選の争点の一つとされる「憲法改正」について、「反対」が41%と「賛成」の32%を上回った(図6)。また、「憲法9条」については「堅持する」が53%と「見直すべき」の33%を上回り、半数を超えた。「堅持する」が半数を超えたのは08年調査以来8年ぶり。安倍首相が意欲を示し、改憲が現実味を帯びる中、多くの会員が危機感を覚えたものと思われる。
昨年、日本弁護士連合会や元最高裁長官、歴代内閣法制局長官、憲法学者が違憲と判断し、多くの国民が反対の声を上げた「安全保障関連法」については「反対」が38%で最も多く「賛成」の26%を上回った。
政策で判断し投票を
今回の調査ではさまざまな政策について会員の意見を尋ねたが、多くの質問項目で「わからない」との回答が目立った。協会では常に医療政策などについて保険医新聞上での解説や専門家を招いた学習会の開催等を行っているが、今後もこうした取り組みを強めて、多くの会員に時々の医療政策の中身や問題点を明らかにする必要がありそうだ。
また、「自民党を支持する」と回答した会員のうち52%が「患者負担増」について「反対」とし、33%が憲法9条を「堅持すべき」と回答している。政策志向と政党支持に一定のねじれがみられており、会員には各党の医療、社会保障に対する具体的な政策を重視し、投票判断を行っていただきたい。