2017年6月05日(1847号) ピックアップニュース
近畿厚生局兵庫事務所と懇談
歯科新規指導での暴言 あらためて強く抗議
協会は5月10日、西山裕康理事長と吉岡正雄副理事長(歯科部会長)が、近畿厚生局兵庫事務所の勝木修所長らと懇談し、3月に行った、歯科新規個別指導における録音拒否と指導医療官の暴言への抗議(4月5日付既報)について、抗議文で示した5点(左記)に対する回答をあらためて求めた。
兵庫事務所は、前回の抗議の際に勝木所長が「指導現場に確認する」と述べた録音拒否と暴言について、「事実確認についてはお答えしかねる」としたものの、録音拒否については「前回要請いただいた際に回答した通り、被指導者自身の指導内容の確認が目的の場合は認めている」と述べた。
暴言については協会から、抗議した事例は保険診療ルールの周知を行うために懇切丁寧に行う教育的指導とはかけ離れたものであったことを、具体的事実で示し、強く抗議した。
指導医療官の配置改善については、「厚生労働省本省のことであり兵庫事務所で回答できることではない」とした。
新規指導で「再指導」結果を廃止すること、指導内容を後日口頭だけでなく書面で交付することについては、「指導大綱に基づいて、近畿厚生局で統一的に実施しているもの」と述べた。
談話
今回の懇談では、近畿厚生局兵庫事務所は協会が求めた事実確認と謝罪について、明確な回答をしなかった。そもそも新規個別指導は行政指導であり、指導大綱にも〝保険診療のルールの周知を行うために懇切丁寧な指導を行うこと〟とあることから、指導医療官としての資質が疑われる侮辱的な発言を行った事態について、協会は再度抗議した。録音については改めて認める回答をした。
協会はこれまでも繰り返し指導の改善を求めてきたが、折しも堀内照文衆議院議員(共産党)が5月12日の衆院厚労委員会で、個別指導問題について質問した(写真)。堀内議員は、「全国で非常に高圧的だという声を聞く。指導をめぐって若い医師が自殺する事例も聞いている」と述べ、厚労省担当者による威圧的な態度、被指導者の人格を否定する発言、監査をちらつかせての恫喝などの実態を指摘し、また、「録音は認められている」「集団的個別指導は高点数を選定基準にすることをやめるべき」と大臣に質した。
塩崎恭久厚労大臣は、個別指導について「保険診療や診療報酬の請求に関するルールについて周知徹底をする、これが主眼であって、あくまでも懇切丁寧に行わなければならない」、録音については「指導内容の保険医等自身による確認を目的とする場合に限って許される」と答弁した。その上で、「個別指導の趣旨などについて周知徹底を図りつつ、引き続き、原点に立ち返って、懇切丁寧な指導に努めていかなければならない」と答弁した。
近畿厚生局兵庫事務所は、大臣が答弁したように、行政手続法に則った懇切丁寧な教育的指導を徹底すべきであり、今回の暴言に対して事実確認と被指導者に対する謝罪を行うべきである。
協会は、引き続き厚労省と近畿厚生局に対して、個別指導の改善を求める運動を強めていく。
参院予算委で診療報酬質疑
医療機関への指導等で返還を求められた診療報酬をめぐり、返還内容の十分な説明もないまま「不正請求」とのフレーズが質問議員と政府の双方から繰り返し用いられる一幕が、国会論議の中であった。
3月6日に行われた参議院予算委員会で、東徹参議院議員(維新)が審査・指導に関し、指導等での返還額について質問。塩崎恭久厚生労働大臣は、2015年度に医療機関等へ返還を求めた診療報酬について「不正請求の金額124億円」と述べ、「この不正はきちっと回収されていくということが大事」と答弁した。安倍首相も、「国民の皆さまの貴重なご負担で賄われている診療報酬の不正請求は決して許されるものではない」と強調した。
厚生労働省の定義で「不正請求」とは、架空請求、付増請求、振替請求、二重請求など「詐欺や不法行為に当たるもの」をいう。一方、指導内容の要点をカルテに記載していないなど、「算定要件を満たしていない等、妥当性を欠くもの」として「不当請求」がある。
個別指導での返還内容をみると「不当請求」とされる点数が多く、そのほとんどは医学的指導や管理、検査、処置などが実際に行われている。今回の委員会質疑では、返還のほとんどが実態のない請求や意図的な不正請求であるかのような印象を聞く者に与えかねない。
東議員は「医師会の立ち会いのために日程の調整に非常に時間がかかり、迅速な指導・監査ができない」「利益相反行為になる」として、「医師会の立ち会いは省略すべき」と求めた。
塩崎厚労大臣は、指導・監査時は健康保険法に基づいて学識経験者が立ち会うことになっていることなどを説明し、立ち会いによって指導の公平性を担保していると答弁。「ご意見はご意見として、しかと受け止めておきたい」と述べた。
兵庫事務所は、前回の抗議の際に勝木所長が「指導現場に確認する」と述べた録音拒否と暴言について、「事実確認についてはお答えしかねる」としたものの、録音拒否については「前回要請いただいた際に回答した通り、被指導者自身の指導内容の確認が目的の場合は認めている」と述べた。
暴言については協会から、抗議した事例は保険診療ルールの周知を行うために懇切丁寧に行う教育的指導とはかけ離れたものであったことを、具体的事実で示し、強く抗議した。
指導医療官の配置改善については、「厚生労働省本省のことであり兵庫事務所で回答できることではない」とした。
新規指導で「再指導」結果を廃止すること、指導内容を後日口頭だけでなく書面で交付することについては、「指導大綱に基づいて、近畿厚生局で統一的に実施しているもの」と述べた。
■抗議文で緊急に改善を求めた5点
1、被指導者が指導時に録音を求めた場合は、認めること。
2、該当指導医療官の暴言について事実確認を行い、被指導者に対し謝罪すること。
3、指導医療官は、臨床医療の熟知に加え、指導の趣旨を理解し、常識と人格を兼ね備えた人物を配置し、法の精神に則った指導方法の実施を周知徹底すること。
4、新規個別指導は、教育目的から逸脱せず、「再指導」結果は廃止すること。
5、指導内容については、後日申し立てが可能である旨を、口頭だけでなく当日に書面で被指導者に交付すること。
1、被指導者が指導時に録音を求めた場合は、認めること。
2、該当指導医療官の暴言について事実確認を行い、被指導者に対し謝罪すること。
3、指導医療官は、臨床医療の熟知に加え、指導の趣旨を理解し、常識と人格を兼ね備えた人物を配置し、法の精神に則った指導方法の実施を周知徹底すること。
4、新規個別指導は、教育目的から逸脱せず、「再指導」結果は廃止すること。
5、指導内容については、後日申し立てが可能である旨を、口頭だけでなく当日に書面で被指導者に交付すること。
衆院厚労委員会で個別指導問題について質問する堀内議員
談話
引き続き個別指導の改善求め運動強める
歯科部会長 吉岡 正雄
今回の懇談では、近畿厚生局兵庫事務所は協会が求めた事実確認と謝罪について、明確な回答をしなかった。そもそも新規個別指導は行政指導であり、指導大綱にも〝保険診療のルールの周知を行うために懇切丁寧な指導を行うこと〟とあることから、指導医療官としての資質が疑われる侮辱的な発言を行った事態について、協会は再度抗議した。録音については改めて認める回答をした。協会はこれまでも繰り返し指導の改善を求めてきたが、折しも堀内照文衆議院議員(共産党)が5月12日の衆院厚労委員会で、個別指導問題について質問した(写真)。堀内議員は、「全国で非常に高圧的だという声を聞く。指導をめぐって若い医師が自殺する事例も聞いている」と述べ、厚労省担当者による威圧的な態度、被指導者の人格を否定する発言、監査をちらつかせての恫喝などの実態を指摘し、また、「録音は認められている」「集団的個別指導は高点数を選定基準にすることをやめるべき」と大臣に質した。
塩崎恭久厚労大臣は、個別指導について「保険診療や診療報酬の請求に関するルールについて周知徹底をする、これが主眼であって、あくまでも懇切丁寧に行わなければならない」、録音については「指導内容の保険医等自身による確認を目的とする場合に限って許される」と答弁した。その上で、「個別指導の趣旨などについて周知徹底を図りつつ、引き続き、原点に立ち返って、懇切丁寧な指導に努めていかなければならない」と答弁した。
近畿厚生局兵庫事務所は、大臣が答弁したように、行政手続法に則った懇切丁寧な教育的指導を徹底すべきであり、今回の暴言に対して事実確認と被指導者に対する謝罪を行うべきである。
協会は、引き続き厚労省と近畿厚生局に対して、個別指導の改善を求める運動を強めていく。
参院予算委で診療報酬質疑
首相・厚労相 定義明確にせず「不正請求」発言
医療機関への指導等で返還を求められた診療報酬をめぐり、返還内容の十分な説明もないまま「不正請求」とのフレーズが質問議員と政府の双方から繰り返し用いられる一幕が、国会論議の中であった。3月6日に行われた参議院予算委員会で、東徹参議院議員(維新)が審査・指導に関し、指導等での返還額について質問。塩崎恭久厚生労働大臣は、2015年度に医療機関等へ返還を求めた診療報酬について「不正請求の金額124億円」と述べ、「この不正はきちっと回収されていくということが大事」と答弁した。安倍首相も、「国民の皆さまの貴重なご負担で賄われている診療報酬の不正請求は決して許されるものではない」と強調した。
厚生労働省の定義で「不正請求」とは、架空請求、付増請求、振替請求、二重請求など「詐欺や不法行為に当たるもの」をいう。一方、指導内容の要点をカルテに記載していないなど、「算定要件を満たしていない等、妥当性を欠くもの」として「不当請求」がある。
個別指導での返還内容をみると「不当請求」とされる点数が多く、そのほとんどは医学的指導や管理、検査、処置などが実際に行われている。今回の委員会質疑では、返還のほとんどが実態のない請求や意図的な不正請求であるかのような印象を聞く者に与えかねない。
立会い省略も議論
委員会質疑の中では、指導時の医師会立ち会いの省略もテーマにのぼった。東議員は「医師会の立ち会いのために日程の調整に非常に時間がかかり、迅速な指導・監査ができない」「利益相反行為になる」として、「医師会の立ち会いは省略すべき」と求めた。
塩崎厚労大臣は、指導・監査時は健康保険法に基づいて学識経験者が立ち会うことになっていることなどを説明し、立ち会いによって指導の公平性を担保していると答弁。「ご意見はご意見として、しかと受け止めておきたい」と述べた。