兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2018年3月05日(1871号) ピックアップニュース

2018年度 診療報酬改定答申 談話

 2018年度診療報酬改定について、中央社会保険医療協議会(中医協)は2月7日、厚生労働大臣に答申を行った。改定率および改定内容に対する医科・歯科それぞれの談話を掲載する。
医科

「かかりつけ医」誘導に疑問

研究部長  清水 映二

本体プラスも不十分な改定率
 政府は昨年末、今次診療報酬改定を全体1.19%のマイナス改定とすることを発表した。医療機関の厳しい経営が依然として続くなか、協会・保団連が求めてきた「技術料を中心とした10%引き上げ」には遠く及ばず、改めて強く抗議したい。
 本体部分はわずかにプラス0.55%(医科は0.63%)となる。財務省を中心に本体マイナスの圧力も高まっていたなか、協会・保団連など医療現場からの厳しい批判と政府・厚労省などへの粘り強い要請行動による一定の成果と言える。
 ただし、赤字経営の一般診療所が25.7%に及ぶなど(2016年度医療経済実態調査)、疲弊した医療機関経営の改善にはほど遠いプラス幅である。
 中医協が2月7日に答申した改定内容では、「外来医療の機能分化」「かかりつけ医機能の評価」や、「医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価」などが掲げられている。前回改定に続き、「入院から在宅」「医療から介護」など、医療費抑制のための改定メニューが特徴と言える。
「かかりつけ医機能」に重点
 「かかりつけ医機能」を持つ医療機関における初診時の診療機能評価として、「機能強化加算」が新設される。地域包括診療加算、地域包括診療料、小児かかりつけ診療料、在宅時医学総合管理料(在宅療養支援診療所または同病院に限る)等を「かかりつけ医機能に係る診療報酬」だとみなして、これらを届出している診療所または200床未満の病院で届出の上、初診料に加算できる。
 初診時の加算が新設されること自体には一定の評価も予想されるが、同じ診療を行うにもかかわらず届出している点数によって基本診療料を差別化することで、政府が一方的に定義づける「かかりつけ医機能」に誘導するものだ。
 本来「かかりつけ医」は、フリーアクセスのもとで患者が自由に選択するものであり、特定の点数を届出している医療機関を政府の都合で「かかりつけ医」と定義するのは逆転した話だ。安定した医療機関経営による地域医療の充実のためにも、基準を設けることなく初・再診料を引き上げることが必要だ。
オンライン診療を導入
 従来からへき地や離島など通院が困難な条件下で認められていた遠隔診療が、情報通信機器を活用したオンライン診療として幅広く認められる。外来医療で「オンライン診療料」(70点)やオンライン医学管理料(100点)、在宅医療で「在宅時医学総合管理料 オンライン在宅管理料」(100点)が新設される。
 それぞれ、「対面診療の原則の上で、有効性や安全性等への配慮を含む一定の要件を満たすことを前提」としているが、オンライン診療に関するガイドラインも出されていないなか、医学管理におけるオンライン診療の有効性など、エビデンス評価が不十分なままでの安易で拙速な保険導入だ。
7対1入院料要件をいっそう厳格化
 一般病棟は、従来の7対1~15対1入院基本料が、急性期一般入院料1~7と地域一般入院料1~3に再編される。入院患者の「重症度、医療・看護必要度」の割合要件をさらに厳格化して看護配置7対1相当の入院料1の病床を絞りこむ目論見だが、医療機関にとっては入院患者の選別を強いられるような内容だ。
要介護者への維持期リハ打ち切り
 これまで延長されていた要介護者等への維持期リハビリが、2019年3月末で打ち切られる。
 医療保険によるリハビリは、身体機能の回復とともに機能維持の役割も担っており、介護保険によるリハビリで代替できるものではない。算定日数上限による機械的な打ち切りは撤回すべきだ。
居住場所・人数での差別拡大
 前回改定で在医総管等に導入された「単一建物診療患者」の点数体系について、患者数によって点数が異なるという複雑さと不合理さに医療現場から批判が集中したが、さらに在宅患者訪問薬剤管理指導料などにも拡大される。
 併設する有料老人ホーム等の介護施設入所中の患者への訪問診療料は、144点へと大幅に引き下げられる。
抗菌薬適正使用を要件化
 地域包括診療加算や地域包括診療料、小児科外来診療料、小児かかりつけ診療料などの算定要件に、「抗菌薬の適正使用に関する普及啓発に努めていること及び『抗微生物薬適正使用の手引き』に則した治療手順等、抗菌薬の適正使用に資する診療を行うこと」が追加される。
 抗菌薬適正使用のあり方については、協会でも臨床研究会を継続してきたが、医師の裁量があるなか、診療報酬で一律に制限することは到底認められない。
複数医療機関の訪問診療など改善も
 これまで認められていなかった同一患者への複数医療機関による訪問診療料の算定が、在医総管等を算定する医療機関からの依頼を受けた場合に認められる。協会・保団連は医療機関からの要求をもとに、再三にわたり厚労省へ改善要請してきた。
 その他、特別養護老人ホーム入所患者を看取った場合のターミナルケア加算が算定可能となるほか、医科・歯科間での診療情報や処方内容等の情報共有の評価として診療情報連携共有料(120点)が新設されるなど、評価すべき内容もみられる。
 今後、3月に新点数の正式内容が告示・通知されるが、協会は患者窓口負担軽減とともに、今次改定の不合理是正運動に取り組んでいく。
歯科

運動による改善はみられるものの歯科医療の充実にはほど遠い

歯科部会長  吉岡 正雄

 協会歯科部会は、歯科医療危機を打開し、良質な歯科医療を国民に提供できるよう、診療報酬の10%以上の引き上げと不合理是正を求めて厚労省や国会議員・政党などへの要請行動とともに、会員から寄せられた署名、患者・国民から寄せられた「保険で良い歯科医療」を求める1万筆を超える署名を提出するなどの運動を積み重ねてきた。
 その結果、当初マイナス改定と言われていた今回の改定が、歯科で0.69%とわずかではあるもののプラス改定となったことは、運動の一定の成果である。しかし同時に今回の改定は、歯科医療機関の経営改善にはほど遠いものであり、歯科医療費の総枠拡大と基礎的技術料の大幅な引き上げを求め、引き続き運動を強めていくものである。
多職種連携等一部で要求反映
 協会の運動により歯科医師の要求が反映され、一部改善されたものがある。
 例えば、医科・歯科連携や多職種連携、在宅医療を推進するためとして、医科医療機関に「照会」した際の評価、歯科衛生士を帯同して歯科訪問診療を行った場合の評価、多職種チームとの連携の評価などが行われた。
 また、保団連近畿ブロックとして繰り返し要請してきた「歯科治療総合医療管理料」「在宅患者歯科治療総合医療管理料」の歯科衛生士の人員要件の常勤換算への見直し、麻酔薬剤等の算定方法の見直し、検査の新設や保険適用の拡大、歯科医療の質を担保する技術料の若干の引き上げなども行われた。
「か強診」の施設基準強化
 一方、今回の改定は、「地域包括ケア」の推進を口実に、「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」の施設基準が強化された。そもそも多くの歯科医師は、地域でかかりつけ歯科医師の役割を担っているのが実情であり、施設基準で選別するのは問題である。それをいっそう強化する今回の改定は、矛盾をさらに広げることになり、容認できない。
 「か強診」の届出医療機関で点数が加算される処置は全ての歯科医療機関で提供可能な医療行為であるが、高齢化が進み「地域包括ケア」が求められているとされる地域ほど、病院歯科が近隣になく、歯科衛生士の雇用も困難な場合が多いため、か強診の届け出を行うことが困難になる。
 施設基準の撤廃とともに、すべての歯科医師が地域で果たしている役割にふさわしい診療報酬を求める。
院内感染対策基本診療料の要件に
 基本診療料に院内感染対策に関する施設基準が導入され、施設基準が満たせない場合は基本診療料が減算されることになった。
 基本診療料に格差をつける今回の改定は診療報酬のあり方を歪める前代未聞の暴挙であり、新たな仕組みを押しつけることに反対である。
訪衛指などに「単一建物」
 訪問歯科衛生指導料と居宅療養指導管理に、「単一建物」の考え方が持ちこまれた。患者の状態は一人ひとり異なっており、同じ建物での月単位の人数によって点数を細分化するやり方は合理的根拠に乏しく撤回すべきである。さらに、当該月の診療が終わるまで点数が確定しないケースが出てくるなど現場に混乱をもたらすことが予想される。
 「保険でより良い歯科医療を」兵庫連絡会とともに、この間取り組んできた歯科技工問題については、有床義歯内面適合法の技工加算の新設や、有床義歯などの技術料の若干の引き上げなどが行われたが、補綴関連の評価は依然として低く、抜本的解決に至っていない。
 協会は、今回の改定の不合理是正を求めるとともに、今後も窓口負担軽減、保険範囲の拡大と診療報酬の改善へ、国民とともに「保険でより良い歯科医療」を求める運動に継続して取り組んでいく。
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