2016年11月25日(1831号) ピックアップニュース
燭心
高校時代に、「大貧民」というゲームが 流行 り、図に乗って授業中も教室後方で興じるようになった。このゲームは世襲制が強い階級闘争だ。大貧民は強い2枚の手札を、大富豪の弱い手札2枚と交換しなくてはならず、当然、大貧民はなかなか階級を上げられないという、「トランプ」ゲームである▼「トランプ」と言えば米国の次期大統領だ。政治的には素人の資産5千億円の不動産王。家族には実業家と元モデルや女優が多い。選挙に私費50億円以上を投入し大逆転を成し遂げたが、動機と目的がよく分からない。作戦はよく分かった。敵を名指しし、刺激的な言葉で攻撃し味方を増やしていく。おかげで内外の右派勢力が自信を付けている。あれだけ言っても票は取れると▼保護主義・反自由主義・排外主義・大衆迎合的「資本主義の申し子」の不動産王が、格差と貧困渦巻く国際社会と、分断と亀裂をもたらした国内に、現実的にどう対応するのか▼世界一の強国は「アメリカファースト」の「チェンジ」を選び、未知数に4年間を預けた。ポピュリズムとナショナリズムが親和した不安定な戦前をもたらすのだろうか▼トランプの肝は「ブラフ(はったり)」を含めた「ディール(取引)」で、大事なのは「ベット(賭け)」と「ウィン」だ。日本も、経済・貿易・安全保障に対する自主・自立的対策を考えなくてはならない。米国追随からの主権回復と言えるかもしれないが、トランプ的手法は避けたい。(空)