2018年4月15日(1875号) ピックアップニュース
燭心
この年になると老後の自分も想像せざるを得ない。一人暮らしや老々夫婦を診る機会も多いが、とても他人事とは思えない▼患者さんには、心身の老化を予防するために、外に出て散歩をすること、他人と話をすることの二つを勧めている▼前者は体と五感の鍛錬である。「日差しが心地よく暖かい」「どこかで犬が鳴いている」「これは 沈丁花 の香りだろうか」「前から自転車が来たな」...第六感も働けばなお良いだろう▼一方、後者の相手は、夫婦のように気心が知れすぎていてはかえって良くない。言いっぱなしではなく、よく聞いて、考えて、言うべきことを選択する関係性が大事である▼日本は、大家族制から核家族中心になって歴史が浅く、毎週ホームパーティを開くわけでもなく、ベビーシッターに子どもを預けてショーを観にいくこともなく、慣習的にも社会制度としても個人主義の取り扱いが未成熟である▼ところで、医師(特に男性?)は多職種との付き合いが多くない。趣味のゴルフ仲間、散髪屋のマスター、飲み屋のおねーさん、ぐらいだろうか。時として社会的地位やプライドも邪魔になる。隣近所に心許せるコミュニティは少なく、引退後に形成するのも難しいのではないだろうか▼老後の人生、特にお一人様になってからは、より多くのコミュニティに属していることが大事である。蛇足だが、夫婦の間が絶えず新鮮で(適度の緊張感を伴い)、家庭外のコミュニケーションが多い人は、別の心配をした方がいい(空)