兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

兵庫保険医新聞

2018年4月25日(1876号) ピックアップニュース

特集 診療報酬改定でどうなる? − (3)歯科・基本診療料 −
煩雑で厳しい施設基準の新設より基礎的技術料の抜本引き上げこそ

1876_13.jpg

灘区・鈴田歯科医院 鈴田明彦先生

 今次診療報酬改定で、医療現場にどのような影響が及ぶのか。特集第3回は歯科点数について、鈴田歯科医院の鈴田明彦先生に、基本診療料を中心にお話をうかがった。
(聞き手は編集部)
 −歯科の改定率は0・69%の微増となりましたが、どう見ておられますか。
 保険請求上は若干プラスになるかもしれませんが、施設基準の新設や厳格化に対応するために必要な医療機器を購入する必要があるので、収支上は減収になると思っています。たとえば、歯科疾患管理料に口腔機能管理加算が新設されましたが、咬合圧検査、舌圧検査、咀嚼能力検査のいずれかの検査を口腔機能低下症の診断の要件としているため、検査機器を購入しなければならないなど、費用的に大きな負担となります。
 −基本診療料に院内感染防止対策に係る施設基準が新設されました。
 これは今回の改定での最大の問題です。施設基準を届け出れば10月1日から初・再診料を増点する一方で、届出しなければ減点されます。基本診療料にペナルティー減算を導入したのは前代未聞の暴挙で、こうした考え方を今後も診療報酬体系に持ちこませないよう撤回されるべきです。
 また、院内感染対策を評価するとしながら、別の加算(歯科外来診療環境体制加算)が減算されたため、基本診療料に係る施設基準を届け出ても、あわせてわずか1点の引き上げになるにすぎません。もともと歯科は、医科と比べても著しく基本診療料が低く、減算ではなく大幅に引き上げすべきです。
 −前回の改定で導入された「かかりつけ歯科医機能強化型診療所」(か強診)は要件が厳しくなりました。
 もともと、歯周病安定期治療(SPT)や歯科訪問診療の実施などの要件に、算定回数がさらに追加されるなど、いっそうハードルが高くなりました。同じ診療行為にも関わらず、か強診を届出できる歯科医療機関と届出できない歯科医療機関との間で、SPTやエナメル質初期う蝕管理の算定点数に大きな差がつき、不合理な差別をいっそう拡大することになりそうです。
 −補綴関連では若干の点数引き上げがありました。
 補綴の点数だけをわずかに引き上げても、処置や手術など基礎的技術料を抜本的に引き上げなければ、歯科医療機関の経営を底上げすることにはなりません。歯科技工士の労働・経営の窮状改善にもまったく足りないでしょう。
 −20年以上にわたって歯科医療費を増やそうとしない低医療費政策が問題の根本にありますね。
 その通りです。国が歯科医療費の総枠を抑制していますから。
 他方、施設基準における歯科衛生士の人員要件が「常勤換算」として非常勤でも認められるなど、保険医協会が要望し続けてきたことが実現してもいます。
 当初はマイナス改定にしようとしていた国に対し、私たちが声をあげて、微増ながら本体プラス改定を実現させたように、今後も政府や国会に私たちの声を持ち寄って改善を求めていく運動が大事だと思います。
バックナンバー 兵庫保険医新聞PDF 購読ご希望の方