2018年5月15日(1877号) ピックアップニュース
特集 診療報酬改定でどうなる? −(4)歯科・訪問診療−
低すぎる歯科衛生士の評価もっと上げるべき
加古川市・渡辺歯科医院 渡邊 啓二先生
診療報酬改定が医療現場へ与える影響について、会員の意見を紹介する特集第4回は、歯科訪問診療について、加古川市の渡邊啓二先生のインタビューを掲載する。(聞き手は編集部)
−まず、先生が訪問診療でとくに気を配っておられることを教えてください。
最も意識しているのは誤嚥性肺炎を起こさないよう、口の環境を整えることです。
口腔機能の衰えた方のみならず、摂食しない胃瘻の方でも、口腔ケアをしなければ、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。時として、胃瘻の注入スピードが普段より速いために、嘔吐した吐瀉物が、口蓋や咽頭部にこびり付き、誤嚥の危険性が高い状態となっているのに、介護職員の方々になかなか気付いてもらえないこともあります。常に、介護職員と歯科医師が密に情報を共有する必要があります。
当院では、私が患者一人ひとりの食事観察を行い、口腔機能管理計画を立てた上で、ベテランを含む歯科衛生士2〜3人でチームを組んで対応しています。現在、常勤・非常勤合わせて10人の歯科衛生士がおり、開業当初から30年以上勤めているメンバーもいます。彼女らがやりがいを持って働きやすい環境づくりに配慮していますが、今回の改定で、歯科衛生士の評価が大きく引き下げられました。
−歯科衛生士が在宅で口腔内の清掃や口腔機能の回復・維持などの実地指導を行った際に算定する「訪問歯科衛生指導料(訪衛指)」に、20分以上の時間要件や「単一建物居住者の人数」という考えが導入されましたね。
当院では重症なケースが多いため、時間要件は満たしていますが、そもそも歯科訪問診療料も含めて時間要件はなくすべきです。
納得しがたいのは、「単一建物居住者の人数」です。実質点数が引き下げられました。同じ建物に何人いようと、患者さん一人ひとりに行う専門的口腔ケアは変わらないのに、居住者の人数で点数が変わるのは不合理です。
また、施設が算定する介護報酬の「口腔衛生管理加算」は、これまで月4回の口腔ケアを行って110単位でした。あまりの報酬の低さに、施設は歯科衛生士を雇い続けるのが困難だったそうです。今回の改定で、要件が「月2回の口腔ケアと介護職等への指導等」とさらに厳しくなった上、90単位に減額されました。これでは歯科衛生士の雇用を施設としてあきらめざるを得ないと聞いています。
国には、現場の実態をもっと把握してもらいたいと思います。国家資格の専門職である歯科衛生士の評価はもっと引き上げるべきです。
−先生に話題提供をいただいた、4月1日の歯科在宅・介護新点数研究会&歯科臨床談話会は、満席となる200人の参加がありました。
多くの先生方が参加され、関心が高いと感じました。改定で新たに「口腔機能低下症」の病名が入りましたが、認知症など様々な疾患を抱える患者さんを生涯にわたり歯科としてどう支えるのか。保険医協会には、今後も歯科訪問診療の経験交流や症例検討の勉強会を企画いただき、知識を得るだけでない、相談し合える人間関係を築くきっかけづくりをサポートいただきたいと思います。
−最後に、今後の抱負を教えてください。
今後は、地域の病院とも連携して退院時のカンファレンスやNSTサポートチームにも関わるなど、多職種とさらに連携して地域の患者さんを歯科から支えていきたいです。
−まず、先生が訪問診療でとくに気を配っておられることを教えてください。
最も意識しているのは誤嚥性肺炎を起こさないよう、口の環境を整えることです。
口腔機能の衰えた方のみならず、摂食しない胃瘻の方でも、口腔ケアをしなければ、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。時として、胃瘻の注入スピードが普段より速いために、嘔吐した吐瀉物が、口蓋や咽頭部にこびり付き、誤嚥の危険性が高い状態となっているのに、介護職員の方々になかなか気付いてもらえないこともあります。常に、介護職員と歯科医師が密に情報を共有する必要があります。
当院では、私が患者一人ひとりの食事観察を行い、口腔機能管理計画を立てた上で、ベテランを含む歯科衛生士2〜3人でチームを組んで対応しています。現在、常勤・非常勤合わせて10人の歯科衛生士がおり、開業当初から30年以上勤めているメンバーもいます。彼女らがやりがいを持って働きやすい環境づくりに配慮していますが、今回の改定で、歯科衛生士の評価が大きく引き下げられました。
−歯科衛生士が在宅で口腔内の清掃や口腔機能の回復・維持などの実地指導を行った際に算定する「訪問歯科衛生指導料(訪衛指)」に、20分以上の時間要件や「単一建物居住者の人数」という考えが導入されましたね。
当院では重症なケースが多いため、時間要件は満たしていますが、そもそも歯科訪問診療料も含めて時間要件はなくすべきです。
納得しがたいのは、「単一建物居住者の人数」です。実質点数が引き下げられました。同じ建物に何人いようと、患者さん一人ひとりに行う専門的口腔ケアは変わらないのに、居住者の人数で点数が変わるのは不合理です。
また、施設が算定する介護報酬の「口腔衛生管理加算」は、これまで月4回の口腔ケアを行って110単位でした。あまりの報酬の低さに、施設は歯科衛生士を雇い続けるのが困難だったそうです。今回の改定で、要件が「月2回の口腔ケアと介護職等への指導等」とさらに厳しくなった上、90単位に減額されました。これでは歯科衛生士の雇用を施設としてあきらめざるを得ないと聞いています。
国には、現場の実態をもっと把握してもらいたいと思います。国家資格の専門職である歯科衛生士の評価はもっと引き上げるべきです。
−先生に話題提供をいただいた、4月1日の歯科在宅・介護新点数研究会&歯科臨床談話会は、満席となる200人の参加がありました。
多くの先生方が参加され、関心が高いと感じました。改定で新たに「口腔機能低下症」の病名が入りましたが、認知症など様々な疾患を抱える患者さんを生涯にわたり歯科としてどう支えるのか。保険医協会には、今後も歯科訪問診療の経験交流や症例検討の勉強会を企画いただき、知識を得るだけでない、相談し合える人間関係を築くきっかけづくりをサポートいただきたいと思います。
−最後に、今後の抱負を教えてください。
今後は、地域の病院とも連携して退院時のカンファレンスやNSTサポートチームにも関わるなど、多職種とさらに連携して地域の患者さんを歯科から支えていきたいです。