2018年4月25日(1876号) ピックアップニュース
女医の会 インタビュー23
女性医師が働きやすい環境作りを支援 加古川市 渡辺 弥生
2000年から医師国家試験受験者に占める女性の割合が30%を超え、女性医師が働きやすい環境整備はますます重要になっています。2005年、日本医師会が、育児中も安心して働ける環境改善をめざし、男女共同参画委員会を設置し、フォーラムを実施したのを受け、兵庫県でも2006年から女性医師の会、女性医師委員会(現在の男女共同参画推進委員会)を立ち上げ、私も委員となりました。
女性医師の会は女性医師だけでなく男性医師、研修医、医師会非入会医師にも入っていただく会で、現在の会員は約400人です。医師会委員会の男女共同参画推進委員会では、女性医師の会役員が委員を務め、ここで事業計画などを協議し、遂行しています。
現場に出向き女性医師の要望聞く
会を立ち上げ、まず、年1回の女性医師の会フォーラムと研修会を計画し実行してきました。
会ができても、現場で何が求められているのか、まずは直接、足を運ばないと何も分かりません。そこで、5年間かけて各地域の女性医師と懇談し、いただいた要望を委員会で検討するようにしました。この懇談は、姫路・淡路・西宮・北播磨・加古川・東灘区・須磨区など各地域での女性医師の会の立ち上げにもつながっています。
次に、研修医・勤務医の方々の声を聞くために、病院訪問を進めています。これまでに、研修医が多い14病院を訪問し、環境改善に向けてご意見を伺いました。若い人のエネルギーはすごいですね。率直にいろんな意見を言われ、大変参考になっています。
2010年から4年間は、県医師会の理事と同時に、日医の女性医師支援委員会委員になり、女性医師バンクで求職者と求人を結ぶコーディネーターをしました。医師側と病院側それぞれの希望を聞き調整するのは、難しいことも多かったですが、その経験は、県内で女性医師支援を進める上で大変役に立ちましたし、各地の先生とも知り合いになり、刺激を受けました。
会では、年に2回、ニュースレターを発行しています。私はずっと広報委員をやってきましたので、自分で文章を書き、編集もしました。文章を書くのは好きなんです。先生方には医師会等から多くの書類が配られているので、なかなか全部読んでいただけません。裏表2ページに内容を凝縮し、一目でテーマが分かり、読んでいただけるよう工夫しました。
若い先生に対しては、神戸大学と兵庫医科大学の卒業生に向けてのメッセージを書き、卒業式に入会申込書をつけて配布しています。女性教授の名前も掲載するなど工夫しました。
このような取り組みを通じて、徐々に会の活動が認知されるようになりました。女性医師が働きやすい職場環境は、男性医師にとっても働きやすい環境となるはずです。
再就業・育児支援の事業ご利用を
各病院に配布している産休・育休に入る先生へ支援制度を紹介する資料
女性医師再就業支援事業は、結婚・出産で離・退職した女性医師で、県内の医療機関へ勤務する意思がある方が対象で、病院で80時間の研修が受けられます。ベビーシッター料金の一部負担は、勤務医・研修医が時間外勤務でシッターを利用した時の費用を一部負担するもので、好評です。
これらの制度の情報を掲載した冊子(右)を作成し、病院事務局においていただき、産休・育休に入られる先生にお渡しいただいています。病院の先生方からの要望で作成したものです。お休み中は情報が不足し、孤立感を持つ先生もあると聞いていますので、少しでも情報提供になればと考えています。
私も2人の子を育ててきましたが、働きながらの子育ては本当に大変でした。育児と仕事の両立で悩んでおられる先生はぜひともご利用いただきたいと思います。
女性医師のパイオニアとして
90年に私が加古川市加古郡医師会の理事になったとき、他に女性はいなくて、おそらく私が初の郡市区医師会女性理事ではなかったかと思います。最初に理事会に行くと、皆から「なんで女性がいるんや」と、まるで異邦人を見るような目で見られました。しかし、徐々に普通に接してくださるようになり、会長からいてもらってよかったと言われるようになりました。93年に県医師会代議員となったときも、周りは皆男性。その後、少しずつ女性が増え、今はずいぶん多くなりましたね。
女性医師の会も今は、ほとんど若い先生方にお任せしています。女性医師の支援・育成に熱心に取り組まれている病院医師を表彰する「イクボス大賞」創設など、新しい提案をしていただいていますよ。
保険医協会には、大変お世話になっています。女性医師の会のこのインタビューコーナーはいつも楽しみに拝見しています。保険医年金も良い制度ですし、開業直後、大量の減点をされて困っていたときに、協会が相談にのってくださり、再審査請求の方法を教えていただきました。あのまま何もしなかったら、大変なことになっていたと思います。今後も、活動に期待しています。
(聞き手 編集部)