2017年12月15日(1865号) ピックアップニュース
燭心
オリジナリティは大事である。医学を始めとする自然科学はもちろん、芸術分野でも重視される。学習の最初は模倣からとはいえ、極端にオリジナリティを欠く作品は「パクリ」と言われ、争いの対象にもなりかねない▼アカデミー賞を受賞した坂本龍一は「作曲の95%は過去の遺産。作曲家自身の〝発明〟はせいぜい1,2%で最大でも5%。大部分は過去の作品の引用」という。ジョン・レノンもサザンの桑田も「パクリ」を認めているらしい▼そもそも無から有は生み出せない。楽譜、記号、楽器、それを記録し伝える媒体に至るまで、一つの楽曲のほとんどは過去の蓄積から成る。人間の耳や脳も過去からの蓄積といえよう▼情報が少ないところにイノベーションはない。他人の知らない情報を幅広く収集するほど、オリジナリティに結び付きやすい。モーツァルトの記憶力は半端でなく、ジャズの求道者は未知を求め民族音楽へ向かう▼ビッグデータの収集と処理はAIの得意分野で、すでに音楽も作る。ビートルズ「風」などお手の物だ▼多くの情報さえ与えれば、「○○風」や「売れ線」を作り、お金儲けも難しくないだろう。だが、それ以上の価値はあるのだろうか▼オリジナリティは淘汰されスタンダードとなり、価値判断の一助になってこそ意味を持つ。医学論文は引用されることが重要で、「神の手」は「人の手」になってこそ評価が上がる▼さて、この駄文のオリジナリティは如何ほどか。(空)