兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2018年1月25日(1867号) ピックアップニュース

阪神・淡路大震災から23年 被災者の生活復興の実現を
借り上げ住宅追い出し裁判の闘い共有

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諏訪山ビーナスブリッジの追悼集会では雨の降りしきる中、地震が起きた5時46分に、150人が追悼と被災者復興を願い鐘をついた

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メモリアル集会で福島の現状を語った斎藤富春氏

 1995年の阪神・淡路大震災から23年を迎えた1月17日。県内各地でメモリアル行事が行われ、参加者は、犠牲者を追悼するとともに、被災者一人ひとりに寄り添った生活復興を実現しようと誓った。震災から20年以上が経過したが、神戸市・西宮市が民間借り上げ復興住宅入居者に対して強制退去を迫り提訴するなど新たな問題が生まれている。勤労会館で行われたメモリアル集会では、借り上げ住宅など、現在も残る課題が報告されるとともに、東日本や熊本など各地の被災地からも現状が報告され、参加者はそれぞれの被災地が抱える課題を共有した。

 メモリアル集会では、主催した復興県民会議の岩田伸彦事務局長が、震災後23年経っても、借り上げ復興住宅や災害援護資金、被災者生活再建支援法の拡充、アスベスト等、さまざまな課題が残っていると報告。
 特に借り上げ復興住宅では、神戸市と西宮市が入居時に20年という入居期限の説明を行っていなかったにもかかわらず、退去を求めて入居者を提訴している。岩田氏は、兵庫県や宝塚市・伊丹市は入居継続を認めている一方、入居者を強制的に退去させようとする神戸市と西宮市の姿勢は、被災住民の居住権を侵害するものと強く批判した。
 また、潜伏期間が30〜40年であるアスベスト飛散による健康被害も今後の増加が予想されるとした。
 協会は、アスベストによる健康被害に関して、昨年、全市町の肺がん検診の問診票を取り寄せ調査を行い、アスベスト検診の現状と課題を分析している。
談話 健康守る地域コミュニティー
理事長  西山 裕康
1867_09.jpg  震災23年目を迎えた。当時の自身の年齢を思い返せば、年月の流れにはっとするとともに、記憶には濃淡を感じる。被災者にとっては、忘れられない記憶、忘れたい記憶、忘れたくない記憶があり、その上、現在も日々の生活に大きく傷跡を残す人々が少なくない。
 今、神戸市と西宮市で、借り上げ期間20年を理由に、高齢化した被災者と家族らを「借り上げ公営住宅」から追い出す裁判が闘われている。自治体が被災者を訴えるという異常事態であり、今後も増える可能性がある。
 市側は「個別事情に配慮しないのは恣意的な判断や、強硬な申し出に対する不合理な譲歩を防ぐため」「入居者が形成してきたコミュニティーの実態は抽象的で評価に値しない」と強弁している。行政には「恣意的な判断」や「不合理な譲歩」を排除して、一人ひとりの状況に柔軟に対応する意志と能力はないのだろうか。
 入居者の転居は、主治医、医療スタッフなど医療や介護環境の変化により、慢性疾患の悪化や急激な重症化リスクをもたらす。また、生活環境の変更や地域コミュニティーからの放出は、人とのコミュニケーションの喪失につながり、肉体的、精神的活動を極端に低下させ悪循環を生み出す。これらは、私たちが日々診療する患者さんや自分自身に置き換えてみれば自明であり、抽象的で目に見えなくても、価値があり大事にすべきものの一つである。
 私たちは地域医療を支え、住民の命と健康を守る団体として、兵庫だけでなく、日本全国の被災地・被災者への支援活動を継続していきたい。

阪神・淡路大震災メモリアル特集 多彩な取り組みで全国の被災者と交流
被災者に寄りそった生業復興を

 阪神・淡路大震災23年にあたり、1月17日に行われたメモリアル企画の模様を紹介する。

〈震災23年メモリアル集会〉
借上げ住宅追い出し許さない
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248人が参加し、借り上げ住宅入居者の継続入居などを求めるアピールを採択した

 神戸市勤労会館で行われた「阪神・淡路大震災23年メモリアル集会」には、248人が参加。保団連から住江憲勇会長、協会からは西山裕康理事長、加藤擁一・足立了平両副理事長が参加した。主催は、阪神・淡路大震災救援・復興県民会議(復興県民会議、合志至誠兵庫協会名誉理事長が代表委員)。
 住江憲勇会長が全国災対連(災害被害者支援と災害対策改善を求める全国連絡会)代表世話人として連帯のあいさつを行い、「23年が経つ今も、行政による借り上げ復興住宅からの追い出し問題が被災者を苦しめている。避難所や仮設住宅から終の住まいとしてやっとの思いで移り住んできた被災者を無理やり追い出すのは、基本的人権を無視したもので、断じて許されない」と批判。そのような中でも、兵庫県の被災者・県民が運動を続けてきたからこそ、被災者生活再建支援法ができ、十分ではないものの東日本大震災や熊本地震の被災者の生活再建に役立っているとした。一方で、東日本大震災以後、孤独死が相次ぐなど、行政が被災者に寄り添っていない現実を指摘。生業を再建させてこその復興だと、政府の復興政策を批判した。
 ひょうご震災復興借上げ住宅協議会運営委員の段野太一氏は、阪神・淡路大震災被災地報告として「『追出し裁判』にみる借上げ住宅居住者への冷酷な行政姿勢」をテーマに報告。兵庫県では入居者と自治体の話し合いにより、希望者の継続入居が決定した一方で、神戸市と西宮市が継続入居を求める被災者を相手取って訴訟を起こしたことを批判。神戸市の7世帯の裁判では、一人は本人の意見陳述が認められないまま不当判決が下されたことを紹介した。
 昨年7月の九州北部豪雨の被災地からは、九州北部豪雨災害救援共同センター事務局長代行の横溝良久氏が、被害の概要と行政への支援要請について報告。被災地では依然生活再建への見通しは立っておらず、復興へ向けたいっそうの公的支援が必要だと訴えた。行政への要請により、これまで被災者の自己負担としていた大規模半壊住宅の解体費用も市の全額負担となるなどの成果が出たと語った。
 参加者は、希望者に借り上げ公営住宅入居継続を認めること、福島原発事故被害者のくらしの再建のために国と東電は責任を果たすこと、被災者生活再建支援法を見直し、支援金を最高500万円に引き上げることなどを求めるアピールを採択した。

記念講演
分断乗り越え「福島切り捨て」跳ね返す
 記念講演では、ふくしま復興共同センター代表委員の斎藤富春氏が、「原発事故から6年10カ月 福島の現状と課題」と題し、東日本大震災による福島第一原発事故からの復興について講演した。
 斎藤氏は事故を起こした福島第一原発の現状について、高線量のため、人間はおろかロボットを用いても原子炉周辺の把握は困難である上、増え続ける汚染水問題も凍土壁による遮水効果は不十分であり、廃炉への見通しは立っていないとした。
 また、国や県が公表する避難者数は「自主避難者」や避難先で公営住宅に入居した人を除外しており、実態より3万人以上少なく発表されていると指摘した。
 福島が抱える課題としては、健康調査で発見されている甲状腺がんについて、がんの原因を論じるのではなく、子どもたちの健康のため継続的な健康診断や医療体制の充実こそが重要だとした。そのほかにも原発事故により、「避難する・しない」や「地元食材を食べる・食べない」など、県民にさまざまな対立・分断が持ち込まれたが、この原因は加害者である国と東電にあることは明確であり、県民が連帯することで乗り越えなければならないとした。
 最後に、事故から6年以上が経過し、国や東電は次々に賠償・支援の打ち切りを進めているが、司法の力で国と東電の法的責任を認めさせる「生業訴訟」の闘争、原発ゼロを求める署名といった大運動で、「福島切り捨て政治」を跳ね返す闘いを続けることが大切だと呼びかけた。
〈長田ウォーク〉
長田の人・街・ くらしの真の復興を
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長田の町を歩いて、復興のあり方とは何か考えた

 17日午前には、協会神戸支部も参加する震災復興長田の会の主催で「メモリアルのつどい ひと・街・くらし長田ウォーク」が、長田区内で行われ、88人が参加した。
 参加者は、震災時には避難所であった旧二葉小学校を出発し、新長田駅南の再開発地域を歩き、住民から話を聞いた。
 再開発によって商店街は巨大なショッピングモールに変わったが、街はかつてのにぎわいを取り戻していない。商店街でイベントを開催していた商店主は「ぜひ長田でお金を使って帰ってほしい。そうでないと復興はない」と語った。
 ウォーク終了後、熊本地震・東日本大震災被災地からの参加者が発言。熊本では、市内でいまだ1万世帯以上が仮設住まいにもかかわらず医療費窓口負担免除措置が打ち切られたこと、宮城県では災害公営住宅の家賃減免措置が打ち切られようとしていることなど、被災者の命や住まいが脅かされ続けていることが報告された。
〈市民追悼のつどい〉
震災犠牲者に思い寄せて
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「神戸・希望の鐘」の両側で二胡を演奏して犠牲者を追悼

 震災犠牲者の追悼式が、1月17日に諏訪山ビーナスブリッジと神戸市勤労会館で行われ、それぞれ150人、120人が集まった。
 雨の降りしきる中、早朝にビーナスブリッジに集まった参加者は、震災発生時刻である午前5時46分に合わせて黙祷を捧げ、被災者の生活復興を願って作られた「神戸・希望の鐘」をつき、震災犠牲者を追悼した。主催者は阪神・淡路大震災被災者ネットワーク。
 神戸市勤労会館で午前中に開催されたつどいでは、声明(しょうみょう)や琵琶の演奏などによる法要を行い、犠牲者を追悼した。主催者を代表し、被災者の巡回相談を23年間続けている安田秋成氏(元県会議員)が、神戸市の地震想定が不十分であったため、甚大な被害が出たことを教訓に、行政の災害対策のさらなる充実を求めようとあいさつした。
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