兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2018年4月05日(1874号) ピックアップニュース

特集(1) 診療報酬改定でどうなる? − 機能強化加算・在宅医療 −
休日・夜間対応を迫る機能強化加算
宝塚市・良元診療所 脇野耕一先生

 診療報酬改定で、4月から医療現場はどうなるのか。シリーズで特集する。第1回目は良元診療所の脇野耕一先生(宝塚市)に、機能強化加算や在宅医療についてインタビューした。(聞き手は編集部)

1874_05.jpg  −今回の改定は、数字上は医科で0.63%のプラス改定と言われていますが、先生のご実感ではいかがですか。
 全体としてはプラス改定の実感はありません。新設された初診料の「機能強化加算」も連絡体制などハードルが高く、喜べる改定ではありません。
 −その加算はどのような内容なのでしょう。
 夜間・休日対応の医院は「かかりつけ医機能」を持つとして、加算を算定できるようになりました。私の医院は強化型在宅療養支援診療所(連携型)の施設基準を満たしているので、算定可能です。しかし、当院で連絡を受ける常勤医は私一人であり、初診を突破口にして、仮に全外来患者の夜間・休日対応を受けることになると、大変な負担です。しかも診療所ではなく自宅で連絡を受けても、カルテもないなかで個別の患者さんの状況を適切に把握し、対処するのは難しいと感じています。
 医師の過重労働を是正する「医師の働き方改革」に逆行しないようにどうしたらよいか、スタッフの協力を得ることができるかどうかが前提となります。
 −引き続き「入院から在宅へ」の転換が打ち出されていますが、在宅医療への影響はいかがでしょうか。
 在宅患者訪問診療料が(Ⅰ)と(Ⅱ)に区分され、(Ⅰ)はさらに「1」と「2」に、(Ⅱ)も「注1のイ」と「ロ」に区分されるなど、ますます複雑化されました。
 また、在宅時医学総合管理料で、前回の改定で難病等の「別に定める状態の患者」と「それ以外の患者」に区分され、私の医院では全体として引き下げられました。今回は、さらに月2回以上訪問診療を行っている「それ以外の患者」で100点引き下げられました。一方で、「要介護2以上に該当する等一定の状態の患者」に包括的支援加算(150点)が新設されましたが、「別に定める状態の患者」が除外されています。往診料は「可及的速やかに」患家に赴き診察を行った場合に算定できると明確化されました。また、支援診の要件である緊急往診等が「標榜時間に含まれる場合は算定できない」とされました。評価して引き上げるというより複雑化して足踏みさせているというのが実感です。
 オンライン診療料も新設されましたが、在宅診療をされている診療所で、私の知っている限りでは始めてみようというところはありません。新しい設備も必要になるので、誰のための何のための改定か首をかしげたくなります。
 −国の医療政策の方向性について一言お願いします。
 安倍政権下では、「改革」の名の下で、社会保障費の削減が進められています。今回の改定について「モノからヒトへ」の評価が一部行われたという意見もありますが、検体採取料をわずかに引き上げた程度です。本当に人にお金をかけるのであれば、国民の健康を第一に考えて、健康格差を是正し、安心できる超高齢社会の未来をひらく施策を抜本的に拡充することが必要です。この医院の建物もそろそろ補修しなければならないのですが、その原資も診療報酬です。新しい機械の導入も低診療報酬の下ではままなりません。地域の患者さんのため、医療従事者のためにも、協会が行っている診療報酬引き上げを求める運動の重要性はますます高まっていると感じます。
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