2017年4月05日(1842号) ピックアップニュース
県の「新県立病院改革プラン(案)」に意見提出
「県民の医療ニーズに応える標準医療の提供を」
兵庫県は3月3日、「病院事業全般にかかる構造改革の取り組みを推進」し、総務省の新公立病院改革ガイドラインをふまえた中期計画として、「新県立病院改革プラン(案)」を作成。これに対し、協会は3月26日まで県が行ったパブリックコメント募集で、「私立病院では不十分とならざるを得ない医療の提供こそ公立病院の役割」「公立病院の統合再編は地域の意見を尊重し慎重にすべき」などとする意見を提出した。提出した意見の要旨を掲載する。
現在、県下でもいくつかの地域や診療領域で、救急医療、へき地医療、小児医療をはじめとした周産期医療、在宅医療のバックアップなど、十分な医療が提供されているとは言い難い状況がある。今後、高齢化の進行で県民の医療需要と地域差はさらに増大することも予想される。
そうした中、「高度専門・特殊医療」だけではなく、県民の医療ニーズに応える標準医療の安定的な提供も、県立病院の使命として重視すべきである。
政府はこの間、事実上の診療報酬引き下げに加え、地方交付税を削減する一方で、公立病院に黒字化を求めてきた。さらに医師数抑制政策も進められようとしている。
これを無批判に受け入れ、病院経営の効率化を優先するのでは、医療従事者の労働条件の悪化と行政を含む医療関係者の士気低下は避けられない。
県立病院の収入の大半は診療報酬であり、まずはその引き上げを求め、また、県立病院で働く医療従事者が水準の高い医療を提供できるように、一般会計からの繰り入れによる資金的な支援や医療従事者の余裕を持った配置などを積極的に行うべきである。
・県立病院の役割について「高度専門・特殊医療」のみをことさら取り上げず、地域によってはプライマリケアに習熟した「断らない救急」を実践する医師と医療機能の確保を目指すべき。また、平均年齢が60歳に達するとされる診療所の医師が、心身の健康を保ちながら地域医療、とりわけ在宅医療の充実・発展に強く関与できるよう、夜間、休日や急変時の受け入れなども役割としていただきたい。
・「粒子線医療センター付属神戸陽子線センター(仮称)の整備を推進」とあるが、粒子線医療は現在、保険収載されておらず、国に対し粒子線医療の保険収載を求めるとともに、県民に安価に提供すべき。神戸医療産業都市においては、医療ツーリズムなども推進されており、県民の医療資源である陽子線センターが、県民よりも優先的に海外の富裕層に提供されないように注意されたい。
・「県立病院では、地域の産科医療機関や消防機関と連携して、周産期医療の確保に引き続き協力する」とあるが、主体的に「...周産期医療を確保する」とし、外来、在宅医療を担う地域の小児科医療機関の確保、支援も合わせて行うべき。
・公立病院等との再編・ネットワーク化について、県立柏原病院と柏原赤十字病院の統合再編、県立姫路循環器病センターと製鉄記念広畑病院の統合再編、県立西宮病院と西宮市立中央病院のあり方の検討が盛り込まれているが、地域住民、医療関係者の意見を尊重し、慎重に進めるべき。
・給与比率の縮小が計画されているが、過去の例からも医師の逃散が、診療機能の縮小を余儀なくさせ、大幅に病院の経営を悪化させることは明白で、医療職の人件費比率を引き下げるのは妥当ではない。
・「平均在院日数の適正化を図り」とされているが、目先の数値を指標とせず、患者の状態を適切に判断し、再入院等とならないよう、無理な退院判断を行わないように注意されたい。
・「新専門医制度への適切な対応に努める」とあるが、専門医資格取得の要件が厳しくなることが予測されるため、症例数の確保、指導医の養成などに注力するとともに、県内各地域にくまなく医師を確保・定着させる観点から、地域の民間医療機関などと連携し、症例数や指導医の確保を行うべき。
・統合再編による新病院、とりわけ、循環器病における周術期の口腔管理は重要であり、県立姫路循環器病センターと製鉄記念広畑病院の統合再編による新病院には、歯科口腔外科を整備されたい。
◆はじめに
県立病院の役割は、民間病院では地域に不足する医療に積極的に取り組むとともに、あらゆる地域において、県民のニーズに応じた公平、公正な医療を提供することにある。現在、県下でもいくつかの地域や診療領域で、救急医療、へき地医療、小児医療をはじめとした周産期医療、在宅医療のバックアップなど、十分な医療が提供されているとは言い難い状況がある。今後、高齢化の進行で県民の医療需要と地域差はさらに増大することも予想される。
そうした中、「高度専門・特殊医療」だけではなく、県民の医療ニーズに応える標準医療の安定的な提供も、県立病院の使命として重視すべきである。
政府はこの間、事実上の診療報酬引き下げに加え、地方交付税を削減する一方で、公立病院に黒字化を求めてきた。さらに医師数抑制政策も進められようとしている。
これを無批判に受け入れ、病院経営の効率化を優先するのでは、医療従事者の労働条件の悪化と行政を含む医療関係者の士気低下は避けられない。
県立病院の収入の大半は診療報酬であり、まずはその引き上げを求め、また、県立病院で働く医療従事者が水準の高い医療を提供できるように、一般会計からの繰り入れによる資金的な支援や医療従事者の余裕を持った配置などを積極的に行うべきである。
◆要請項目
・私立病院では経営上不十分とならざるを得ない地域や診療領域における医療の提供こそ公立病院の重要な役割であると追記すべき。・県立病院の役割について「高度専門・特殊医療」のみをことさら取り上げず、地域によってはプライマリケアに習熟した「断らない救急」を実践する医師と医療機能の確保を目指すべき。また、平均年齢が60歳に達するとされる診療所の医師が、心身の健康を保ちながら地域医療、とりわけ在宅医療の充実・発展に強く関与できるよう、夜間、休日や急変時の受け入れなども役割としていただきたい。
・「粒子線医療センター付属神戸陽子線センター(仮称)の整備を推進」とあるが、粒子線医療は現在、保険収載されておらず、国に対し粒子線医療の保険収載を求めるとともに、県民に安価に提供すべき。神戸医療産業都市においては、医療ツーリズムなども推進されており、県民の医療資源である陽子線センターが、県民よりも優先的に海外の富裕層に提供されないように注意されたい。
・「県立病院では、地域の産科医療機関や消防機関と連携して、周産期医療の確保に引き続き協力する」とあるが、主体的に「...周産期医療を確保する」とし、外来、在宅医療を担う地域の小児科医療機関の確保、支援も合わせて行うべき。
・公立病院等との再編・ネットワーク化について、県立柏原病院と柏原赤十字病院の統合再編、県立姫路循環器病センターと製鉄記念広畑病院の統合再編、県立西宮病院と西宮市立中央病院のあり方の検討が盛り込まれているが、地域住民、医療関係者の意見を尊重し、慎重に進めるべき。
・給与比率の縮小が計画されているが、過去の例からも医師の逃散が、診療機能の縮小を余儀なくさせ、大幅に病院の経営を悪化させることは明白で、医療職の人件費比率を引き下げるのは妥当ではない。
・「平均在院日数の適正化を図り」とされているが、目先の数値を指標とせず、患者の状態を適切に判断し、再入院等とならないよう、無理な退院判断を行わないように注意されたい。
・「新専門医制度への適切な対応に努める」とあるが、専門医資格取得の要件が厳しくなることが予測されるため、症例数の確保、指導医の養成などに注力するとともに、県内各地域にくまなく医師を確保・定着させる観点から、地域の民間医療機関などと連携し、症例数や指導医の確保を行うべき。
・統合再編による新病院、とりわけ、循環器病における周術期の口腔管理は重要であり、県立姫路循環器病センターと製鉄記念広畑病院の統合再編による新病院には、歯科口腔外科を整備されたい。