2016年9月25日(1825号) ピックアップニュース
燭心
最近、物覚えが悪い。昔から記憶力は良い方ではなくテストでも苦労した。今の医学生が覚えることは、以前に比べ膨大で可哀相とすら思う▼さて、人工知能(以下AI)が囲碁のトップ棋士に勝利した。ディープラーニングという斬新な解析手法を利用している。人間が特徴を入力するのではなく、膨大なデータからAIが特徴を抽出し自己学習する▼医学の世界でも、約2千万件の医学論文を学習したAI(IBM社のワトソン)が、難治白血病患者の遺伝子を10分で分析し、治療法の変更を提案し奏功した▼自治医大では、8千万件の診療情報を、診療支援システム「ホワイト・ジャック」に収集・統合し疾患確率を計算させ、検査・処方リストも表示する▼病名推理番組「総合診療医ドクターG」でもAIが瞬時に正解するだろう。すでにワトソンは米国のクイズ番組で優勝した▼レントゲン写真、MRI、CTスキャン、顕微鏡写真などによるがんの発見はAIの最も得意とするところだ。桁違いの画像情報とその結果だけを与え、24時間365日自己学習させる。ベテラン医師の経験症例数程度は、瞬時に処理してしまう▼AIの時代を迎え、医師に単純な記憶力は重要だろうか。診断学の勝負の行方は分かっている。外科的手技はまだ先かもしれないが、内科的治療学もいずれ敗北するだろう。では、どのような特性を強化すべきか。AIの発展は、医師に必要な資質を再考する機会になるかもしれない(空)