2017年5月15日(1845号) ピックアップニュース
高浜原発の再稼働を認めた大阪高裁決定に抗議
関西電力高浜原発3・4号機について、3月28日、大阪高裁は同原発の運転差し止めを命じた大津地裁の仮処分決定を覆す決定を行った。
兵庫協会は4月22日の第1057回理事会で、この決定に対する抗議文を承認し、関西電力および大阪高裁に送付した。
抗議文は、この決定は、原発の危険性と住民の不安を無視するものであるとし、いのちと健康をまもる医療者として、強く抗議する内容となっている。
高浜原発の稼働について、大津地裁は、事故の原因究明が不十分な中で作られた新規制基準を満たしただけでは不十分と判断し、運転差し止めを関西電力に命じていた。
これに対し、大阪高裁は、新基準は「解明された事故の教訓に加え、最新の科学的・技術的知見などを検討し、不合理なものとはいえない」と判断している。しかし、新基準は、原子力規制委員会の田中俊一委員長が「絶対安全とは申し上げない」と表明している上、欧州の安全設備と比較しても最新とは呼べないものである。
抗議文は、この点を指摘した上で、原発に関する資料のほとんどは電力会社が保有しているにも関わらず、新基準が合理性を欠くことを立証する責任を住民に押し付けている点からも合理性に欠けると批判。
福島第一原発事故の反省に立たず、住民の不安に向き合わないこのような決定は、とても許されるものではないとして、決定に抗議し、全原発の廃炉決断を関西電力に求めている。
寄稿
同訴訟を支える会の会長を務める滋賀協会公害・環境部長の福田章典先生の寄稿を掲載する。
昨年3月大津地裁での仮処分決定で高浜原発が運転を停止、史上初めて司法の判断で運転中の原発が止まった。地裁決定は、電力会社の側に安全性の立証責任があるとし、福島の事故の全容解明がまだなされていない中でどのように安全対策が取られたかの説明を求めた。その上で、使用済み核燃料ピットの安全性、地震や津波への対応などについて具体的に問題を指摘したものである。さらに避難計画についても国主導での計画策定が必要と指摘している。
しかし今年3月28日、大阪高裁の抗告審で運転禁止を取り消す決定がされた。高裁決定は住民側に立証責任があるとし、原子力規制委員会委員長自身が新規制基準に適合しても安全だとは言わないと繰り返し述べているにもかかわらず、決定の中で新規制基準のことを「安全性の基準」と繰り返し記載し、関電側は新規制基準に適合することを立証すればよいとした。地震対策の基礎となる基準地震動の計算についても、審査で広く用いられていることを理由に正当化し、大津地裁決定の、海底等の断層調査の不十分さや地震動の想定がわずか14の地震を根拠にしていること等の指摘に全く答えていない。
また、高裁決定は、新規制により「炉心の著しい損傷を防止する確実性は高度」だとして、避難計画が規制対象に入っていないことを容認した。これは、重大事故が起こらないとして対策を怠り、原発事故を招いた「安全神話」の復活と言わざるを得ない。
弁護団が述べたように「原発事故を防ぐことができなかった責任の一端が司法にもあるという反省の態度はみじんも感じられない」決定である。
兵庫協会は4月22日の第1057回理事会で、この決定に対する抗議文を承認し、関西電力および大阪高裁に送付した。
抗議文は、この決定は、原発の危険性と住民の不安を無視するものであるとし、いのちと健康をまもる医療者として、強く抗議する内容となっている。
高浜原発の稼働について、大津地裁は、事故の原因究明が不十分な中で作られた新規制基準を満たしただけでは不十分と判断し、運転差し止めを関西電力に命じていた。
これに対し、大阪高裁は、新基準は「解明された事故の教訓に加え、最新の科学的・技術的知見などを検討し、不合理なものとはいえない」と判断している。しかし、新基準は、原子力規制委員会の田中俊一委員長が「絶対安全とは申し上げない」と表明している上、欧州の安全設備と比較しても最新とは呼べないものである。
抗議文は、この点を指摘した上で、原発に関する資料のほとんどは電力会社が保有しているにも関わらず、新基準が合理性を欠くことを立証する責任を住民に押し付けている点からも合理性に欠けると批判。
福島第一原発事故の反省に立たず、住民の不安に向き合わないこのような決定は、とても許されるものではないとして、決定に抗議し、全原発の廃炉決断を関西電力に求めている。
寄稿
大阪高裁決定は「安全神話」の復活
福井原発訴訟(滋賀)を支える会会長滋賀県保険医協会公害・環境部長 福田 章典先生
同訴訟を支える会の会長を務める滋賀協会公害・環境部長の福田章典先生の寄稿を掲載する。昨年3月大津地裁での仮処分決定で高浜原発が運転を停止、史上初めて司法の判断で運転中の原発が止まった。地裁決定は、電力会社の側に安全性の立証責任があるとし、福島の事故の全容解明がまだなされていない中でどのように安全対策が取られたかの説明を求めた。その上で、使用済み核燃料ピットの安全性、地震や津波への対応などについて具体的に問題を指摘したものである。さらに避難計画についても国主導での計画策定が必要と指摘している。
しかし今年3月28日、大阪高裁の抗告審で運転禁止を取り消す決定がされた。高裁決定は住民側に立証責任があるとし、原子力規制委員会委員長自身が新規制基準に適合しても安全だとは言わないと繰り返し述べているにもかかわらず、決定の中で新規制基準のことを「安全性の基準」と繰り返し記載し、関電側は新規制基準に適合することを立証すればよいとした。地震対策の基礎となる基準地震動の計算についても、審査で広く用いられていることを理由に正当化し、大津地裁決定の、海底等の断層調査の不十分さや地震動の想定がわずか14の地震を根拠にしていること等の指摘に全く答えていない。
また、高裁決定は、新規制により「炉心の著しい損傷を防止する確実性は高度」だとして、避難計画が規制対象に入っていないことを容認した。これは、重大事故が起こらないとして対策を怠り、原発事故を招いた「安全神話」の復活と言わざるを得ない。
弁護団が述べたように「原発事故を防ぐことができなかった責任の一端が司法にもあるという反省の態度はみじんも感じられない」決定である。