兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

兵庫保険医新聞

2017年10月05日(1858号) ピックアップニュース

燭心

 窮鼠猫を噛んだらどうなる、などと考えるのはよほどの臆病者だろうか。国連総会で、トランプ米大統領と並ぶ世界的好戦派に成長した安倍首相は、持ち時間のほとんどを「対話の道は消えた、圧力だ」と北朝鮮へのさらなる制裁強化を訴えるプロパガンダに費やした▼民意は安倍政権に批判的だった。疑惑への説明責任を果たさず、支持率は凋落の一途であったが、北朝鮮による一連の挑発行為に対し、甲高い警報や防災訓練で恐怖心をあおり、公共交通を遮断して怒りを敵に向けさせることで支持率は向上の兆しを見せた▼「戦争が起こらない限り、デモクラシーを鎮圧することはできない。一旦戦争が起こってしまえば、戦争が終わるまでデモクラシーの出番はない」折々のことばで、鷲田清一さんは坂野潤治『帝国と立憲』の一節を紹介している。日中戦争の勃発によって、民意は厭戦からあっけなく好戦に転じたという▼翻って安倍首相。ここにきて唐突な衆議院の解散である。疑惑隠しに加え、消費税の使途を変更しての争点隠し、さらには安保法の違憲議論を打ち切るための自衛隊加憲による論点隠しなど国民軽視も甚だしい大義なき解散である。本来なら国会での徹底した議論により審議を尽くすべきところを放棄しての安易な解散は許されるものではない。こんな政権の目指す先に希望があるのか。攻撃的な猫も追い詰められた北のネズミにもその掌中には核のボタンがあることを忘れてはいけない(九)
バックナンバー 兵庫保険医新聞PDF 購読ご希望の方