2018年2月15日(1869号) ピックアップニュース
燭心
医療にベストチョイスはない。医師が治療を選択する時は、患者の体に与える侵襲と治療効果を天秤にかけ、よりベターと思われる方法を選択するしかないからである。「病気」という体を蝕む厄介なものを相手にし、それを抱えている「人」というこれまた同じものが二つとない多様性のある生物を相手にするため、何通りもの解決方法が考えられる。それらを分かりやすく丁寧に説明し、患者の同意を得る▼そのように決めた治療方針であっても、本当にこれで良かったのか、もっと良い方法があったのではないのかと双方に悔いが残ることも少なくない。肉体的にも精神的にもまったく侵襲を伴わずに完全治癒する疾患などほとんどないのだから▼翻って、安倍総理の常套句は「この道しかない」である。政治にとって外交などの他の方法を示さずに「この道しかない」を掲げるのは敗北だ。沖縄県名護市長選で現職の稲嶺氏が敗れた。勝利したのは、辺野古の基地建設には一切触れず、政府からの交付金をあてにした経済活性を訴え続けた政権推薦の渡具知氏。政権は米軍普天間飛行場の辺野古移設計画を「唯一の解決策」とする方針を堅持してきた▼闘っても基地建設が強行され、経済の低迷が続く状況に疲れた、名護市民のあきらめにも似た今回の選択を責めることはできない。問われるのは金で横っ面を叩く、なりふり構わぬ政権の態度である。再編交付金なる打出の小槌はこの道しかないベストな処方なのか。患部はさらに肥大する。(九)