兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2018年4月15日(1875号) ピックアップニュース

特集 診療報酬改定でどうなる? −(2)入院医療−
入院医療 いっそう歪める改定 地域の実情踏まえ必要な入院できる体系に

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写真右から、吉岡巌先生(明石市・大久保病院理事長)、佐々木健陽先生(西宮市・西宮渡辺病院院長)、松井阴治先生(淡路市・順心淡路病院院長)

 今次診療報酬が、医療現場にどのような影響を及ぼすのか。特集の第2回は、入院医療に関する改定内容とその影響について、明石市・大久保病院理事長の吉岡巌先生、西宮市・西宮渡辺病院院長の佐々木健陽先生、淡路市・順心淡路病院院長の松井阴治先生の鼎談を掲載する。

入院基本料
大きく再編
 吉岡 今回の改定では、入院基本料の枠組みが大きく再編されました。一般病棟では、看護配置7対1病棟は急性期一般入院料1に、10対1は同入院料2〜7,13対1は地域一般入院料1・2に、15対1は同入院料3になります。療養病棟は、25対1が廃止され20対1に一本化されました。全体として、入院医療を絞りこみ、できるだけ在宅へ誘導する方針です。
 佐々木 7対1を中心とした急性期病床削減の意図から、「重症度、医療・看護必要度」(以下、「必要度」)の割合が高くされています。7対1では従来の25%以上から30%以上になりました。同時に、「割合の下回り幅が1割以内なら3カ月までは猶予」というルールも撤廃です。「必要度」については評価項目も変更されましたので、病院によって影響は異なるでしょうが、厳しい改定と言えます。
 吉岡 「在宅復帰率」の要件も厳しくなっています。7対1では、従来の75%以上から80%以上になりました。
 松井 急性期後の医療や在宅患者の急性増悪時の医療などを目的に、2014年に導入された地域包括ケア病棟でも、在宅復帰率の要件が強化されています。復帰率70%以上の要件は変わりませんが、介護老人保健施設と療養病棟への退院・転棟は計算対象から外されてしまいました。本来なら、地域包括ケア病棟での治療後に療養病棟へ移ったり、介護老健施設入所の患者さんの具合が悪くなって地域包括ケア病棟へ移った後、また介護老健施設へ戻ったりというのは、機能的にも適切だと思うのですが...。地域包括ケア病棟は県下でも増えていますが、多くの病院で影響が出そうです。
「速やかな退院」
さらに迫られる
 佐々木 ほかに、一般病棟では「平均在院日数」要件(7対1で18日、10対1で21日など)や、地域包括ケア病棟では90日の入院制限があります。病院としては、「必要度」や「平均在院日数」、「在宅復帰率」など施設基準の観点から、「いつまで入院が必要な患者か」「退院後に在宅へ戻れる患者か」など、入院前の段階で患者さんの状態を見極めていかざるを得ません。
 松井 入院してからも、速やかに退院・退棟してもらうことがより迫られていますが、医師の立場からすれば、もう少し入院させて治療を続けたいケースもあります。無理に退院させても、本来は入院医療が必要な状態の患者さんを在宅で診てくれる地域医療の体制は、地域によっても大きく異なります。
 例えば私のところの淡路島では、診療所の新規開業も少なく、限られた医療機関で広域の在宅医療圏をカバーするのはとても大変です。
 吉岡 政府は「入院から在宅」と言って低医療費政策を推し進めながら、「医療機能の分化」の名の下で、形式的に「急性期」や「回復期」「慢性期」といった枠組みを各医療機関にはめようとします。しかし、それぞれの地域や医療現場の実情を踏まえたものとは言いがたく、患者が必要な入院医療を受ける条件は狭まっています。
 入院医療で起こっていることを、私たち病院関係者が、在宅医療を担う地域の診療所と共に声を上げて知らせていくことが大切ですね。
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