2017年6月05日(1847号) ピックアップニュース
燭心
ナチス政権下で開催された1936年のベルリン五輪は国威発揚のプロパガンダに利用された。モスクワ・ロサンゼルスの両大会も、アフガニスタン・グラナダ侵攻を受けて東西の国がボイコットするなど、五輪は政争の具とされ翻弄されてきた歴史を持つ。世界が過去の苦い経験の反省に立ち何とか脱輪しないよう憲章に明記し、自制を続けてきたにもかかわらず、同じ愚を繰り返す輩はいるものである▼共謀罪改め「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改悪案が、衆議院法務委員会で強行採決され可決した。今国会でのやり取りはあまりにもひどい。金田法相には、的外れなだけでなく答弁そのものに全く答えられない場面も、幾度となく見せつけられた。安倍首相ものらりくらり発言に加え、ヤジに呼応する時間稼ぎや質問そらしなど野党の質問にまともな答弁ができない。空疎な議論で時間を浪費したにもかかわらず、十分討議がなされたとしてあっけなく強行採決というお決まりのパターンである▼同法案は東京五輪を安全に開催するために必要というが、治安の良さをアピールして招致した東京五輪だったはず。2020年をめどにした改憲も含め、政治利用の極みである▼「『美しい国』の理想が憲法に書き込まれることで、それを『美しい』とは考えない日本人が、非国民として排除されるようなことがあってはならない」という石川健治東大教授の言葉は、共謀罪の存在で怖いほど真実味を帯びる(九)