2018年5月25日(1878号) ピックアップニュース
国保自治体アンケート結果
3万6千世帯超が無保険状態
県下各自治体に対し、協会が毎年実施している「国保(国民健康保険)自治体アンケート」の結果、保険証の未交付が3万6211世帯に上っており(図1)、短期被保険者証交付が2万2432世帯、被保険者資格証明書交付も6780世帯と、依然として多くの人が医療機関で必要な医療が受けられない状況であることが明らかとなった。このアンケートは県下の国保の保険料滞納や無保険の現状を明らかにするため1988年から行っており、26年連続で県下の全自治体から回答を得ている。
一般会計からの法定外繰入額については、8市町が繰入額を「減らす予定」と答えた一方で、「増やす予定」と答えた市町はゼロだった(図2)。
厚労省は、都道府県化に合わせて、毎年3400億円の追加支援を行い、財政基盤を安定化させるとしているが、自治体の独自繰り入れの総額よりも少ないだけでなく、恒久的な制度ではないため、財政を立て直すには不十分だ。
また、都道府県化と一体で保険者努力支援制度もスタートする。この制度は保険収納率の向上や法定外一般繰入額の削減を評価し、都道府県に交付金を傾斜配分するものだ。この制度により自治体はさらなる徴収強化と保険料引き上げを強いられ、その結果、保険証の未交付、短期被保険者証・資格証明書の発行、差し押さえが今まで以上に増加する可能性がある。
未納期間が6カ月以上の場合に交付される短期被保険者証は、被保険者世帯比で2.90%と、前回の3.82%と比べ1%ほど減少している。しかし、依然として2万2432世帯が「短期保険」状態であり、慢性疾患の治療が継続困難な状況にある。
未納期間が1年以上の場合に自治体の判断で交付され、医療機関を受診した際、いったん全額を自己負担しなければならない資格証明書は6780世帯、被保険者世帯比で0.88%に交付されている。窓口でいったん全額を負担するというペナルティーは、医療機関にかかることを困難にし、受診抑制、疾病の悪化につながる恐れがある。
滞納期間が1年6カ月を超えた際、差し押さえが行われる場合がある。差し押さえは昨年とほぼ同数の6435件となり、滞納期間が1年を超える世帯(9万3123世帯)の6.9%にあたる。
国による保険料軽減・免除制度を利用している世帯は、51万955世帯(全体の66.0%)と上昇傾向が続いている。この背景には法定減免の対象となる所得基準が広げられたことも、要因としてあげられる。全世帯の7割近くが、減免制度の対象となっているという国保財政運営上の問題が浮き彫りになっている。
国保は憲法25条の生存権によって定められた社会保障制度の大切な柱の一つである。国保財政を立て直し、保険料高騰と滞納者増の悪循環を断ち切るためには、国庫負担の抜本的な増額、各自治体が行っている法定外繰り入れの継続・拡充が求められる。
アンケート結果
政策運動広報委員会は4月11日、国保自治体アンケートの結果を公表するため、マスコミ懇談会を開催した。懇談会には、朝日、神戸、読売、しんぶん赤旗の4紙から記者が参加した他、日本歯科新聞から資料提供の依頼があった。西山裕康理事長がアンケート結果を報告した。
記者からは、保険証が交付されず、受診を控えることによる影響について質問が出され、参加した役員が、受診が抑制されると疾患が進行、重症化し、最悪の場合は手遅れになるケースもあると事例を紹介。保険証の未交付をやめ、患者が早期に医療機関を受診できるようにすべきだと訴えた。神戸、読売、しんぶん赤旗、日本歯科新聞が調査結果を報道した。
▲読売新聞(4月24日)
▲神戸新聞(4月28日)
法定外繰入額「増やす」はゼロ
今年4月から開始した国保の都道府県化の影響に関する質問では、保険料について、「上昇する見込み」と答えたのは10市町で、「減少する見込み」と答えたのはわずか3市町であった。多くの自治体で国保料負担が高くなる見通しであることが分かった。一般会計からの法定外繰入額については、8市町が繰入額を「減らす予定」と答えた一方で、「増やす予定」と答えた市町はゼロだった(図2)。
厚労省は、都道府県化に合わせて、毎年3400億円の追加支援を行い、財政基盤を安定化させるとしているが、自治体の独自繰り入れの総額よりも少ないだけでなく、恒久的な制度ではないため、財政を立て直すには不十分だ。
また、都道府県化と一体で保険者努力支援制度もスタートする。この制度は保険収納率の向上や法定外一般繰入額の削減を評価し、都道府県に交付金を傾斜配分するものだ。この制度により自治体はさらなる徴収強化と保険料引き上げを強いられ、その結果、保険証の未交付、短期被保険者証・資格証明書の発行、差し押さえが今まで以上に増加する可能性がある。
資格証明書は6780世帯
県全体の保険証未交付率は被保険者世帯比で4.7%と計3万6211世帯が「無保険」状態に置かれていることが明らかになった。未納期間が6カ月以上の場合に交付される短期被保険者証は、被保険者世帯比で2.90%と、前回の3.82%と比べ1%ほど減少している。しかし、依然として2万2432世帯が「短期保険」状態であり、慢性疾患の治療が継続困難な状況にある。
未納期間が1年以上の場合に自治体の判断で交付され、医療機関を受診した際、いったん全額を自己負担しなければならない資格証明書は6780世帯、被保険者世帯比で0.88%に交付されている。窓口でいったん全額を負担するというペナルティーは、医療機関にかかることを困難にし、受診抑制、疾病の悪化につながる恐れがある。
神戸市では3分の1が滞納世帯
保険料を滞納している世帯数は18万650世帯で、国保加入世帯の実に23.3%に上っている。特に神戸市では7万7860世帯、加入世帯の35.0%、3世帯に1世帯は過去1年以内に滞納したことがあるとの結果となった(図3)。滞納期間が1年6カ月を超えた際、差し押さえが行われる場合がある。差し押さえは昨年とほぼ同数の6435件となり、滞納期間が1年を超える世帯(9万3123世帯)の6.9%にあたる。
国による保険料軽減・免除制度を利用している世帯は、51万955世帯(全体の66.0%)と上昇傾向が続いている。この背景には法定減免の対象となる所得基準が広げられたことも、要因としてあげられる。全世帯の7割近くが、減免制度の対象となっているという国保財政運営上の問題が浮き彫りになっている。
国庫負担の抜本的増額法定外繰入の継続・拡充を
調査によって、4世帯に1世帯が保険料を滞納し、さらに保険証を持っていない世帯が3万6千世帯を超えており、依然として多くの人が医療機関で必要な治療が受けられない状態に置かれているなど、県下の国保加入者の厳しい現状が明らかとなった。国保は、「年齢構成が高く、医療費水準が高い」「無職・低所得者が多く、所得水準が低い」構造のため、「保険料負担が重い」「収納率が低い」などの問題が存在する。国保は憲法25条の生存権によって定められた社会保障制度の大切な柱の一つである。国保財政を立て直し、保険料高騰と滞納者増の悪循環を断ち切るためには、国庫負担の抜本的な増額、各自治体が行っている法定外繰り入れの継続・拡充が求められる。
アンケート結果
神戸、読売、赤旗、日本歯科新聞が報道
政策運動広報委員会は4月11日、国保自治体アンケートの結果を公表するため、マスコミ懇談会を開催した。懇談会には、朝日、神戸、読売、しんぶん赤旗の4紙から記者が参加した他、日本歯科新聞から資料提供の依頼があった。西山裕康理事長がアンケート結果を報告した。記者からは、保険証が交付されず、受診を控えることによる影響について質問が出され、参加した役員が、受診が抑制されると疾患が進行、重症化し、最悪の場合は手遅れになるケースもあると事例を紹介。保険証の未交付をやめ、患者が早期に医療機関を受診できるようにすべきだと訴えた。神戸、読売、しんぶん赤旗、日本歯科新聞が調査結果を報道した。
▲読売新聞(4月24日)
▲神戸新聞(4月28日)