2017年2月15日(1837号) ピックアップニュース
日高医療センター無床化計画
住民の反対運動で議会への提案断念させる
但馬支部長 谷垣 正人(豊岡市)
「地域医療をまもる但馬の会」が主催し、地域住民ら120人が集まった「但馬住民集会」(2016年11月12日)
豊岡市日高町には、公立豊岡病院組合(豊岡市と朝来市で構成)立の日高医療センター(99床、以下日高MCと略)があります。もともと神戸大学の関連病院で、神鍋山スキー場にも近く、かつて勤務された先生もおられると思います。
同組合が作った「日高MCあり方検討委員会」が2016年夏、(1)日高MCの建物は耐震上問題があるため、建て替える、(2)日高MCの入院ベッド99床は、一部を出石MCに移す以外は廃止する、(3)現在日高MCにある眼科センターは豊岡病院に移す、(4)日高MCは在宅医療の拠点として整備する、という方針を突然発表しました。
地区説明会で反対意見つぎつぎ
同組合は9月初めに「あり方検討委員会」の答申案を発表するシンポジウムを開き、その後日高町内の各地区でもその説明会を開催しました。しかし、次々に以下のような意見が、出席者から出されました。すべて無床化に反対する意見でした。
・日高MCには今も、豊岡病院が満床で入院できない急性疾患の患者、脳卒中や整形外科疾患術後でリハビリの必要な患者、人工透析中に悪化した患者、眼科疾患手術後の患者など多くの入院があり、それらの患者がたちまち困る
・日高MCの入院患者を出石MCで診ると言うが、出石MCも医師不足であり、日高と出石は生活圏が違い交通の便も極めて悪い
・日高MCを在宅医療の拠点とすると言うなら、在宅患者さんが悪化したり、患者家族が困った時の入院機能が絶対必要ではないか
・何百人もの寝たきりや認知症の高齢患者が、但馬外に入院せざるを得ない現状にもかかわらず、日高MCのベッドをゼロにするのは理解できない
・病院組合のやり方は、出石MCや梁瀬MCを診療所にすると言った後撤回、数年前眼科を豊岡病院から日高MCに移した後、今回また豊岡病院に戻すと言う、日高MCを診療所にすると言うなど、あまりに朝令暮改的で計画性がない
・町役場のなくなった日高町でさらに病院がなくなると、町は本当にさびれてしまう。それは国の言う地方創生に反するのではないか
・病院組合は医師不足を無床化の大きな理由にあげるが、ベッドがなくなっても医師不足はどうにもならず、さらに縮小や廃院に追い込まれるのではないか
住民数上回る署名集める
「あり方検討委」の答申案が発表されると直ちに、但馬医療生協の組合員を中心に結成された「地域医療をまもる但馬の会」が、日高MCの無床化に反対する陳情署名を開始しました。保険医協会の但馬支部でも幹事会でその署名への協力を決め、各診療所の窓口などで署名を集めました。
また、日高町選出の市会議員や各地区の区長にとっても、日高MCの無床化計画は「寝耳に水」だったようで、日高地区区長協議会も「地域医療をまもる但馬の会」とほぼ同じ内容の陳情署名を始めました。
1カ月半ほどで「地域医療をまもる但馬の会」が7316筆、「日高地区区長協議会」が1万2655筆の署名を集め、一部重複はあるものの、二つを合わせると日高町のほぼ全部の住民が反対していることが明らかになりました。
さらに2016年12月の豊岡市議会で、日高町選出の市会議員全員が病院組合議会の議員となり、日高町選出議員の了承が得られない限り、日高MCの無床化計画は組合議会で承認されないことになりました。
結局病院組合は、当初予定していた12月病院組合議会への計画の提案を断念せざるをえなくなりました。
但馬支部の真価問われる年に
病院組合は、これで計画をあきらめたわけではなく、医師不足・医師の疲弊をいちばんの理由にして日高MCの縮小をめざしており、現在次の案を検討中とのことです。2016年末の神戸新聞の正平調欄に、次のような短歌が載っていました。「爪楊枝のはじめの一本抜かんとし集団的な抵抗に会ふ」(花山多佳子歌集『晴れ・風あり』より)。当局はまさにこのような心境でしょうか。
医師不足は続き、またいつ同じような計画が出てくるか分かりません。しかし医師不足は住民のせいではなく、住民が爪楊枝のように1本1本身を寄せ合って抵抗するのは当然です。協会の支部としてどう関わるのか、私たちの真価が問われる年になりそうです。