兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2016年9月15日(1824号) ピックアップニュース

2016年度 会員意見実態調査 (1)診療報酬改定(医科)
「改定に満足」ゼロ

 協会が会員の意見を把握するため2年に一度実施している、2016年度会員意見実態調査の結果がまとまり、今次診療報酬改定について、満足している医科会員は0%であることなどが明らかとなった。同調査について今号からテーマ別にシリーズで詳報する。(医療政策や財源論については速報値を7月5日付に掲載)

請求額「プラス」わずか5%
 「今回の診療報酬改定に対する評価」については、「満足でも不満でもない」が最多の58.12%、次いで「不満」30.77%、「おおいに不満」8.55%の順となった。「満足」「おおいに満足」は、いずれも2010年度改定以来の回答者ゼロとなった(図1)。
 「改定前と比べたレセプト請求額」は、「変わらない」が最多の43.59%。「ややマイナス」が次いで41.03%、「かなりマイナス」が5.13%だった。「ややプラス」は4.27%、「かなりプラス」は0.85%で、改定結果がプラスと回答したのは、あわせて5.12%にすぎなかった(図2)。
 今次改定は全体マイナス1.44%で、医科本体(薬価を除く技術料分)はプラス0.56%とされている。しかし、協会が実施した改定影響調査(16年2月診療分を新点数に置き換え)では、全体だけでなく本体でもマイナスとなっていた。今回の調査結果とあわせ、改定でプラス収入となった医療機関はわずかであり、政府が喧伝していた「本体プラス」は医療現場の実感と差があると言える。
影響大きい改定項目マル特等緩和が最多
 「改定で影響が大きい項目(複数回答可)」では、協会・保団連が長年にわたり要求し実現した「特定疾患療養管理料(マル特)等の退院日から1カ月未満の算定制限を自院退院のみに限ること」が30.99%と最も多かった。
 その他、「血液採取料の点数引き上げ(20点→25点)」が25.15%、「湿布薬の70枚超処方に対する制限」が19.30%となった。
 「地域包括ケア」推進のために新設された「認知症地域包括診療加算」について、影響が大きいとの回答は2.92%にとどまった。同点数については、89.74%が「算定していない」と回答。「算定している」「今後算定する」は、あわせても5.12%にとどまった(図3)。同点数を「評価できる」との回答は11.97%、「評価できない」が17.95%で、多くは「どちらでもない」(61.54%)と回答した。
 2014年度改定で新設された「地域包括診療加算」についても、「算定している」9.40%、「算定していない」82.91%となっている。認知症地域包括診療加算とともに算定医療機関が少ない背景として、ハードルの高い算定要件・施設基準や、患者説明の困難さなど、医療現場の実態にそぐわない点数となっていることが考えられる。
基本診療料引き上げ引き続き求める声
 入院患者への必要な医療を不当に制限する「入院患者の他医療機関受診の算定制限」については、「算定制限はやめるべき」が52.14%と最多となった。今次改定で入院料減算幅が若干緩和されたものの、算定制限そのものの撤廃が引き続き求められる。
 初・再診料については「引き上げるべき」が52.99%、「引き下げるべき」は0%だった。
 一方、「このままでよい」は前回調査の34.0%から増加し43.59%となり、理由の多くは「患者負担が増えるから」であった。経済困窮者の増大や患者窓口負担増などによる受診抑制への配慮があるとみられる。窓口負担軽減とあわせた診療報酬引き上げ要求が重要である。
〈調査の概要〉
 会員意見の把握のため、診療報酬改定の年に定期的に実施。対象は正会員の10%を無作為抽出。今回医科・歯科合計570件中30%の171件から回答を得た。調査期間は2016年6月13日〜24日。

図1 今回の診療報酬改定に対する評価(医科)
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図2 改定前と比べて請求額は変わりましたか
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図3 認知症地域包括診療加算を算定していますか
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