2018年4月25日(1876号) ピックアップニュース
九州北部豪雨 被災地はいま 特別インタビュー
まだまだ遠い復興
福岡県朝倉市 月俣 博通先生
【つきまた ひろみち】1950年生まれ、78年九州歯科大学卒業、82年3月朝倉市で月俣歯科開業
後継者おらず生業再建できず
加藤 先生には、昨年7月の豪雨直後に兵庫協会が訪問した際にも案内いただきました。本日は、現在の状況をお聞きしたいと思います。月俣 まだ、復興にはほど遠い状況です。被害の形も程度も、さまざまで、被害規模が全壊なのか床下浸水なのか。被害が自宅なのか、農地なのか、事業所なのか。再建費用をどうするのか。それぞれ違う上、被害地域が広範囲に点在しています。
加藤 先ほど市内をご案内いただきましたが、農地や公園、川べりなどあちこちに水害の爪痕が残っており、土砂が入り込んだままの民家や基礎が崩れた学校の体育館などもそのままで、復旧にまだまだ時間がかかるなという印象を持ちました。
月俣 流木は取り除かれていますが、それ以上はなかなか進んでいません。
山間部では山の斜面が崩れ、住宅が全てつぶされてしまいました。住民は高齢者が多く、住居をなくして、途方にくれています。山のダムの上にある私の実家付近でも集落が丸ごと被害に遭ったので、今は、みんなで仮設住宅に入居し、移転先を行政に要望しているところです。まだ集落のみんなで新しい生活をしようという展望があるので、ましかもしれません。
月俣 知り合いの高齢の女性も、一人で住んでいた家が全壊してしまい、再建に800万円かかると言われたそうです。子どもが帰ってくるあてがあれば、再建しようとなりますが、そのあてもなく、今は娘夫婦の家におられます。本当は家に帰りたいけれど、なかなか難しいようです。
加藤 やはり元の地域で暮らしたいという要求がありますよね。
医療機関も何軒か被災されたと聞きましたが、いかがですか。
月俣 床上浸水や断水で透析治療ができなくなるなどの被害を受けた医療機関がありましたが、大体10日ほどで通常の診療に戻ることができたと聞いています。ただ、被害に遭われた先生の一人は、高齢で後継ぎもいないからと廃業されてしまいました。
加藤 阪神・淡路大震災でも、そういう方が多かったです。地域の人にとって、頼りにしていた先生が突然いなくなりますので大変です。
泥をかぶったままの農地が目に付きましたが、農家の方々はいかがでしょう。
月俣 公的支援があるとはいえ、たとえば田畑が被害を受けて、補修に100万円かかるとすると、20〜30万円は自己負担になると聞きます。この辺りは、柿等の果物が名産品で、山の中に果樹園が多くあるのですが、畑まで行く道は私道なので、土砂の撤去や再整備は個人負担ですから、どうしようもないという話も聞きます。ここでも、高齢で後継ぎもいない人はあきらめていますね。
まず話を聞き心のケアから
月俣 水害直後から、私も避難所を回っています。当初、役所にも情報が全然ありませんでしたが、待っておれないと「必要なら使ってください」と先に歯ブラシなどを持っていきました。被災者の方が一番望んでいることは、話を聞いてほしいということだと思います。「怖かった」「あのとき、あそこの人はこうやって逃げたらしい」などの経験を、外部の人に訴えることで、ストレスを解消できるそうです。避難所で全く噛めない状態の人でも、まずは話をしたいようでした。
災害時だけでなく、普段の診療でも、歯科医師には心理的ケアの知識が絶対必要です。そう考え、私は60歳を過ぎてから、放送大学で心理学の勉強をして、このたび認定心理士の資格を得ました。
加藤 同感です。災害後は心のケアが大事と言われます。特に復興格差が出てくると、被災者の方はうつ病やアルコール依存症になりやすいと言われます。
加えて、災害時の口腔ケアの重要性についての認識が広がっていると思います。阪神・淡路大震災では、口腔ケアができていなかったことによる誤嚥性肺炎が多発しました。熊本地震では、歯科医師会も口腔ケアにかなり力を入れ、ずいぶん減ったそうです。
改善求め声上げる大切さを
加藤 住民の方々の生活や生業再建について、国からの支援が乏しいのが問題ですね。「私有財産は自己責任」というのが阪神・淡路大震災から一貫した政府の態度で、被災者生活再建支援法により、全壊の住宅には最高300万円までの支援が出るようにはなりましたが、半壊や一部損壊は対象外ですし、住宅でない店舗や田畑には適用がありません。国に改善を求めていく必要があり、声を上げなければいけません。月俣 本当ですね。私は、放置されていた山林の対応を市に求めたり、事故が起こるととんでもない被害をもたらす玄海原発の運転差し止めを求める訴訟の原告になったりと、おかしいと思ったことに対して、それを変えるため、できるだけの行動をしてきたつもりです。
ただ、今の若い人たちと話をすると、皆おかしいと思っていても、意見を言ったらにらまれるのではと気にして、言えないんですね。
かつて日本が戦争に突入していったとき、内心では戦争に反対していた人たちも、声を上げられずに流されてしまいました。そのことを考えても、若い人たちにはもう少し自分の意見を言い、一歩踏み出せと声を大にして言いたいですね。
加藤 大事なことです。災害対策でも、被災者の声をもとにした運動の積み重ねが政治を変えてきました。署名などいろいろな運動の帰結として、被災者再建支援法ができました。その土台をもとに、さらに充実を求めていく必要があります。あきらめずに、こつこつと声を上げ続けることが大事だと思っています。本日はありがとうございました。
JA筑前あさくら&西日本新聞共同企画
福岡県歯科保険医協会・福岡県保険医協会 後援
1口10,000円の"志縁"金のうち、約3,000円分をJA筑前あさくらの農産物・加工品などの返礼品代、残り約7,000円を再建に向けて立ち上がる農家のための基金に充てます。
返礼品例:米・梨・イチジク・柿・加工品セットなど
【お申し込み方法】「志縁プロジェクト」と検索し、西日本新聞の特設ホームページから申込書をダウンロードするか、JA筑前あさくらへ住所・氏名・電話番号を連絡し、申込書を取り寄せてください。
JA筑前あさくら
電話:0946-23-8059 FAX:0946-24-8287
メール:shien@asakura-fk-ja.or.jp
福岡県歯科保険医協会・福岡県保険医協会 後援
九州北部豪雨被災地 "志縁"プロジェクト
4月〜9月まで1口10,000円の"志縁"金のうち、約3,000円分をJA筑前あさくらの農産物・加工品などの返礼品代、残り約7,000円を再建に向けて立ち上がる農家のための基金に充てます。
返礼品例:米・梨・イチジク・柿・加工品セットなど
【お申し込み方法】「志縁プロジェクト」と検索し、西日本新聞の特設ホームページから申込書をダウンロードするか、JA筑前あさくらへ住所・氏名・電話番号を連絡し、申込書を取り寄せてください。
JA筑前あさくら
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