2016年10月15日(1827号) ピックアップニュース
地域の力で非営利の医療と皆保険守ろう
G7神戸保健大臣会合記念シンポジウム
基調講演を行った全国自治体病院協議会の邉見公雄会長(左)と臨床研究情報センターの福島雅典センター長(右)
国民皆保険は「世界文化遺産」
邉見氏は、薬の高額化による調剤医療費を始めとして医療費が増大し続けている現状を話しつつ、アメリカのオバマケアと比較しながら、日本の国民皆保険制度は「世界文化遺産」であると解説した。また中医協委員を務めた経験を踏まえ、今年度診療報酬改定について、これからは診療科別病棟から、急性期・地域包括期・慢性期といったステージ別の病棟への変化が進むと説明。政府が進める地域医療構想については、在宅を中心に地域のニーズに基づく医療の提供が重要だとした。
最後に、病院を中心とした町が作られることが夢だと語り、よい医療を地域住民とともに行うことがどの医療機関でも大切だと締めくくった。
先端医療の倫理を問う
福島氏は、倫理や哲学なき現代科学の進歩に危機感を表明。新聞報道にも論理破綻や学問の危機が見られると批判。特に臨床科学は、基礎研究の応用として実施できるものではなく高い倫理性が求められるとした。科学技術が悪用されないためには、研究の透明性の確保、学生と科学者の教育と啓発、社会における科学・技術監視機構が必要とし、科学に関する国際法の制定が求められるとした。再生医療を例に挙げ、企業の投資による安全性を無視した研究ではなく、自己由来幹細胞を用いての創薬こそ実現性が高いとし、アカデミア主導での治験こそ重視しなければならないと主張した。
武村先生は、神戸医療産業都市について、震災復興のためではなく、有効性と安全性が確立していない最先端の医療を、神戸中央市民病院の医療資源を使用して進める目的だと問題点を語った。
シンポジウムでは、西山裕康理事長をコーディネーターに会場からの意見をふまえて意見交換。神戸中央市民病院のような自治体病院は臨床研究を行うべきでないとの主張や、医療産業都市で行われている未承認の薬を薬事法外で患者へ投与することは許されず、市民が声を上げなければならないとの見解が示された。
医の倫理について医大では、ヘルシンキ宣言などを医学生に教えているが、文系学問と理系学問の分割により、根源的な倫理、論理、科学史について医学生が学ぶ場がないとの問題が提起された。