兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2018年1月05日(1866号) ピックアップニュース

新聞部の会員訪問 〜踊る楽しみ 伝えたい〜
Shall We Dance? 加西市 さかいこどもクリニック 酒井 圭子 先生

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加西市 さかいこどもクリニック
酒井 圭子先生
【さかい けいこ】1964年生。87年広島大学医学部総合薬学科卒業、89年同大学医学系研究科分子薬学専攻修了、99年滋賀医科大学医学科卒業、同年神戸大学医学部附属病院小児科勤務。兵庫県立こども病院、高砂市民病院、市立西脇病院、市立加西病院を経て、2006年加西市にてさかいこどもクリニックを開業

 小児科医であり社交ダンスのプロ。二つの顔を持つ加西市・さかいこどもクリニックの酒井圭子先生に、足立了平新聞部長がインタビュー。酒井先生が同市内で開くダンススタジオで、社交ダンスの魅力についてお話を伺った。

オリンピック選手を育成したい
 足立 立派なダンススタジオですね。初めての人には社交ダンスは敷居が高いものかと思っていましたが、アットホームな雰囲気なので意外です。
 酒井 社交ダンスに「大人の趣味」というイメージを持たれる方も多いと思うのですが、実は子どもからお年寄りまで、年齢も性別も関係なく楽しめるダンスで、中には70歳近くから始められる方もおられます。意外かもしれませんが、お一人で始められる方が多く、レッスンを重ねるうちに参加者同士で自然と打ち解けてきますので、ダンスは初めてで不安、という方もぜひ一歩を踏み出してみてください。
 足立 先ほど資料を拝見しましたが、子どもさん向けのレッスンもしておられるんですね。
 酒井 このダンススタジオを建てた理由の一つに、子どもたちが集まってダンスが練習できる場所を作りたいというのがありました。楽しいことは子どもの時からやってほしいですからね。子どもには無料で教えています。少しでも社交ダンスに興味を持つ子どもが増えたらうれしいですね。他にも鏡張りの練習場であることを生かして、狂言師の野村萬斎さんたちを講師に加西市が取り組んでいる「こども狂言塾」の練習場にも使っていただいています。
 足立 ホームページに、いつかは社交ダンスのオリンピック選手を育てるのが夢だとありますが、社交ダンスとオリンピックとは少し意外に思います。
 酒井 実はかなり昔から「社交ダンスがオリンピック種目になる」と言われているんです。子どもたちに社交ダンスを楽しんでもらって、オリンピックの正式種目になったときに、出場できる子が誕生したらうれしいなと思っています。

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聞き手 足立了平新聞部長

世界中で踊れる共通言語
 足立 社交ダンスの魅力はどういった点ですか。
 酒井 まずは音楽に合わせて踊ることが何より楽しいですね。みなさん自分の好きな音楽を聴くと、リズムに乗って体を動かしたくなることがありますよね。それを各自思うままに踊るのではなくて、二人一組になって決められたルールの下、リズムに合わせて自分を表現できるのが社交ダンスです。そして、社交ダンスは他のダンスと違って流派がないので、世界どこでも共通のフィガー(いくつかのステップを連続させたもの)なんです。社交ダンスを勉強すると世界中どこの人とも踊ることができるんですよ。
 足立 グローバルなダンスなのですね。先生が社交ダンスを始められたのはどういったきっかけですか。
 酒井 私はもともと広島大学の総合薬学科で勉強していたのですが、その時に大学のサークルで始めました。その頃はプロになるとは夢にも思っていなかったんですが、ダンスは好きでレッスンは続けていました。医師になってから、ダンスの先生にプロの資格を取ってみないかと誘われて、2002年に筆記と実技の試験に合格してプロになりました。プロになると生徒にダンスを教えることができるようになるので、楽しみの幅が広がりましたね。
 足立 すごいですね。医師と社交ダンスの両立は結構大変じゃないですか?
 酒井 確かに自院での診療の他に病児保育と病院での非常勤の勤務もしながら、ダンスは週2回のグループレッスンと毎日の個人レッスンをしており、忙しい日々です。でも診療が忙しいからこそ、体を動かすことで良いリフレッシュになっているんですよ。
ワクチン接種補助などこども医療の充実を
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パーティーで踊る酒井先生

 足立 医学部の前に総合薬学科を卒業されたと言われましたが。
 酒井 はい。卒業後、薬の研究をしていたのですが、治験研究を通じて医師という仕事に興味を持ち、それに病児保育をやってみたいとの思いから小児科医になろうと医学部を受験しなおしました。
 足立 各地で小児科医不足が深刻ですが、加西市ではいかがですか。
 酒井 小児科を専門とする医院は市内に2軒しかありません。遠くから患者さんが来られることもあるので、小児科医が増えたらもっと受診しやすくなるのに、と感じています。病院の体制も充実が必要です。
 足立 加西市は中学卒業までこども医療の無料化が進んでいます。
 酒井 多くの世帯で中3まで窓口負担が無料なのはとても良いですね。ただ患者さんの中には、中3までは無料なのでちゃんと治療するけれども、高校生になったら来なくなるという方もいます。小児領域でも喘息は慢性疾患であり、継続して診る必要があるので、無料の範囲をもっと広げてほしいですね。それに医療費無料化といってもワクチンは無料ではありません。インフルエンザやおたふくかぜなどは重症化すると後遺症のリスクも高いので、ワクチン接種の補助をもっと広げてほしいです。
 足立 本当におっしゃる通りだと思います。協会も子どもの貧困と健康格差の解消をめざしていますが、これからますます取り組みを強めたいと感じました。ほかに医師として気になっている点はありますか。
 酒井 子どもの肥満が多いのが気になりますね。できれば楽しく踊ってダイエットしてほしいですね。もちろん成人の生活習慣病の予防・改善にも効果が大きいですし。
 足立 先生は健康スポーツ医の資格も取っておられるんですね。
 酒井 ダンスを中心にお話ししましたが、それに限らずありとあらゆる健康相談を受けたいです。子ども−両親−祖父母まで幅広く相談に乗って、めざすはよろず健康相談所です。
健康づくりの輪を広げたい
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インタビュー後に一枚。あなたも始めてみませんか

 足立 最後に先生の将来の夢を教えてください。
 酒井 一つは地域の子どもの健康をこれからもしっかりと守っていくこと。そして「ダンス療法」で、音楽に合わせて踊る楽しみをもっと伝えていきたいです。
 車椅子のおばあちゃんも、楽しい音楽をかけるだけで、少女のような笑顔を見せてくれます。社交ダンスは男女が一組になるので、良い意味で互いに異性を意識して、身だしなみや周囲のことに気を付けるようになって脳も活性化するので、認知症の予防にも役立つと思います。衣装を着るようになると、おしゃれにも気を付けるようになりますし、ダンスを外出の機会にすると高齢者の孤立も防ぐことができるでしょう。社交ダンスをきっかけに、健康促進と社会発展に貢献できると感じています。
 足立 医師の視点で見れば社交ダンスには多くの可能性が広がっているんですね。私も社交ダンスは大学生の時に少しかじったきりでしたが、またチャレンジしてみたい気になってきましたね。本日はどうもありがとうございました。
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