2016年12月05日(1832号) ピックアップニュース
燭心
最近見た映画「続・深夜食堂」がなかなかいい。小林薫さんがマスター役に扮する、夜中だけ営業する食堂。メニューは豚汁定食1品だけ、でも頼めば何でも作ってくれる。個性豊かな常連客に交じって訳あり顔の客も...。日々のエピソードがつづられるだけのストーリーだが、豚汁のように暖かく小腹がふくれる▼舞台はどうも、新宿の裏町のようだ。繁華街から少し入った、木造住宅が連なる路地、今でもこんな所が残っているのだろうか。さて、神戸でいえばどの辺だろうか?震災前の長田や兵庫の町はこんな感じだったかといろいろ思いめぐらしてみる。思い当たったのが、元町高架通商店街、通称モトコーだ▼JR元町駅から神戸駅まで続く細い路地。頭の上で電車の通る音が響く。戦後の闇市がルーツだそうだ。様々な店が両脇に並ぶ。古着屋、古本屋、新しいカフェも、そして小林さんのようなマスターがひょっこり現れそうな小さな食堂、久しぶりに通ってみた▼今、立ち退き問題で揺れている。JR西日本が耐震補強を理由に、来年から店舗の立ち退きを要求している。数年かかる工事らしいが、果たして今まで通り商売が続けられるのか心配だ。商店主らは「モトコーを守る会」を作って存続運動を始めた。個性のある町が消えていくのは、神戸っ子にとっても悲しいことだ。深夜食堂のマスターならきっと「こういう所が一つくらいあってもいいんじゃないかな」そんなセリフを想像してしまう(星)